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直径50cm巨大 マイタケ
第906回 2007年11月4日


 もうすぐ鍋の美味しい季節の到来です。鍋に欠かせない名脇役と言えば秋の味覚、キノコですよね。今回はその中でも近頃大人気のマイタケを科学します。

 マイタケを漢字で書くと「舞茸」。名前の由来は、かつて幻のキノコの天然マイタケを見つけた人が、うれしさのあまり舞い踊ったことから来たのだそうです。マイタケが出回るようになったのは80年代初め。以降25年で出荷量は実に140倍も増え、日本の食卓に完全に定着しました。
 普通キノコには、柄の部分があってその上に傘があり、その傘の裏側には放射線状のヒダがあります。ところがマイタケは幾重にも枝分かれしていて、柄と傘の区別もはっきりせず傘の形もバラバラです。しかも傘の裏側にはヒダではなく、細かい穴が無数にあいています。そんなマイタケをもっと知るために矢野さんは日本一のマイタケ生産会社を訪ねました。工場には、広葉樹のおが粉にマイタケの菌を入れ繁殖させたという白い物体が大量に並んでいました。そして少し顔を出している茶色い部分が成長して食べる部分になるそうです。マイタケはまるで花が咲くように広がりながら大きくなると、10日間ほどで収穫できるようになるのです。こうして出来たマイタケは直径およそ20センチ、重さは1キロもありました。これを工場で100gずつカットして出荷します。しかし天然のマイタケはなんと5キロもあると聞き、矢野さんは巨大天然マイタケを捜索しに、新潟県の十日町へ向かいました。
 地元のマイタケ採り名人の案内で、山を捜索開始。マイタケが生える場所は、多くの場合ミズナラの木の根元だそうです。しかも弱って枯れかかっている木によく生えるそうで、一度生えた場所に何度も生えてくることがあるのだそうです。クマもいる可能性があるという山の中ではマムシにも遭遇し、命がけの捜索をするものの、なかなかマイタケは発見できません。さらに険しい山道を歩くこと2時間、名人の極秘ポイントへ辿り着くと、ついに天然マイタケを発見しました。天然ものと栽培ものマイタケ大きさ比較しかしこのマイタケはまだ小振りのため、さらに探すこと1時間、名人も今年見つけた中で一番の大きさを誇る天然マイタケを発見したのです。さっそく採り上げて計ってみると幅は50センチ、重さは3・1キロもありました。
 しかしなぜ天然マイタケはこんなに大きくなるのでしょうか?それは、栽培物は培地と呼ばれる部分が小さく、繁殖している菌の数も少ないので成長に限界があるのに比べ、天然物は大きな木を培地とするため大きく成長するのだそうです。

所さんのポイント
ポイント1
栽培のマイタケは培地が小さく繁殖する菌の数が少ないので小振りだが、天然モノは発見すると思わず舞い踊ってしまうほど大きいのだ!

 大人気のマイタケですが、意外にもマイタケを使った料理は、鍋と天ぷらくらいしか思いつきません。そこで代表的なキノコ料理を作り、他のキノコと比較します。
 まずは定番のシイタケとマイタケを天ぷらにして、5人の主婦に方々に食べ比べて判定してもらいました。どちらが天ぷらに合うのか聞いてみると、全員一致でマイタケの勝利でした。理由はマイタケの方が歯ごたえやシャッキリ感があって食感がいいからだそうです。では、シイタケと何が違うのか、電子顕微鏡で見てみました。しいたけは一本一本の繊維が短くて向きもバラバラなのに対し、マイタケは繊維が長く向きが揃っていました。この繊維の違いがマイタケ独特の食感を生んでいたのです。続いてはホイル蒸し対決。定番のエノキのホイル蒸しと同じようにマイタケのホイル蒸しを作ってみました。結果は、全員一致でエノキの勝利。これは、生のマイタケの長かった繊維が、長く加熱すると短く切れてしまい、シャキッとした独特の食感が失われていたためです。つまりマイタケには短い時間で調理でき、食感が失われない天ぷらなどが向いています。鍋に入れるときも煮すぎるのは禁物なのです。

所さんのポイント
ポイント2
マイタケは加熱しすぎると長い繊維が切れて食感が失われる。マイタケを美味しく食べるには短時間で調理するべし!

 さらに、シイタケを使う定番料理の茶碗蒸しにもチャレンジ。しかしマイタケ入りの茶碗蒸しは卵が全く固まらずドロドロに。これは、マイタケにタンパク質分解酵素が含まれるからだそうです。ならば、マイタケのタンパク質分解酵素はどれほどの力を持っているのでしょうか?まずはマイタケを酵素が働きやすい温度、50℃のお湯に浸し、その液体にかまぼこを漬け、比較のために水にもかまぼこを入れ、そのまま24時間置いてみました。すると、水に漬けたカマボコには変化は見られませんでしたが、マイタケ汁に漬けたカマボコは、指で軽く押すだけでグチャグチャにつぶれるほど溶けてしまいました。
 さて、バツグンの食感をもつ美味しいマイタケですが、そこには大きな弱点がありました。それは、マイタケを煮ると真っ黒になる煮汁です。マイタケ・シイタケ・ブナシメジの三種類のキノコを煮てみると、他のキノコは若干色が出る程度ですが、マイタケの煮汁はみるみる黒くなっていきました。実はマイタケの細胞は壊れやすく、傘にある色素が外に出やすいそうなのです。マイタケ墨汁で書いた舞の文字ならば、マイタケの黒い煮汁で文字は書けるのか実験してみました。10kg分のマイタケを4人の若者が鍋で食べ続け、濃いマイタケ墨汁を作ります。10kgのマイタケを完食した後の鍋は、見事に真っ黒。これをさらに濃厚にするため、煮詰めてマイタケ墨汁の完成です。この墨汁でプロの書道家の方に試し書きしてもらいました。墨にはないにじみ方をする墨汁で、見事マイタケの「舞」の字が完成しました。スタジオで所さんもマイタケ墨汁での書道に挑戦。半紙に「無駄」という文字を描きました。



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