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解明!! ひな祭り の迷信
第923回 2008年3月2日


 ♪明かりをつけましょ雪洞に〜♪春を彩る風物詩女の子の幸せと健やかな成長を願う日本の伝統・雛祭り。今回は本来の雛祭りに秘められた真実に迫ります。

 雛祭りの起源とは飛鳥時代、体の災いや汚れを紙の人形に乗せて川に流す「流しびな」という信仰と、平安時代に女の子の間で流行った小さな人形を使って遊ぶ「ひいな遊び」が合わさったものと言われています。やがて衣装は次第に豪華に、人形も大きくなり座り雛に、江戸時代の終わりには7段飾り桐塑頭正面が定着し、雛祭りは時代と共に次々と変化してきました。
  そんな雛祭りの歴史を探るべく、矢野さんが伝統的な雛人形が受け継がれている町、埼玉県岩槻市を訪れ、人形の頭(カシラ)を作る工程を見せてもらいました。カシラにはキリを細かく削った桐粉(きりこ)というおが屑に正麩糊(しょうふのり)というデンプンの糊を混ぜた、桐塑(とうそ)という粘土を使います。これを人形の顔の型に詰め、乾燥させると伝統的な桐塑頭(とうそがしら)が完成します。

 次に目の部分に義眼を入れ、その上から胡粉(ごふん)と呼ばれる白い顔料を塗り、そこから目や鼻に切れ目を入れ表情をつけ、眉や生え際を描いていき、美しい人形が完成します。しかし、カシラに桐の木を使うのはなぜでしょうか?そこで、キリの他にスギとヒノキでもカシラを作ってみました。すると、スギのカシラには何やら黒い斑点が…。実は、スギはタンニンという物質を多く含むため、スギは水分を含んだノリと混ぜるとタンニンが溶け出し、乾燥させると黒い斑点が浮き出してふさわしくありません。次にヒノキのカシラを見てみると、ヒビがあちこちに入っていました。水を吸いやすいヒノキは乾燥させるとキリよりもたくさん水分が蒸発し、縮んで割れてしまうのです。キリは雛人形のカシラには最適の木材だったのです。
 さて、顔が命の雛人形は白い肌が美しさを際立てています。平安時代、女性は顔を白くするために、鉛から作られたおしろいを使っていましたが、同じ時代に生まれた雛人形の顔には、おしろいではなく胡粉という顔料が塗られています。この胡粉の秘密を探りに矢野さんは京の都・宇治に向かいました。なんとそこにあった胡粉の材料とは、大量に積まれた貝殻でした。これはイタボガキという牡蠣の貝殻を10年以上風化させたものです。この貝殻を機械に入れ、細かく粉砕し、石臼で引き、水に漂うほどの細かな粒子だけを集めて乾かしたものが、胡粉になります。しかし、この胡粉とおしろいの違いはなんなのでしょう?そこで、この2つの粉を塗った雛人形のどちらの顔が好きか町の人に聞いてみたところ、圧倒的に胡粉を塗った人形のほうが人気でした。そこで、色の成分が細かく分析できる機械で比較してみると、おしろいを塗った人形が白の値が96.05%とほぼ純粋な白だったのに比べ、胡粉の方は白の数値が87.07%と低く、おしろいに比べて暗い白ということがわかりました。さらに、白以外の色の成分を調べると、胡粉の方は赤味がかった黄色、おしろいは緑がかった黄色が含まれていました。そこで美肌を持つ女性スタッフの肌を計ってみると、なんと黄色と赤が胡粉に近い数値であることがわかりました。つまり、雛人形の肌に胡粉が使われるのは、白い肌から浮き出るほのかな黄色と赤みがより人間の肌に近いからでした。

所さんのポイント
ポイント1
雛人形の顔におしろいではなく、胡粉が使われるのは、人形の白い肌から浮き出るほのかな黄色と赤みが人間の肌に近いからなのだ!

 さて、もう一つの雛祭りに欠かせないものといえば、3色の菱餅ですよね。しかし、町で30人の女性に白い菱餅の絵に正しい色をつけてもらったところ、色と順番が合っていたのはたった一人だけでした。正解は、下から白、緑、ピンクの順で、白は雪の白、緑が芽吹きの緑、ピンクは花咲く春を表しています。つまり3色で冬から春への自然の移り変わりを表していたのです。しかし、なぜ菱餅を飾るのでしょうか?研究家の方によると、なんと菱餅には薬効成分が含まれているというのです。白に使われる菱の実は胃腸の働きを整え、緑の母子草は咳止めに、そしてピンクの桃の花は便秘に効くと言われているのだそうです。薬のない時代に、薬草の知識を雛祭りに子供に教えるという意味合5色漢方菱餅!いもあったという、大切な菱餅。しかし、近年ではより華やかに見せるため5色の菱餅が常識になってしまっています。ならばと菱餅本来の意味を呼び起こすため、薬効成分のある新5色の菱餅を作ることにしました。黄色には二日酔いに効くとされるウコンを、赤には、滋養強壮などに効果があるとされるクコの実を使用しました。さらに、旧暦の雛祭りは現在の4月上旬だったので、今は咲いていない桃の花の代わりに、桜の花の塩漬けを使います。そして和菓子屋さんの協力で、目がテン特製の新5色の菱餅が見事完成しました!

 ところで、昔から脈々と続いてきた雛祭りには実は重要な意味が隠されているらしいのです。そこで、最新科学で雛祭りの効果を分析してみました。頭に脳波計を装着した5歳の女の子に目を閉じてもらい、目を開けたところに雛人形を置きました。すると女の子の脳の視覚を司る分野が働きだしました。つまり雛人形を見ることで脳が活性化したのです。さらに女の子に人形を手渡すと、今度は脳全体が激しく反応した状態になったのです。直接触って体験すると、感情を司る前頭前野の働きが非常に良くなり、女の子であれば母性本能や優しさ・美しいという感情が生まれてくるのだそうです。今では眺めるだけになってしまった雛祭り。手に取り、触れることで母性や愛情を育むとっても大事なお祭りだったのです。

所さんのポイント
ポイント2
雛人形を直接触ると、脳が活性化され母性本能や優しさの感情が出てくる。雛祭りは女の子にとって母性や愛情を育む大切な祭りだった!


<菱餅の色の順番について>
 菱餅の色の順番には、下から(1)「白→緑→ピンク」(2)「緑→白→ピンク」の2つの説があります。
 いずれも白は雪 緑は芽吹き ピンクは花を示しているのは共通していますが、下記のような違いがあります。

 まず、番組で紹介した、(1)「白→緑→ピンク」の順番ですが、これは、雛祭りが旧暦の3月3日、現代の4月上旬に行われていたことから、既に雪は溶けている季節であり、雪深い冬から春への季節の時間的な移り変わり、およびその喜びを表現していると考えられています。

 一方、(2)「緑→白→ピンク」の順番は、現代の3月3日はまだ雪が残り(残雪)、その下には緑が顔を出し既にピンクの花(この場合桃の花という訳ではなく梅や早咲きの桜など)が咲いているという、現代の3月の春の風景そのものを表現していると考えられています。

 今回、番組では、専門家の助言を頂きながら、本来のひな祭りとはどういうものであったか、という観点から制作しており、菱餅の順番として、より当時の情景に近いと考えられる、(1)「白→緑→ピンク」をご紹介しました。




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