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解明!!日本人の薄笑い
第929回 2008年4月13日


 入学、就職と、春は出会いの季節。そんな出会いの場面で一番大事なのが顔の表情です。そこで今回は、最高のコミュニケーションツール、「笑顔」を科学します。

 心理学では人にあは6つの基本的な表情があるとされています。それが怒り、悲しみ、恐怖、驚き、嫌悪、喜びの6つです。その中で他人に好感を抱かせるのは、喜びを表す「笑顔」だけです。笑顔には、見る人を幸せな気分にする不思議な力があります。では、笑顔とは一体何なのでしょうか?人間の表情を作り出すのは、表情筋と呼ばれるおよそ30種類の筋肉です。この中で笑顔を作る筋肉の主役と呼べるのが頬にある大頬骨筋(だいきょうこつきん)。この筋肉が収縮して口の両端を上に引き上げ歯をむき出しにします。そしてもう一つが目の回りにある眼輪筋(がんりんきん)という筋肉が目を細くし、目じりにシワを作るのです。
 では、人間以外の動物にも笑顔あるのでしょうか?そこで矢野さんが乗馬クラブを訪れると、馬は口の両端とくちびるを引き上げて歯を見せていました。しかし、これは異性のフェロモンなど刺激のある匂いを嗅いだ時にとる、ウシやネコにも見られるフレーメン現象という行動で、ウマに笑顔はありませんでした。では、イヌには笑顔があるのでしょうか?うちのゴールデンレトリバーは笑うという飼い主さんに、一番の笑顔と普通の時の顔写真を撮ってもらいました。しかし、写真を見比べてもさほど大きな違いはありませんでした。実は犬はうれしい時にはシッポを振るなどして全身で感情を表現しているため、はっきりとした笑顔はないそうです。
チンパンジーの笑顔  次に人間に一番近い動物チンパンジーに笑顔はあるのか、矢野さんはモンキーパークにいるスモモちゃんに会いに行きました。すると確かにいい笑顔を向けてくれましたがこの笑顔は芸の一つだったのです。しかし遊んでいる時のチンパンジーを見てみると大きく口を開ける表情をしています。これが、正真正銘のチンパンジーの笑顔です。笑顔は、進化した一部の霊長類と人間だけが持つようです。

所さんのポイント
ポイント1
ウマや犬も笑っているような表情をするが笑顔でない。笑顔はチンパンジーなどの進化した一部の霊長類と人間だけが持つものなのだ!

 人間誰しも素敵な笑顔で笑いたいものですが、どうしても笑顔が苦手という男女に協力してもらい、笑顔を撮る自信があるというプロの写真家に撮影してもらいました。すると写真家の方は、初対面なのに愛称で呼び、さかんに話しかけながら撮影したのです。所さんの顔と被験者の顔その結果、なんと2人とも豊かな笑顔の写真が撮れました。笑顔に一番大切なのは、人とのコミュニケーションのようです。どうやら他人の力を借りれば笑顔になれるようなので、もっと簡単に笑顔になれる方法を考えました。顔に、笑顔を作る表情筋の動きを計測する筋電計を貼り付け、画面の中に普通の時の所さんと笑顔の所さんの写真を映し、これを見た時の表情の変化を観察します。すると、所さんの顔が出た瞬間少し筋肉が動き、さらに笑顔の所さんの写真が映ると大きく筋肉が動き、いい笑顔になりました。笑顔は伝染するものなのです。

所さんのポイント
ポイント2
笑顔に一番大切なのは人とのコミュニケーション。さらに笑顔を見ると、それにつられて笑顔になる!笑顔は伝染するものだった!

 一般に日本人は笑顔が苦手、無表情と言われます。世界各国で聞いた、笑顔に自信があるかどうかのアンケート調査の結果を見てみると、イギリスでは85%、アメリカは77%なのに比べ、日本は34%とずいぶん低かったのです。そこで、日本人と外国人との笑顔の違いを調べるため、割り箸を噛んでもらい、その時の口の両端の位置を見てみました。すると外国人は6人中5人の口の端が割り箸より上に上がっていました。一方日本人にも同じように噛んでもらうと、なんと12人中8人が上がりませんでした。外国人は口の両端をしっかり上げ口で笑っていますが、日本人は口ではあまり笑っていないのです。ちなみに日本の笑顔の絵文字は(^_^)で、英語の笑顔の顔文字は:−)です。ここにも口で笑っていない日本人と口で笑う外国人との違いが現れているのです。そして、この違いを探るために日本に住むアメリカ人の家庭を訪問してみると、お父さんは小さい娘さんの笑顔を誉めて、人前でいい笑顔ができるように教えていたのです。一方日本では手で口を隠す女性が多いように、昔から歯を見せて笑うのは、はしたないと考え、口を隠そうとする文化があるのです。日本の女性がかつてしていたお歯黒も笑顔を隠す文化の一つなのです。口で笑わない日本人の笑顔には、日本の古い伝統が反映されていたのです。
割り箸ストレッチ、先生の見本  さて、笑顔が苦手な先ほどの2人は、様々な企業で笑顔の指導を行っている笑顔の達人、門川さんのもとを訪れました。門川さんによると、第一印象は口元で、そのために大頬骨筋を鍛えた方がいいといいます。その方法が割り箸ストレッチ!割り箸をくわえ、口の両端をいっぱいまで上げ、30秒上げ下げを続けます。こうして筋肉をほぐし、鍛え上げるのです。仕上げは、人前で笑顔を作る練習、ハッピー体操!「ハッピーハッピー」と相手に投げかけ続けると、自然と笑顔が出てきました。最初はぎこちない笑顔でしたが、2人はこの体操のおかげで自信に溢れた笑顔が出来るようになりました。



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