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綿毛を追え!! タンポポ
第930回 2008年4月20日


 春を彩る、誰もが知っている身近な花、「タンポポ」。しかし、小さく可憐に咲くタンポポは驚異の生命力の持ち主だったのです!

 タンポポは、広場の芝生や歩道の脇など人に踏まれそうな場所でよく見かけますが、なぜそんな場所に生えているのでしょうか?実はタンポポは背が低いため、他の植物が生える場所では、陰になって太陽が当たらず、光合成が上手くできません。そこでタンポポは生き残り戦術として、人に踏まれたりする可能性が高くても、他の植物が生えにくい場所で育つのです。
 そんなタンポポの生命力がどれだけ強いのか調べるため、工事現場でよく見かける地面を固める機械を使い、地面に咲くタンポポを一押し1トンという圧力で、5分間、花も葉もぺっちゃんこになるまで押し潰してみました。そして1週間後、その場所を見てみると、なんと元気よく咲くタンポポの姿がありました。さらに今度は、草刈機でタンポポを刈り取ってみました。地面は丸裸になりましたが、その後の様子を定点カメラで見てみると、なんと緑の葉が伸び始めつぼみをつけたのです!
タンポポの根の長さ 他の植物との比較  矢野さんはタンポポの強さの秘密を探ろうと、根を掘り起こしてみました。ドリルも使い掘り進めること3時間、ようやく根の先に辿り着きましたが、なんとその根の長さは74センチもあったのです。同じ場所に咲いていた春の花と根の長さを比べてみても圧倒的な大差でした。
 一体なぜタンポポの根はこんなに長いのでしょうか?専門家によると、タンポポは根に養分をためることができるというのです。試しに根の上の部分を半分に割ってみると小さな花芽がいくつもあり、葉をかき分けると新しい花芽が出ているのがわかります。タンポポは咲いた花が枯れても、この花芽を次から次へとのばして開花させ、世代交代をしていたのです。
 さらに、タンポポの根を切り、水の入った容器につけると、徐々に葉や根を出し始め成長しましました。つまりタンポポはこの栄養分のつまった根さえあれば、再び花を咲かせることが可能なのです。

所さんのポイント
ポイント1
タンポポの長い根には養分を貯められるため、花が潰れても小さな花芽を次から次へと開花させる事ができるのだ!

タンポポの蜜標(みつひょう)  ところで、タンポポの花びらに見える一枚一枚を虫眼鏡でよく見ると、それぞれに雄しべと雌しべがあり、一つの花だということがわかります。実は、小さな花がたくさん集まっているところにも生命力の秘密があるのです。人間には黄色に見えるタンポポですが、紫外線が写るカメラでタンポポを撮影し、チョウの目にはどう見えているのか再現してみると、花の外側は白、内側は黒で色が違って見えました。実は、この真ん中の黒い部分が蜜標(みつひょう)といって、チョウに蜜のありかを知らせるサインなのです。
 タンポポの他にもアジサイやツツジなどの大きな花も中央の黒い蜜標でチョウを呼び寄せていますが、タンポポの花は小さいため、白と黒、2色の花がたくさん集まって蜜標を作っているのです。そこで、内側の黒く見える花を取り除き、別のタンポポから外側の白く見える花を移植した、蜜標のない花を作って実験です。蜜標のないタンポポと普通のタンポポそれぞれを箱に入れ15分間でモンシロチョウが花に止まる回数を比べます。その結果、普通のタンポポには9回止まったのに対し、蜜標のない特製タンポポには1回も止まりませんでした。タンポポは2色の違う花が集まる事でチョウにサインを送り生き残りを図っていたのです。
 さて、タンポポといえば、忘れてならないのが綿毛ですよね。タンポポはこの種がついた綿毛を風にのせ、遠くに飛ばすことで子孫を残しています。この綿毛をよく観察してみると、下に種があり、その上は何本にも枝分かれし、まるでホウキの様な変わった形をしています。しかし、風を利用するならパラグライダーの様に隙間がない方がよく飛ぶのでは?ということで、隙間のない傘型と綿毛のような放射型の模型を用意して、下から風を送り、どんな風に飛ぶのか様子を見てみました。すると、傘型は風を受けると左右にグラグラしましたが、放射型は風を受けてもあまり揺れませんでした。航空力学の専門家によると、放射型の綿毛は風が抜け、安定してより遠くに飛ぶことができるのだそうです。ならば、綿毛はどこまで飛ぶことができるのか大実験です。スキーのジャンプ競技場のジャンプ台の下から合計100本の綿毛を、高さ76メートル、距離250mのゴール地点を目指して飛ばします。ゴールには粘着性のある大きな黒色のボードを用意し、綿毛が張り付くのを待ちます。風向きが良くなるのを待ちスタート!矢野さんが口で風を送ると、綿毛は上昇気流に乗り、ぐんぐん舞い上がって行きます。しかし、20本吹いた時点でゴールまで届いた綿毛はゼロ。そしてひたすら吹き続ける事2時間、ついにゴール地点のカメラが綿毛をとらえました。ボードには張り付かなかったものの、その後もいくつもの綿毛がゴール地点に到着!実験は大成功でした。

所さんのポイント
ポイント2
タンポポの綿毛は安定して風に乗り、遠くに飛ぶことができる構造を持っているため、世界中に広がっていったのだ!




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