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S字星形!? 珍 キュウリ
第939回 2008年6月22日


 日本を代表する夏野菜、キュウリのおいしい季節になりました。そこで今回は、キュウリの秘密を科学します。

 キュウリの収穫を見学するため、矢野さんは朝6時に農家を訪ねました。キュウリは、本来地面を這って伸びていき、実も土の上に成るものですが、農家では、ビニールハウスハウスの中に支柱を立て網を張り、垂直に伸びるように育てています。キュウリには長さで規格があり、こちらの農家では21cm以上のものだけを1本ずつ目で確かめ、手作業で収穫します。矢野さんは手伝おうと素手でキュウリに触った途端、イテテという悲鳴!なんと、キュウリは動物から実を守るため表面に鋭いトゲがビッシリ付いていたのです。しかしこのトゲは手でこすると簡単に取れてしまうほどで、店頭に並ぶ前には自然になくなってしまうのです。そしてお昼過ぎに無事出荷が終わりましたが、夕方4時、再び収穫の時間だというのです。ハウスに行ってみると、なんと、また収穫出来るサイズのキュウリが成っていたのです。巨大キュウリと普通のキュウリ比較キュウリの実は、雌花の子房と呼ばれる部分が成長したもので、なんと花が咲いてから僅か1週間で収穫できるサイズにまで成長してしまうため、キュウリは朝夕2回収穫しないと、出荷できるサイズを越えてしまうのです。では、キュウリは一体どこまで大きくなるのでしょうか?取らずに放って成長しきったキュウリを見てみると長さは約40cm、重さは1kgオーバーという巨大バナナのような黄色い物体に!巨大キュウリはとても酸っぱく、pHの数値は4.3でミカンやオレンジとほぼ同じという強い酸性でした。酸っぱいのは種子を細菌などから守るためと考えられています。私達が普段食べているのは酸っぱくなる前の未熟なキュウリだったのです。

所さんのポイント
ポイント1
私達が普段食べているのは、未熟なキュウリの実。収穫せずに放っておくと、黄色くて酸っぱい巨大キュウリに成長してしまう!

 ところで、キュウリ農家を悩ませるのがキュウリの曲がりやすい性質。なんとキュウリは曲がり具合によってもランク付けされていて、曲がりが大きいと値段が安くなってしまいます。でも、なぜキュウリは曲がってしまうのでしょうか?曲がりキュウリを探してみると、地面やヒモに触れているものが多かったので、まだ小さいキュウリの下に障害物を置いてみました。すると僅か3日で、ほぼ「くの字型」になってしまいました。星、ハート型のキュウリ 断面でも、中にはどこにも触れていないのに全て曲がったキュウリが成っている株もありました。実はキュウリは、成長の早い段階で細胞の数が決まっていて、全ての細胞が均等に大きくなれば真っ直ぐなキュウリに育ちます。ところが、水分や、光合成が十分でなく栄養が足りなかったりした場合、細胞同士が水や栄養を奪い合うのです。すると、全ての細胞が均等に育つことができず、病気になってしまい、どれも曲がったキュウリになってしまうのです。しかし、この形を変えやすいというキュウリの特徴を利用して面白い型のキュウリを栽培している農家がありました。星型やハート型の筒を用意してまだ小さいキュウリにそれを被せ、5日ほど待つと、簡単にかわいいキュウリの完成です。
 ならばと、目がテンでも変わった形のキュウリ作りに挑戦!球状、細長い棒状、平べったい板状の容器をまだ小さいキュウリに被せました。結果は、球状の容器では形に沿ってキュウリが中で曲がり、棒状と板状の容器は、実の成長の力に勝てず壊れてしまい、全て失敗。大幅に長さや形を変えるのは不可能だったようです。

 さて、日本ではキュウリといえば漬け物や酢の物など、ほとんど加熱せず生で食べるものばかりですよね。さらに、最近では出荷量が減少傾向のキュウリ人気を復活させるためにも、和食の達人にキュウリの加熱料理に挑戦してもらいました。まずはキュウリで筑前煮を作ってみたところ、長時間煮込んだことでフニャフニャになり失敗でした。そこで、キュウリの生産量世界第一位の中国、二位のトルコのキュウリ料理を学ぶことに。まずはトルコで最もポピュラーなジャジュクというキュウリ料理を見てみると、みじん切りキュウリとヨーグルト、ニンニク、香辛料を混ぜた、生で食べるものでした。しかし、中華料理にはキュウリとエビの塩炒めという加熱料理がありました。調理は油通しを3秒し、すぐに出汁を加え軽く混ぜて出来上がり。加熱時間は合計でわずか14秒なのでシャッキリした食感は失われません。では、どのくらいまでなら加熱しても大丈夫なのでしょうか?同じ厚さにカットしたキュウリをそれぞれ10秒、30秒、1分の3段階で加熱し、固さを計測します。すると、10秒と30秒加熱したキュウリは生の食感とあまり変わりませんでしたが、1分加熱したものは、とても柔らかくなってしまいました。つまり、キュウリの食感を生かす加熱時間は1分以内なのです。この結果を受け、再び達人が挑戦。キュウリにもろみ味噌を詰めて油で50秒揚げたキュウリの天ぷらと、キュウリを43秒でさっと炒めたキンピラが完成!しかし、試食した所さんの反応はやや微妙でした。キュウリは95%が水分なので、味そのものよりも、食感や清涼感を楽しむ料理が多いのです。

所さんのポイント
ポイント2
水分の多いキュウリは長い時間加熱するとシャキシャキした食感がなくなってしまうので、生で楽しむ料理が多いのだ。




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