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金 確実? 女子マラソン
第947回 2008年8月17日


 ついに始まった北京オリンピック!様々な競技の中でも、女子マラソンは過去6回開催され、日本は4つのメダルを獲得しています。今回はそんな日本女子マラソンの強さの秘密に迫ります!

 まずは佐藤アナが本物の女子マラソン選手たちに挑戦!でも、走って勝負したら、負けるのは当たり前。そこで、佐藤アナは自転車に乗って勝負!すると、開始200mで既に40m置いていかれ、その後も引き離される一方です。そして佐藤アナは1200mで足がつってあえなくリタイアしてしまいました。なんとマラソン選手の平均時速は約20km!自転車で勝てないのも仕方ありません。
 実は、マラソンは主要な大会のほとんどが冬に行なわれている冬の競技なんです。ではなぜ日本人は、リタイア者も多い、過酷で危険な夏のマラソンに強いのでしょうか?名門陸上部の監督によると、汗を上手にかくことが大事だといいます。汗かきオリンピックそこで、マラソン選手に汗の蒸発を防ぐゴム製のスーツを着て走ってもらうと、わずかトラック一周で辛くなり、通常のスタイルで走った時よりも1.6度も体温が上昇していたのです。やはり夏のマラソンでは汗をかいて体温を下げることが重要でした。ということは、日本人は汗をいっぱいかくから強いのでしょうか?そこで、日本人と、アフリカ系、ヨーロッパ系の身長体重がほぼ同じ計6名の一般女性で、汗かきオリンピックを開催!真夏のオリンピックを再現するため室温を35度に設定し、エアロバイクを30分漕ぎ続けてもらい、左腕につけた袋に溜まった汗の量を比べます。
 漕ぎ始めてしばらくすると、額に大粒の汗を流す他の国に比べ、日本代表はほとんど汗をかいていません。終了後、汗を一滴残らず集め計量すると、なんと見た目には一番汗をかいていなかった日本人の汗の量が一番多かったのです!実は、日本人は目に見えない細かな汗を、蒸発させながら次から次に大量にかいていたのです。一方外国人は目に見えやすい大粒の汗をかいていただけなのです。汗の水滴は、細かいほど早く蒸発して早く体温を下げてくれるのです。この秘密は、季節ごとに気温差のある風土の日本で生活していると、汗をコントロールする体温中枢が訓練されるためで、これを季節順化といいます。つまり蒸発しやすい細かな汗をたくさんかけるので、日本人は夏のマラソンに強かったのです。

所さんのポイント
ポイント1
四季がある風土で育った日本人は、蒸発しやすい細かい汗をかけるように、自然に訓練されているので、夏のマラソンに強かったのだ!

高橋尚子選手の朝食メニュー  ところで、マラソンでトップクラスの選手が30km過ぎに突然失速してしまう光景をよく見かけますよね。実は、その理由はずばりスタミナ不足。人間の体内に一定量貯蔵されるグリコーゲンが、徐々に消費され、ちょうど30km付近で足りなくなってしまうのです。シドニー五輪の金メダリスト・高橋尚子選手は、レース前に消化吸収が良く炭水化物を多く含むお餅を食べ、グリコーゲン不足を防いでいたそうです。さらにはなんと、梅干も食べていたんだとか。そこで、4匹のネズミの2匹ずつに、それぞれ20グラムの普通のお餅と、梅干を混ぜた同じ量のお餅を与え、ミニルームランナーでどれだけ走り続けられるかを比べてみました。すると、スタートから30分後、梅無しチームのネズミたちが脱落、なんと梅有りチームは1時間以上も走り続けました。実は梅干には、グリコーゲンを効率よく使い長持ちさせると言われているクエン酸が含まれているのです。日本の伝統的なお餅と梅干の組み合わせこそが、30km過ぎのグリコーゲン不足を救う究極のスタミナ食だったのです。

所さんのポイント
ポイント2
日本伝統のお餅と梅干の組み合わせは、30km過ぎでのグリコーゲン不足を防ぐための究極のスタミナ食だった!

 さて、アテネの金メダリスト・野口みずき選手の強さの秘密はどこにあるのでしょうか?まず特徴的なのは歩幅を大きくとり大股で走るストライド走法。なんとその歩幅は身長とほぼ同じ150cmもあるのです。しかし日本人は小股で走るピッチ走法が主流です。そこで両方の走法に佐藤アナが挑戦!まずは歩幅約60cmのピッチ走法で1600mを走ると、そのタイムは8分41秒でした。続いて佐藤アナに合わせた120cm間隔に、足跡マークを貼ったストライド専用コースで走ってみると、最初のうちはピッチ走法を上回る好タイムでしたが、ゴールタイムは9分01秒。なんと20秒も遅くなってしまったのです。一体何が起きたのでしょうか?野口選手の靴を作っているプロに伺うと、ストライド走法は、スピードは出るものの足への負担が大きい走り方だといいます。実は佐藤アナも1km過ぎで痛みに襲われ、ストライド幅を維持できなくなっていたのです。この対策として野口選手はマラソン界では体重が増えるためタブーとされてきた、本格的な筋力トレーニングを行い、さらにクロスカントリーで起伏のある路面の悪いコースを走りこみ強靱な足腰を作り上げていたのです。今回の五輪、野口選手はレースに参加できず、残念な結果に終わってしまいましたが、是非日本女子マラソン選手の4年後のロンドンでの活躍を期待しましょう!



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