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バイオリン 超難しい訳
第953回 2008年10月5日


 芸術の秋到来!何かを始めるにはいい季節ですよね。そこで今回は、古くから上流階級に愛されていた、楽器の女王・バイオリンを科学で解明します。

 バイオリンを弾いてセレブな若妻になりたい!とバイオリンを習いに行くことにした佐藤アナ。期待に胸を膨らませ早速弾いてみると…全く音が出なかったのです。しかし、同じバイオリンを先生に渡すときれいな音が出ました。先生に聞くと、弓に違いがあると言うんです。そこで、顕微鏡カメラで2本の弓の表面を見比べてみると、佐藤アナの弓の表面はツルツルなのに、先生の弓には細かい粒粒が大量に付着していました。実は、馬の尻尾の毛を束ねたバイオリンの弓には、ロジンと呼ばれる松の樹液、つまり松脂が必要なのです。ハイスピードカメラでバイオリンの音の出る瞬間を見てみると、弦が細かく揺れているのが分りました。つまり、松脂を塗った弓を動かすと弦が松脂の粘着力に引っ張られ、その摩擦力が限界になったところで弓から離れて揺れるのです。バイオリンはこの摩擦の力でなんと1秒間に数百回もの目には見えない細かな揺れを作り出し、これが人の耳には1つの連続した音に聞こえていたのです。
 ところで、バイオリンはわずか500g、60cmの小さい楽器なのに、とても大きな音が出ます。そこでバイオリンより大きい、同じ弦楽器のギターと音の大きさを比較してみました。まずは同じ曲を通常通り弾いてもらうと、ギターは平均78dbだったのに対し、バイオリンは平均87dbと、バイオリンの方が人間の耳には2倍も大きな音に聞こえる程の差がありました。さらに、両者に全力で弾いてもらってもやはりバイオリンの音の方が大きかったのです。なぜバイオリンはこんなにも大きな音が出せるのでしょうか?そこで、音を泡のような形で表し映像化することで、どこから音が出ているかわかるという、世界初のスーパーカメラ通称「音カメラ」で、色んな楽器を見てみました。バイオリンの音の映像化まず打楽器のティンパニーは、叩いている皮の上から、トランペットは開口の部分から前方に音が噴出し、ギターは弦の周辺や手元付近から泡が出ていました。そしてバイオリンを見てみると、なんと弦の付近だけではなく楽器全体、色んなところから音が出ていたのです。実は、小さなバイオリンは楽器全体360度から音を出すことによって大きな音を奏でることが出来るのです。さらにバイオリンの内部を見てみると、空っぽの本体の中に一本だけ木の柱が立っていました。実はこれ、バイオリンが大きな音を出すために重要な、魂柱(こんちゅう)と呼ばれるもの。バイオリンを弾くと、まず弦の揺れは、駒と呼ばれる真ん中の木に伝わり、駒が揺れると表板が揺れます。その表板の揺れが魂柱を伝い、さらに裏板に伝わって最終的に楽器全体が揺れ、大きな音を出していたのです。

所さんのポイント
ポイント1
バイオリンは内部にある魂柱によって、音の揺れが楽器全体に伝わり、小さなボディでも大きな音を奏でられるのだ!

 さて、ロジンを塗った弓で佐藤アナがいよいよバイオリンを弾いてみると、『ゴォォギュェアー!』とひどい音。試しに街でバイオリン初体験の人に弾いてもらうと、きれいな音が出せた人は30人のうちわずか1人だけ。どうしてきれいな音が出ないのでしょう?専門家に伺ったところ、そもそもバイオリンできれいな音を初心者が出すのは人間の体の構造上不可能だというんです。初心者と上級者、LEDの動き比較そこで、初心者と上級者にLED付きの弓でバイオリンを弾いてもらい弓の動きを見てみると、初心者は、弧を描くように半円状の軌道が浮かび上がり、一方上級者はきれいな直線を描いていました。実はきれいな音を出す最大のポイントはこの直線の動きだったのです。しかし基本的に人間の腕は円運動しか出来ないので、初心者が弾くと弓が自然と弧を描いてしまい汚い音が出てしまうのです。上級者は肘や手首、指の関節を複雑に連動させ直線運動を作り出しているのです。ならばと、秘密兵器を用意!バイオリン本体にバーを二本並行に装着する『直線運動強制バー』を使って演奏してみます。すると、バーに沿って真っ直ぐ弓を動かすことで、佐藤アナでもきれいな音を出すことができました。初心者にとって、この直線運動を身に付けることが最初の関門だったのです。

所さんのポイント
ポイント2
バイオリンできれいな音を出すには、弓を絶えず直線に動かせるように訓練が必要なのだ!

 ところで、なぜ童話でキリギリスはバイオリンを持っているのでしょうか?そこで、一度聞いた音ならなんでも再現できるという、バイオリニストの尾池さんが、サイレンの真似や、コンビニの自動ドアの音をバイオリンで作り出して聞かせてみました。しかし、キリギリスはどの音にも無反応。そこで閃いた矢野さん、キリギリスの鳴き声そっくりな音をバイオリンで真似てもらい、聞かせてみると、なんとキリギリスは返事をするように鳴きだしたのです!実はキリギリスは1万ヘルツ以上の非常に高い音を出して鳴いています。同じくバイオリンも楽器の中で唯一1万ヘルツ以上の高い音が出せるのです。だからキリギリスはバイオリンの音色に反応したのかもしれませんね。



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