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イワシ 激減!!(秘)解決策
第956回 2008年10月26日


 最近、水族館でなんとイワシが人気を集めています。人気の秘密は何といっても大群で泳ぐ姿!今回は、そんなイワシの知られざる秘密を科学します。

 自由自在に形を変える群れで泳ぐイワシ。その水槽にイワシの天敵、ハマチを入れてみると、ハマチがいくら襲い掛かっても、イワシの群れは半分に割れ、捕まえることができません。実はこれ、「かく乱行動」と言って、敵を混乱させて逃げる方法。群れからはぐれると簡単に食べられてしまうのでイワシは群れで泳ぎ、身を守っていたのです。群れで泳ぐイワシは人間にとっては獲れやすい魚ですが、なんとマイワシの漁獲量が、80年代後半の450万トンに比べ今ではそのわずか1%の5万トンに激減しているそうです。そのため今や高級魚となってしまったイワシですが、山口県周南市で大量に獲れると聞き、早速矢野さんが現地へ向かい漁に同行させてもらいました。確かに大漁でしたが、獲れていたのは小ぶりなカタクチイワシでした。日本には3種類のイワシがいて、一番大きなイワシは丸干しで有名なウルメイワシ。身体に点々模様があるお馴染みのマイワシ。そして一番小さいのがカタクチイワシです。実は、90年頃からマイワシは減りましたが、逆にカタクチイワシは、たくさん獲れるようになっていたんです。こうした大量に獲れる魚の種類が変化する現象を「魚種交代」といいます。この原因として有力な説が、海水温の変化。近年、海水温が上がるとともにマイワシは減り、カタクチイワシが増えているのです。しかし、海水温はおよそ10年サイクルで変動するので、将来また海水温が低くなると今度はマイワシが増えるのではと予測されています。

所さんのポイント
ポイント1
近年マイワシは激減しているが、小さいカタクチイワシは増えている。その原因として海水温の変化が有力な説になっているのだ!

 矢野さんは、獲れたイワシを魚料理店へ持ち込み、カタクチイワシづくしの料理を作ってもらいました。身は小さいながら、そのお味は歯ごたえがあってさっぱりした絶品でした。矢野さんはこの新鮮なカタクチイワシを所さんにお土産にと持ち帰ろうとしましたが、途中で様子を見てみると、なんと全てのイワシのお腹から内臓が飛び出していたのです。地元の漁師さんによると、これを「腹切れ」または「腹割れ」と言うそうです。そこで、獲れたてのカタクチイワシを放置し観察してみると、なんと30分もするとお腹の部分に穴が開くように割れ始め、およそ1時間で腹割れが起きたのです。イワシのフィルターフィーディングちなみにマイワシは、1時間経っても腹割れは起きませんでした。実はイワシは、口を開けたまま海中を泳ぎ、プランクトンを飲み込み、エラでこし取って食べます。これをフィルターフィーディングといい、常にエサを食べ続けるので筋肉や内臓に消化酵素をたくさん持っているのです。ところが、死んでしまうと、消化酵素が自らの体を溶かしてしまい、お腹の筋肉が薄いカタクチイワシには腹割れが起きるのです。腹が割れても腐ったわけではありませんが、カタクチイワシは早く傷みやすいので店頭に並ばずマイワシの代わりにはならなかったのです。イワシを漢字で「魚」に「弱」と書くのもこの自己消化が早いからなのです。

所さんのポイント
ポイント2
カタクチイワシは死んでしまうと、体に持っている消化酵素で自分のお腹が溶け、腹割れを起こしてしまうのだ!

 さて、矢野さんは大漁に獲れたカタクチイワシのその後を追いました。まずは船からホースで吸い上げ一気に工場へ運ぶと、腹割れを防ぐため、すぐにお湯で3分ほど煮ます。そして煮終わると、およそ13時間乾燥させます。そう、実はカタクチイワシは出汁を取る煮干しになっていたのです。ならばと、マイワシで特別に作った高級煮干しで出汁を取り、地元の方々にカタクチイワシの出汁と飲み比べてもらいました。その結果、なんとマイワシは脂っこくってダメという意見が多く惨敗だったのです。そこで、マイワシとカタクチイワシの魚肉を液状にして、脂質量を比べてみると、なんとマイワシは、カタクチイワシのおよそ6倍も脂を含んでいたのです。カタクチイワシは脂が少なく、脂特有の嫌な味やニオイがしないから煮干しに使われているのです。ならば、脂が少ない魚は煮干しに向いているのでしょうか?そこで白身で低脂肪のトラフグ、マダイ、アユを使って目がテン特製煮干しを作ってみました。しかし、試食した所さんはどの出汁もいまいちの評価…。実は赤身の魚に比べ、白身の魚はうま味成分のイノシン酸が少ないので、コクでは赤身のイワシにかなわなかったのです。

ニジマス干しとヒラメ干し  さて、実は食卓の人気者「シラス干し」もカタクチイワシの稚魚。そこで茨城県鹿島のシラス漁を見せていただくと、かなりの大漁。実は、海水温が高くなっている最近では、カタクチイワシは一年中産卵できるため、シラス干しも一年中店頭に並んでいるのです。そんなシラス干しの作り方は、塩分濃度3%の熱湯で3分間茹で、天日で20分干せば完成。試しに同じ作り方で、ニジマスとヒラメの稚魚も干してみました。試食した所さんの感想は、ニジマス干しは川魚特有のにおいがし、ヒラメは小骨が多く後味が悪いと、どちらも不評。カタクチイワシは煮干しにもシラスにも最適な、とても優れた魚だったのです。



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