知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


オバマ流で魔法の 演説
第978回 2009年3月29日


 今年誕生したバラク・オバマ米大統領。その人気の理由は、演説力!新生活を迎え、人前で話す機会も増えるこの季節、オバマ流・人の心を掴む演説を科学します。

麻生/オバマ 演説中の目線の比較  街行く人に麻生総理とオバマ大統領の就任演説の映像を見比べてもらうと、皆さんがまず指摘したのが、顔の向きの違いでした。麻生総理は演説中の90%以上の時間下を向いていたのに対し、オバマ大統領は演説中に一度も下を向かなかったのです!この目線の違いは、演説にどのような効果を及ぼすのでしょうか?そこで、矢野さんがおもちゃで遊ぶ保育園児達の前で、まずは麻生流に原稿だけを見ながら「桃太郎」を読みきかせてみました。すると、園児たちの反応は全くなし…。次に園児を入れ替えて、今度は顔を上げ、目を見て話すオバマ流で、同じ桃太郎を読んでみると、ぞろぞろと半分以上の園児たちが矢野さんの話を聞きに集まったのです。実際に園児に装着した、目線が分かる特殊なカメラの映像を見てみると、矢野さんが原稿を読んでいる時は色々なところに目線が分散していたのに、目を見て話した時には矢野さんの顔に視線が集中していました。オバマ大統領は頻繁に目線を送ることで、聞いている人たちを引きつけていたのです。

 目線の次に多かったのは、オバマ大統領は「声がいい」という意見。4割の人がその声に信頼感があると答えました。もしや声にも演説の秘訣が隠されているのかも?ということで、こんな実験です。声質の高低以外は、体型も衣裳も同じ2人の男性に、オバマ大統領のマスクをかぶってもらい、Wオバマに扮してもらいます。その2人に寿司店で、全く同じセリフでお客さんに大トロ寿司を薦めてもらいました。お寿司を薦める2人のオバマしかし、声の高いオバマのお寿司には大量のワサビが入っています。その結果、なんと10名中8名が声の低いオバマを選択し、ワサビ入りお寿司を食べずに済んだのです。そこで今度は声の低いオバマの薦めるお寿司をワサビ入りに変え実験を再開すると、やはり声の低いオバマが信頼され、20人中15人がワサビ入りを食べることになってしまいました。専門家の方にオバマ演説の声を分析してもらったところ、オバマ大統領の声の平均周波数は200ヘルツと一般男性の平均周波数よりも低かったのです。先生によると、人は感情的に話すと高い声、客観的に話すと低い声になるため、低い声の方が信頼できるというのです。実は私たちはオバマ大統領の低い声に、無意識のうちに安心や信頼を感じていたのです。

所さんのポイント
ポイント1
オバマ大統領の演説は、相手に目線を送りながら、信頼感のある低い声を使う、言語以外のコミュニケーションに優れた演説だった!

 さて、オバマ人気に火を点けた「Yes,We can.」この言葉は、なぜ世界中の人々の心に残ったのでしょうか?12分の演説でこの言葉はなんと13回も繰り返されていました。専門家によると実はこの繰り返しもオバマ流戦略の一つだというのです。そこで、佐藤アナが読み上げる、番組紹介の録音テープの中に「目がテンの放送時間が土曜17時に変わる」というフレーズを入れて、色々な場面で人に聞かせてみました。まずは、厨房で作業に追われる汐留ラーメンの店員さん達にテープを聞かせ、終了後に何が聞き取れたか質問してみると、皆さん忙しさのあまり全く聞き取れていませんでした。次にオバマ流に習って、全く同じ文章に「土曜17時にお引越し」 というフレーズを5回入れて流してみます。すると今度は皆さんが見事にちゃんと聞き取れていました。そこで今度は、居酒屋で酔っ払った人たちに同じ実験をしたところ、一回しか言わないバージョンでは誰も聞き取っていなかったのに、繰り返しの場合では全員に伝わったのです。同じ言葉を何回も繰り返せば、相手が集中していなくても、記憶に残すことができる効果があるのです。
 さらに、誰にでもわかりやすいというのも、オバマ演説の魅力の一つ。では、わかりやすい文章の順番とは、どのようなものなんでしょう?そこで、遊園地で大実験!A.Bチームそれぞれ4人に分かれ、各チームに内容は全く同じで、中身の段落の順番だけが違う2つの指令書を読み上げ、その指示に従ってもらいます。指令書の内容は、ある2つのアトラクションには乗らず、指定した4つのアトラクションに乗りシールをもらって戻ってくるというもの。早速Aチームがスタートすると、乗ってはいけないと言ったお化け屋敷や、指令に関係ないアトラクションに乗る人まで現れ、全員が失格。しかし、続いてスタートしたBチームは4人全員が指令通りに乗り、見事ミッションクリア!なぜ話す順番を変えただけで、圧倒的な差がついたのでしょうか?実は、指令書Aでは、文で最も伝えたい「私の話したアトラクションに乗ってください」 という最も重要な部分を文章の最後に言い、指令書Bでは、冒頭にこの大事な部分を持ってきただけなのです。何を隠そう、この指令書Bの方こそオバマ流の文章の構成なのです。オバマ大統領の演説にはこのような条件が揃っていたため、世界の人々の心を引き付けたのかもしれません。
 さて、4月から「所さんの目がテン!」も土曜夕方5時にCHANGE!します。 お楽しみに!

所さんのポイント
ポイント2
伝えたい最も大事な部分は、早いタイミングで言うことが、心に残るオバマ流演説の秘訣なのだ!




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