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世界一硬い 寒天 VSゾウ
第992回 2009年7月4日


 蒸し暑い日本の夏といえば和菓子。最近では、コンビニでも手軽に買えるようになりました。実は、そんな和菓子と日本の気候には密接な関係があったんです!

 まずどんな夏の和菓子が人気なのか、街の方50人に聞いてみると、1位あんみつ、2位水ようかん、3位くずきり、4位くず餅、5位わらび餅という結果になりました。あんみつと答えた人に好きな理由を聞くと、寒天独特の食感がいいとの意見が圧倒的でした。そこで、その食感の秘密を探るため、こんな実験です。固めた濃度も大きさも同じ寒天とゼラチンの上にビーカーを置き、中に水を入れていきます。すると…ゼラチンは水を1P入れたところで崩れてしまいましたが、一方寒天は変化なし。なんと寒天はさらに重りを足し、6kgという重さが加わっても、全然壊れませんでした。実はこの硬さが、寒天独特の食感を生んでいたのです。寒天に乗るゾウの足ならば、水に溶かす寒天の量を多くすると硬〜い寒天は作れるのでしょうか?寒天の粉末を、鍋の水に溶けるだけ入れてみると、普段の10倍もの粉が溶け込みました。次に沸騰させ、特製の大きな型に流し込み冷蔵庫で冷やし、世界一硬い寒天が完成!一体どれだけ硬いのか、陸上動物で一番重いゾウに踏んでもらうことにしました。ちなみにゾウの片足で踏む重さはなんと1.4t!いよいよゾウが片足を乗せると…世界一硬い寒天はゾウが乗っても大丈夫!見事1.4トンの踏む力に耐えました!

 そんな寒天の硬さの秘密を調べるために、電子顕微鏡で組織を見てみると、糸のような物が複雑に絡み合った食物繊維が確認できました。海藻が原材料の寒天は、成分のほとんどが食物繊維で、水を吸ってがっちり絡み合うため硬くなるのです。一方、ゼラチンの原料は、動物のコラーゲンのため柔らかいのです。さらに、夏のお中元の定番、水ようかんにも少量の寒天が使われていますが、なぜあんみつや水ようかんは寒天を使っているのでしょう?そこで、同じ濃度、大きさで固めた寒天とゼラチンを水の中に入れ、徐々に温度を上げていきます。するとゼラチンはおよそ28℃で溶け始め、37℃でなくなってしまいましたが、寒天は、90℃を超えたところでやっと溶け始めました。実は食物繊維は熱に強く85℃以上にならないと溶けないのです。だからこそ、あんみつや水ようかんには夏の暑さに負けない寒天が使われているのです!

所さんのポイント
ポイント1
あんみつや水ようかんに使われる寒天は、暑い夏の和菓子に適した材料なのだ!

 さて、人気ランキングの3位〜5位のくずきり、くず餅、わらび餅は、デンプンが主成分です。現在一般的には小麦のデンプンが使われていますが、本来はそれぞれの根から取り出されたデンプンを使います。ならば、スーパーで売っている普通の根菜からでもデンプンは作れるのでは?ということで、早速ゴボウ、レンコン、ニンジンでデンプン作りに挑戦です!それぞれの野菜をフードプロセッサーで細かくし、ガーゼに包み水の中に溶け込ませてみると、ニンジンとゴボウが入った水の底には沈殿物が見られませんでしたが、レンコンはデンプンが沈殿したのです。ということで、くず餅ならぬレンコン餅作りに挑戦!目がテン特製!レンコン餅40本ものレンコンを搾り、沈殿したデンプンの上の水を何度も入れ替え、不純物を取り除き、純度の高いレンコンデンプンを取り出します。これを老舗和菓子屋さんに持って行き、レンコン餅を作ってもらいました。スタジオで試食した所さんは、その味を大絶賛!しかし、小麦デンプンなら100gあたり約20円ですが、レンコンデンプンは抽出効率が悪く、大量のレンコンを必要とするため、今回の試作では、なんと100gあたり16000円!もかかってしまいました。

 ところで、「くず餅が身体を冷やす」と昔から言われているそうですが、それは本当なんでしょうか?そこでこんな実験を行いました。室温30℃の屋内プールで男性3名に同じ6℃に冷やしたプリンとくず餅を食べてもらい、体表温をサーモグラフィーで測ります。まずは皆さんにプリン280gを食べてもらい、温度の変化を見ると、1人の体表温度はわずかに下がりましたが、他の2人はほとんど変化がありませんでした。そして5時間後、今度はくず餅を同じく280g食べてもらうと、直後に1人の胃の周囲がおよそ2℃も下がったのです。他の2人も僅かですが温度が下がっているのが確認できました。確かに、プリンよりくず餅を食べた直後の方が、体温は下がったのです。でも一体なぜでしょう?そこで、人工的に作った胃液の中にくず餅とプリンを入れてみると、プリンは溶けていくのに、くず餅は溶けません。実は、胃液はプリンのタンパク質は溶かしますが、くず餅のデンプンを溶かすことは出来ないのです。つまり、冷えたくず餅は、胃に入っても溶けず、冷たいまま胃の中に溜まるので一時的に、胃付近の温度が下がったと考えられるのです。ちなみに寒天に含まれる食物繊維も胃では溶けないため、同様の効果があると考えられます。夏の和菓子には体ごと涼しくさせてくれる力を秘めているようですね。

所さんのポイント
ポイント2
くず餅は、冷たいまま溶けずに胃の中に溜まるので、一時的に体を冷やしてくれる、夏にピッタリの和菓子だった!




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