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ハーブ の科学
第1192回 2013年9月1日


 今、ホームセンターの園芸売り場では、“ハーブ”が大人気なんです。
 料理に使ったり香りを楽しんだりと、生活において何かと身近なこの植物、調べてみると、面白い秘密がたくさん浮かび上がったんです!そこで本日の目がテンは、いま家庭菜園で大人気!“ハーブ”の知られざる秘密を科学の力で解明します。

 ①ハーブと野菜は一緒に植えてもいい?
 ②カメムシはミントの匂いを嫌うのか!?
 ③ツタンカーメンを守ったタイムで餅も守れるか!?

①ハーブと野菜は一緒に植えてもいい?

 そもそも、「ハーブ」とは、一般的に野菜や果物以外の“役に立つ植物”のことを総称して「ハーブ」と呼ぶのだそう。そんなハーブには、“生命力が強い”という特徴があるため、いま家庭でハーブを栽培している人が増えているんです。では、なぜハーブは生命力が強いのか?専門家に伺うと「ハーブは自分だけが育つ“技”を持っているため、生命力が強い」という。

 そこで実験!マンションのベランダに、同じ土を入れた鉢を2つ用意し、片方だけにローズマリーというハーブを植えます。そして、レタスの種30粒ずつを両方の鉢に蒔き、成長の度合いを見てみると・・・ なんと3日目、ローズマリーがない方の鉢からレタスの種が発芽!一方、ローズマリーを植えた鉢のレタスは全く発芽しないまま6日が過ぎ、結局レタスがまったく発芽しなかったんです!
 では、なぜ発芽しなかったのか?専門家は「ローズマリーの根から出る物質による成長阻害作用が考えられる」という。なんとローズマリーは、根から他の植物の成長を邪魔する成分を出しているというんです。

 そこでもう1つ実験!今度は根の様子が分かるよう、土の代わりに透明な寒天を使い、ローズマリーとレタスの種を植えました。そしてこの箱を、光と温度を一定に管理できる機械に入れ、比較のためローズマリーを植えず、レタスだけ植えた箱も一緒に入れました。そして待つこと5日・・・。まずは、ローズマリーを植えなかった箱のレタスは、根がすべて同じくらい伸びており、その長さは約6cm。一方、ローズマリーを植えた方は、ローズマリーから一番遠い3cm離れたレタスの根の長さは5cm。ところが、2cm離れると4cm、1cmまで近づくと3cmと、ローズマリーに近いほど根が短くなったんです!これこそ、根から他の植物の成長を邪魔する成分を出すローズマリーの“技”だったんです。

 でも狭いベランダでは、野菜や花と一緒にプランターに植えられないのは困りますよね?そこで、ハーブも野菜もお手の物というベテランガーデナーにこの問題を尋ねると・・・「一緒に植わってて居心地がいいっていう組み合わせでやってると、すくすく育つ」という。例えば、トマトとバジルの組み合わせはとても相性がいいという。
 そもそもトマトは乾燥を好む植物であり、水分の少ない土壌だと、実の糖分が濃縮され甘くなるという性質があります。一方のバジルは水分を好み、沢山の水分を必要とする植物なので、一緒に植えるとトマトが甘くなると言われているんです。他にも野菜とハーブでは、ピーマンとパセリや玉ねぎとカモミールなど、一緒に育てると良い組み合わせがあるそうなんです。

 でも、ハーブは成長を邪魔する能力を持っているはず。どうしてこれらの野菜は大丈夫なのか?専門家は・・・「共に生き残るために、それを分解できるような能力を少しずつ勝ち取ってきて、効くものと効かないものが出てきたと考えられる」。どうやらこれらの野菜は、ハーブが出す“成長を邪魔する物質”を分解できる能力があるというんです。
 そこにはこんな理由が!トマトの原産地は南米アンデス山脈の乾燥地帯。そのトマトが16世紀頃、バジルの原産地・地中海にわたり、料理での相性もよかったことから、一緒に育てられるようになりました。長い間、一緒に育てられることで、トマトはその環境に適応し、バジルの出す成長を邪魔する成分に影響されなくなったと考えられている。

所さんのポイント
ポイント1
たとえ野菜とハーブの相性が悪くても、プランターを分ければ隣に置いても問題はないのだ!

②カメムシはミントの匂いを嫌うのか!?

 生き残るために、様々な能力を持っているというハーブ。その能力をうまく利用しているところがあると聞き、向かったのは長野県大町市のとある農家。7面もあるという田んぼのあぜ道には、イネを取り囲むようにミントが植えられていたんです。では、一体何のために植えられているのか?実は、ミントを植えることで、虫の防波堤になるという。

 そこで実験!まず、田んぼでイネの害虫・カメムシを捕獲。カメムシは夜行性のため、明るいところではほとんど動きません。実際に透明な箱に入れて1時間、観察してみたところ・・・確かに!その場から一歩も動くことはありませんでした。
 続いて、そこにミントの匂いの成分を入れてみると、1時間ピクリとも動かなかったのに、約2分後にはミントの匂い成分を嫌ったのか、逃げ出すように飛び去ってしまったんです。さらに数秒後、もう一匹も動き出し、箱の外へ飛び立ちました。最後の1匹は逃げ遅れたのか、箱の中に充満したミントの匂いに悶絶!
 でも、どうしてミントはカメムシが嫌う匂いを持っているのか?専門家に伺うと・・・「元々、ミントは荒地に生える植物で、そういう中では当然、害虫に食べられても困る」からだという。ミント自身が食べられないように身につけた“虫よけの能力”が、日本のコメを救っていたんです。

所さんのポイント
ポイント2
あぜ道にミントを植えることで、イネ科の雑草が生えにくくなりカメムシの住処がなくなるのだ!

③ツタンカーメンを守ったタイムで餅も守れるか!?

 ハーブの歴史を探っていくと・・・古代エジプトの壁画に描かれた植物らしきものを発見!実はこれ、ハーブだというんです。そこで伺ったのは、エジプト考古学の権威、吉村作治教授。古代エジプトで、ハーブはどう使われていたのか伺うと・・・「ツタンカーメンの王墓からも(ハーブが)出ている」という。
 でも一体なぜ!?その理由は「ミイラの内蔵から腐っていかないようにタイムを入れた。これは発掘した例でわかった」。古代エジプトでは、ミイラが腐らないよう、タイムというハーブを使っていたんだとか。タイムといえば、お肉料理の風味付けに使われるハーブですが、モノを腐らせない力を持っているのでしょうか?

 そこで実験!まず熱湯で十分に煮沸し、殺菌したお餅を二つ用意。両方に1滴ずつ青カビの菌をつけ、片方のお餅の周りには摘み取ったタイムを敷き詰め、どちらもアクリルケースで囲いました。タイムに防腐効果があれば、お餅は普通より傷みにくくなるはずですが、2日経っても、それぞれのお餅に大きな変化はありません。ところが3日目!タイムがない方のお餅からみるみる青カビが生えてきたんです。よく見ると、青カビ以外の黄色いカビや白いカビも!一方、タイムを置いたお餅は、青カビをつけたにも関わらず、見た目には全く変化は見られず、きれいな状態を保っています。この両方の“差”を生んだタイムの力を専門家に伺うと・・・「タイムの中には“チモール”という、非常に防腐作用、殺菌作用の強い成分があるため、お餅がカビなかったのでは」。

 チモールとは、消毒液などにも使われている抗菌成分であり、体の小さな虫や鳥にとっては強い毒。チモールは、タイムの葉の繊毛にくっついている、丸いカプセルの中に入っており、タイムの葉を虫や鳥が食べようとするとこのカプセルが破れ、チモールが出てくる仕組みになっているんです。タイムはチモールによって外敵から身を守っていたんです。

所さんのポイント
ポイント3
お弁当にタイムを使う場合は、水洗いをして乾かした後、よく揉んでから冷めたお弁当に乗せ、すぐフタを閉めるのだ!




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