知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


マンガ の科学
第1254回 2014年11月30日


 日本で販売されている出版物のおよそ4割近くを占めるマンガ。世界でもニッポンのマンガは大人気!その市場規模は1200億円を超えるとも言われます。そこで目がテンは、大人気のマンガを使った壮大な実験に挑戦!題して「科学の力で困っている人を助ける企画」第一弾!アマチュア漫画家をプロデビューさせられるのか!?

①若手漫画家…人生初の「持ち込み」!

 アマチュア漫画家を探す為プロデビューを目指す若者が通う専門学校でいい人材がいないか先生に聞き込み。そこで紹介されたのが、この学校の1年生、皆川海渡君19歳。さっそく作品を拝見させてもらいます。
 タイトルは「炸裂!ストリートファイト!」ケンカ相手を探し、街を徘徊する主人公。そこに強そうな大男が現れます。突如ケンカが始まり…大男が強烈なパンチで先制攻撃。主人公も負けじと蹴りで応戦。そして、最後は…主人公が大男を殴り飛ばし大喝采!ラストの決めゼリフは「いい喧嘩だった」。
 ここで酒井が皆川君に持ち込みを提案。持ち込みとは、雑誌掲載を目指し作品を出版社に持って行って見てもらうこと。いわば、プロデビューへの登竜門です。皆川君、これまで一度も持ち込みをしたことはないそうですが快諾してくれました!今回、マンガを持ちこむのは少年画報社!あの赤胴鈴之助や銀河鉄道999を世に送り出した創業70年を迎える老舗出版社。現在この会社から出版されている累計発行部数220万部を超える大ヒットマンガ「ドリフターズ」。この作品の影響で漫画家を目指したという、皆川君憧れの出版社でもあるんです。人生初の持ち込みで、担当してくれることになったのが少年画報社が出版する雑誌の編集長・大野さん。さっそく渾身の「炸裂!ストリートファイト」を渡します。すると…まだ3分の1しか見ていない段階で「内容がよくわからない」とキツイご意見!さらに、主人公が格好良くないというダメ出しも。掲載に値するレベルではないとまで言われてしまいました。ケンカ屋、惨敗です。
 大野編集長によると月に100本程度の持ち込みがあるそうなんですが、そこからデビューする確率というのは1000分の1という、かなり狭き門。現状の皆川君の作品はその中の一つに過ぎないという事なんです。
 今回の持ち込みで編集長に言われた評価が「内容がよくわからない」「主人公の立ち姿がかっこよくない」「吹き出しや描き文字(バキッなどの効果音)がゴチャゴチャしていて読みにくい」。
 主人公がかっこ悪いというのは画力の問題。本人の努力次第なので科学の力ではどうしようもありません。しかし、科学の力で改善できるところがあるんです!


②ビッグデータでヒット指数を分析&学者が物語構成をサポート!

 皆川君と共にマンガ業界の厳しさを知った目がテンスタッフ。そこでどんな漫画が求められているのか調査。すると、女性はキュンキュンする恋愛漫画が好きな様子。一方男性の好みは強い敵と戦うバトル漫画。つまり皆川君も方向性は間違っていません。それではあのマンガの何がいけなかったのか編集長に聞いてみると「まったく戦う理由がわからない」とのこと。つまり彼のマンガの問題点は"戦う理由がなく、感情移入できない事"。
 登場人物が戦う理由はどんなものがふさわしいのか?マンガを研究している実践女子大学文学部棚田教授に聞いてみると「昔は悪を倒せばヒーローだった。今は価値観が多様化していて何の為に戦うのか?正義とは何なのか?それに対する現代人の疑いのようなものがあって、それを反映していくと読者の共感を得る、新しい意味でのヒーローが生まれてくると思う」とのこと。つまり現代人の共感を呼ぶ"戦う理由"を見つければ、ヒットするかも!
 そこでヒットの傾向を調べているマーケティングの専門家、立教大学経営学部佐々木宏教授に伺うと「それはビッグデータを使えば、可能になると思います。」とのこと。ビッグデータとはインターネット上にあふれるあらゆるデジタルデータのこと。たとえば、ツイッターやフェイスブックにはヒットしているマンガの感想や意見が書き込まれています。これらを分析すると、今ヒットしているマンガの傾向がわかると言います。もっと言えば世の中の共感を得る、戦う理由を見つけることが出来るというんです。今回このビッグデータを使い、皆川君のマンガに読む人が共感を出来る戦う理由を付け加えます。
 やってきたのは実際にビッグデータを活用し、上映前の映画や舞台が人々にどれだけ共感を得られるか「ヒット指数」を分析している会社の代表ブローディーさんを訪ねました。例えば今年漫画を原作に映画化したホットロード。この漫画の感想が描かれたツイッターやブログからマンガを構成するキーワードを抜き出します。そして、そのキーワードの組み合わせが、どれだけ今の時代の共感を得られるのか数値化。そうやって計算された、映画ホットロードのヒット指数は66.7%!この数字は今年計算した中で最も高かったんだそう。では現状の皆川君のマンガはどの程度人々の共感を呼べるのか?しかし、ここで問題が。皆川マンガは世に出ていないため、この漫画を構成するキーワードをビッグデータから抜き出すことが出来ません。
 そこで、夏目漱石や芥川龍之介などの文学を研究している茨城大学教育学部の橋浦教授に皆川君のマンガがどのようなキーワードで構成されているのかを分析してもらいます。文学の専門家が分析した、皆川マンガを構成するキーワードは・・・ケンカ、退屈、愉快、最強、自信という5つの言葉。さらに台詞の中に出てきた言葉もシステムに入れヒット指数を計算してもらうと…ヒット指数は44%!50%を下回ると、ヒットの可能性は、ほぼありません。ヒット指数50%超えを目指し皆川マンガにふさわしい新たなキーワードを探します!
 一週間後、皆川君のマンガに足すことで計算上、最もヒット指数が高くなった新たなキーワードは・・・ "精神的""家族""からかわれる""かばう""自尊心""傷つく""耐える"の7つ。これらの単語を加えた時のヒット指数は…51・1%!プロデビューに値するヒットの可能性が見えました!続いては、このキーワードを持って皆川君と共に再び橋浦教授の元へ!7つのキーワードを元に、戦う理由を2人に構成してもらいます、白熱の議論は3時間も続き、ついに納得のいく戦う理由、エピソードが見つかったようです!
ビッグデータで割り出したキーワード使って、橋浦先生と皆川君が考えた戦う理由が。
●家族がいない寂しさに耐えながら、傷ついた自分をなんとか保とうとする主人公
●家族の事をからかわれ、家族をかばうためことで自尊心を保とうとする
●家族の事を忘れるためにケンカをし、ケンカをしている時だけ寂しさから逃れられる。(精神的な面から語られる)
これを元に、皆川君が新たにマンガを描いていきます。


③若手漫画家のボツ漫画は科学の力でどう生まれ変わったのか?

 科学の力を結集した新皆川マンガが……タイトルは「ストリートファイト」街をぶらつく主人公・・・。客引きの看板を見つけ、それを奪い、暇つぶしにケンカ相手を探します。次々とケンカを繰り返しますが、どれも骨のない相手ばかり。そんな時見かけたのが・・・チンピラにからまれ殴り倒されるサラリーマン。冬の寒空の下、一向に起きる気配がありません。そこで主人公は優しく声をかけたのかと思いきや…なんとサラリーマンとケンカをはじめます。当然殴られるサラリーマンのポケットから落ちたのは家族の写真。サラリーマンは会社でからかわれ、耐え続けてきた身の上を告白。それでも殴り続ける主人公!しかし…「あんたには家で待つ、家族がいるじゃねぇか。俺には家で待つ家族も何もないんだ!…あんたの方が幸せじゃねぇか」。主人公もまた苦悩を抱えて生きていたのです。そして…サラリーマンのパンチが初めてクリーンヒット!ケンカに勝利し去っていく主人公。しかし、負けたサラリーマンの表情にも満足の笑みが浮かぶのです。
 全てのキーワードを盛り込んだ新皆川マンガ。これを再び出版社に持ち込み!さっそく新たな作品を提出…編集長の感想は「非常にあなたの絵にあった話にしてきたね!」といきなり高評価。さらに「面白い」の一言も!そして「可能性は非常に感じますね」とまで。うれしさをかみしめる皆川君!最後は、固い握手を交わし、持ち込みは終了!
 大野編集長に皆川君の今後の可能性を伺うと「まずは新人賞狙っていって、そこから掲載に近いかたちを。デビューする可能性はあると僕は思ってます」とのこと。新人賞とは、現役の人気マンガ家がデビューしていない漫画家の原稿を審査するコンテスト。これを受賞した作品は雑誌掲載に限りなく近づくんです。プロへの第一歩を踏み出した皆川君。人気漫画家を目指してガンバレ!
 ちなみに、今回はただほめられただけではなく、持ち込みの場合は担当の編集長と連絡先を交換。さらに編集長が彼を見込んで、編集部でアルバイトをさせ、プロの生原稿を見て勉強しないかと言う提案もしてくれました。



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