知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


総菜パン の科学
第1330回 2016年6月19日


 今や、国民食といえるほど、独自の進化を遂げてきた総菜パン。
 町のパン屋さんを覗いてみると…様々なおかずとパンを合わせた総菜パンが花盛り!コンビニでも目移りするほど色々な種類が!
 今回の目がテンは、懐かしくて新しい総菜パンの科学です!

①「焼きそばパン」焼きそばの麺は伸びない!?

 総菜パンの定番、焼きそばパン!よく考えてみると、炭水化物同士の組み合わせは相当、不思議ですよね?一体どうやって、この組み合わせが生まれたんでしょうか?そこで、焼そばパンの元祖の一つとされているパン屋さんを訪ねて聞いてみることに。伺ったのは東京の人形町で大正10年に創業した老舗の「サンドウィッチパーラーまつむら」。焼きそばパンを、50年ほど前に開発し、その後は定番商品に。開発者の松村牧子さんに、誕生秘話を伺うと、「深く考えないで、焼きそばをロールパンに挟んだら、美味しいんじゃないかっていうのが発想」、というかなりシンプルな発想で生まれた焼きそばパン。
 その後、日本中に広がり長年愛され、総菜パンの代表格になった秘密は何なのでしょうか?そこで、安村アナウンサーが、食品の専門家へ『焼きそばパンが愛される理由』の分析を依頼。先生によると秘密は味付けにあるとの事で、まずは味付けが塩だけの塩焼きそばを作り、塩焼きそばパンを調理。これを普通のソース味の焼きそばパンと食べ比べてみることに。すると、塩焼きそばパンはなんだか物足りない印象。柳澤先生によると、パンとソースの相性が、焼きそばパンのおいしさの秘密だというんです。そこで、味覚センサーをつかって検証。ソースと塩、それぞれの調味料をパンと合わせた時の味を計測してみました。
 ちなみに、パンだけのグラフは、全体的に数値が低く、味が淡泊なことがわかりました。パンに塩を合わせた場合は、塩味だけが増えました。一方、ソースとパンは、塩味だけでなく、うま味、甘味がバランスよく伸びたんです。淡白な味のパンに対し、複雑な味を加えるソースの味の焼きそばが、ぴったりだったようなんです。さらに、焼きそば自体にも、総菜パンの具として優れているポイントが!なんと、焼きそばの麺は伸びないとのこと。本当なのか、実験です。用意したのは、焼きそば・パスタ・うどんの3種類。それぞれの麺を通常通り調理します。そして、同じ10センチの長さに切ってから、並べて、そこに水を注ぎました。その後しばらく観察。早送りで見ると、パスタとうどんが、どんどん伸びています。そのまま8時間。結果は、うどんとパスタは2センチ以上伸びたのに対し、焼きそばはわずか1センチほどの伸び。焼きそばの麺は、他の麺に比べ、伸びにくいということがわかりました。実は、焼きそばの麺は、かなり水分を含んだ、すでにのびた状態で売られているんです。

所さんのポイント
ポイント1
時間がたっても伸びにくい麺を、パンと相性抜群のソースで味付けることで炭水化物の焼きそばでも、立派な総菜パンの具になるのだ!


②「カレーパン」揚げる理由を徹底検証!

 焼きそばパンと並んで高い人気を誇るのが、カレーパン!
 カレーパンの中身は、普通のカレーとどう違うんでしょうか?カレーパンを独自に考えたといわれるお店の一つ、東京・練馬にある「デンマークベーカリー」にお願いして、カレーパンの中身の作り方を見せて頂くことに。こちらのパン屋さんは、創業80年をこえる老舗。カレーパンは、創業当初から売っていたそうです。作り方は、この道40年のパン職人、石原健一さんに教えてもらいます。まずは、中の具になるカレー作り。ポイントは、冷めても美味しいカレーにする様々な工夫です。刻んだ玉ねぎとニンジンを3、40分ほど炒め、ペースト状になったら、果物や野菜などが入ったスープを加え、さらに40分ほど煮込みます。ポイントは、しっかり煮込み、煮詰めることで水分量を減らしていくことだそうです。
 水分がある程度飛んだら、牛肉を入れ、さらに1時間煮ていきます。
 ここで、カレールーとカレー粉を投入。普通のカレーとの違いは、一般家庭のカレーと違い、パンに包む場合は、ある程度の硬さが必要とのこと。ここで石原さんが取り出したのは…なんと、寒天!
 こちらでは、寒天を入れて、カレーを更に硬くかためるそうです。
 普通のカレーは熱々で食べるのに対し、カレーパンのカレーは冷めた状態で美味しい必要があります。長時間煮込んで水分を飛ばし、寒天を入れると、冷めても美味しくなるんだそうです。さらに一晩寝かせたら完成。スプーンを逆さにしても落ちないほど硬く仕上がりました。このカレーを、味見してみると…かなり濃厚でした!
 でも一体なぜ、カレーパンのカレーは冷めても美味しいのか?そこで実験。普通のカレーとカレーパンの具となる水分を飛ばしたカレーをつくり、そのまま一晩置きました。普通のカレーは冷めると、全体に脂が浮き出ています。しかしカレーパンのカレーは、見た目がほとんど変わらなかったんです。普通のカレーは冷めると、水と脂が分離し、表面が硬くなったり、舌触りが悪くなります。しかし、カレーパンのカレーは、そもそも水分が飛ばしてあるので脂が分離しにくいため、状態が変化しません。だから、冷めても美味しいカレーになるんです。
 こうして出来た中身のカレーを、パン生地に入れます。ヘラで取って生地にのせ、包んだら…薄く長く伸ばします。あとはパン粉をつけて、油で揚げるだけ。2分程で片面がきつね色になったらひっくり返し、合計4分ほど揚げたら、カレーパンが、完成!でも、そもそもどうしてカレーパンは揚げるのか?そこで、この店でカレーパンを開発した方の孫にあたる、井戸啓介さんに聞くと…「最初はサンドイッチにして食パンの間にカレーを挟んでそれを出してみたようなんですけ、売れなかった。その次は、普通にアンパンのように包んで焼いてみたが、それも売れなかった」と言います。焼いたカレーパンは、なぜ売れなかったのでしょうか?そこで、専門学校でパン作りを教える高江直樹先生の協力で、実験です!材料と分量は全く同じ。揚げて仕上げるものと、焼いて仕上げるものとで2種類のカレーパンを作ってみました出来上がったものは、見た目は殆ど変わりません切って中を見てみましょう。すると揚げた方は、キレイに具が詰まっていました。一方、焼いたカレーパンは、カレーと生地の間に大きな空洞ができていました。一体なぜ空洞ができたのでしょうか?工学院大学・山田昌治教授に聞いてみると…「焼く過程で、カレーの具から水蒸気が沢山発生して、内部からパンを膨らませた結果」と分析。
 焼く場合は15分ほど時間をかけます。すると加熱中に、カレーから水分が水蒸気となって出ることで、パンを風船のように膨らませ、しかも生地が焼き固められるので、形が戻りません。

所さんのポイント
ポイント2
油で揚げるカレーパンは、空洞ができずパンとの一体感が出るのだ!


③目がテン流「新惣菜パン」開発!

 目がテン流!新惣菜パン開発!新たな総菜パンのヒントを探して伺ったのは、パンメーカー大手の、山崎製パン!開発担当の鈴木智さんに、話を聞きました。こちらでは、様々な具材とパンを合わせた「ランチパック」という商品を30年以上発売しています。これまで発売した数は1000種類以上! メニューを見ると、甘めのタレが、意外にもパンにぴったりな「しょうが焼き風」。ごはんのおかずも以外にもパンに合う「麻婆茄子」。他にも、「台湾まぜそば風」や「十勝産牛肉入りボロネーゼ」といった、パンとの意外な組み合わせを数多く開発!
 これほどの数を開発するコツは、「固定観念にとらわれず、どんなものでも挟んで試すことが大事」だそうです。とはいえ試す具材は科学的な根拠があって、選んでいるわけではないようです。ならば、目がテンは専門家とともに、科学の目線でおいしい新総菜パンの開発に挑戦!かつてない、新しい総菜パンを目指します!協力してくれるのはこちらの専門家!3人の得意分野を生かし、科学で新総菜パンを作る初の試み!食感の専門家が食材を選び、味覚の専門家が調味料を決定、そしてパン作りの専門家が、総菜パンに仕上げます。まずは食感担当の専門家、和洋女子大学柳澤幸江教授のもとへ!食感の専門家が考える、開発のポイントは、「パンの食感とはすごく離れた異質なもの。プチプチとか、カリカリとかコリコリですね。そういうものを上手くマッチさせると何か面白いコッペパンの総菜パンができるかな?という風に期待してる」と言います。焼きそばパンのような、パンと具材の食感が近いものは、世の中に沢山あるので、今回は、パンと異なった食感というテーマで選んでいきます!ということで、コッペパンに様々な食材をあわせて試食。まずは…たくあんを選び、アボカドとあわせて…試作品第1号の完成。その後も、様々な食材を挟んで試すこと2時間。10種類ほどの食材を試した結果…パンと異質な食感の、海ぶどう、とびこ、たまねぎを合わせてみると…ついに新食感を発見か!?
 こうして、食材の組み合わせが決定!続いては、味覚の専門家、東洋大学露久保美夏助教のもとへ!専門家が考える味付けのポイントは、「塩味。塩分をふくんでいるものであったり、あとうま味。アミノ酸とか、そういうのを含んでいるものであったり、あとは油分。コクを出すという意味でも、少し脂肪分の含まれているものを合わせていくとパンとの相性が良くなっていく」と言います。そこで、マヨネーズを足してみたり、様々な調味料を試しながら、食感の専門家が選んだ食材にどんな味付けが合うのか、試作を重ねていきます。そして、味つけの案も完成。最後にパンの専門家、東京製菓学校パン科高江直樹先生のもとで、食感と味付けのポイントを元に、総菜パンとして仕上げます!
 こちらも、試食を重ね…ついに完成!
 完成したのは、「海ぶどう・とびこ・たまねぎ・マヨネーズ・しょうゆ」を使った「新食感プチプチ総菜パン」と、「たくあん・じゃがいも・ゆずこしょう」を使った「たくあん入りゆずこしょうポテトパン」の2つです!
 スタジオで試食した所さんも、「うまい!おもしろい!」と大絶賛でした!






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