放送内容

第1370回
2017.04.09
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 水中の動物

 自然がテーマの科学者たちが未来につながる楽しい田舎暮らしを目指す長期実験企画「かがくの里」2017春スペシャル!

農業の新たな先生が登場

 2014年11月、荒れ果てた土地に降り立った最初の科学者・松村先生。長年の科学の知識と経験で、中心となって土地を切り開き、荒地は緑あふれる田畑へとよみがえり、秋には豊かな実りに恵まれるようになりました。

 梅が咲き始めた3月初旬。この日、かがくの里にやってきたのは宇都宮大学で農業を研究する、高橋行継准教授。松村先生の後任として、これからかがくの里で頑張ってくださる方です。高橋先生は、高齢化が進む農業の現場で、効率よく栽培する方法を科学的に研究されてきました。しかも専門は米や麦、大豆と言った穀類などかがくの里で中心となっている作物です。さっそく田畑をご案内。
 これまで農薬なしで育ててきたもち米。病気にもならず、虫もつかず、去年の収穫量は10アールあたりにして、およそ450kgでした。

 すると高橋先生がこの田んぼで「ゆうだい21」を作ろうと提案。ゆうだい21は、高橋先生が勤める宇都宮大学で、2010年に新品種として登録されたお米。
 高橋先生は現役の教授なので、毎日、かがくの里にいられません。手がかからない「ゆうだい21」だったら、秋には豊かな実りが期待できるそう!しかもその味は、宇都宮大学の試験で味、香り、粘りともコシヒカリと同等以上の高評価!

ポイント1

農業の新しい専門家を迎え、3度目となる秋の収穫祭に向け、今年もチャレンジスタートなのだ!

新しい農業の専門家の歓迎パーティー

 高橋先生、ウエルカム!ということで、里の恵みでウエルカムパーティ!調理科学の露久保先生による調理科学的おもてなし料理。
 一品目は砂糖なしでも、とっても甘~い大学芋。お芋に絡める水あめは、なんと、かがくの里で採れたもち米からできるんだそう。まず、もち米をやわらかめに炊いておかゆにします。そしてこちらは、大麦を発芽させた麦芽。これをすりこぎで粒が少し残るまですり、おかゆに加えます。別の容器に移して、アミラーゼが最もよく働く温度60℃ぐらいを保ちながら、8時間置くと、もち米のデンプンがほとんど糖に変わって、この液体が水あめの元に。煮詰めて、水分を飛ばすともち米からあま~い水あめが出来上がりました!甘さが特徴のサツマイモ、シルクスイートを低温でじっくりと素揚げ。甘い水あめをからめます。仕上げのゴマをぱらり。砂糖なし・かがくの里特製、甘い大学芋!

 二品目の科学的おもてなし料理は…鹿児島の銘菓「かるかん饅頭」。「かるかん」といえばフワフワの食感。その秘密は、生地に混ぜる山芋なんだそうです。露久保先生によると、その山芋の役割はかがくの里で採れた里芋でも代用できるそう。
 まずは、サトイモの皮を剥き、すりおろします。山芋や里芋など粘り気が強いイモほどすりおろしたとき、気泡が沢山入ります。中の気泡が熱を加えると膨張、かるかんのフワフワな食感が生まれるんです。空気をたっぷり含んだすりおろし里芋に、お米を粉にした上新粉と砂糖、水、メレンゲを加え、よく混ぜ合わせます。最後に、タネをカップに流し込み、中に餡を入れて蒸していきます。20分後。フワフワの手作りかるかん饅頭が完成!

 最後に用意したのが…かがくの里で採れたソバで作ったそば茶!そばの実を鍋で煎り、すりこぎで砕いて煮出します。そばの栄養が余すところなく入った茶です!

ポイント2

今年の秋には、高橋先生が育てた里の恵みで何が食べられるのか楽しみなのだ!

エビ養殖計画始動

 1月下旬。魚養殖の専門家千葉先生と阿部さんはインドネシアへエビの最先端養殖を視察に行きました。目に飛び込んできたのは、池の中に木が植えられているマングローブ。エビの最先端養殖では、マングローブを囲うような形で水路が作られていて、マングローブの葉が落ち、その栄養で植物プランクトンが増えます。つまり人がエビにエサをやる必要がない自然循環型の養殖。これを見た千葉先生は、かがくの里では、マングローブを水田に置き換える計画を立ち上げました。

 3月中旬。この日、千葉先生と地元工務店の根本さんが水田の改良工事に向け、相談していました。千葉先生は、田んぼのあぜ道の内側に、インドネシアで見た養殖と同じような水路を作ろうというんです。田んぼの土には、堆肥などの肥料がたっぷりで栄養が豊富。田んぼの水は、エビのエサとなる植物プランクトンが発生しやすいんだそうです。田んぼのその特徴を応用して、かがくの里でも自然循環型のエビ養殖をしようというわけなんです。なぜ水路を掘るのかというと、水深を深くすると水温が安定し、エビが水路で暮らしやすくなるから。稲が育ってもエビの収穫がしやすいという利点も。だた、インドネシアのエビ養殖は海水で養殖していました。山の中にあるかがくの里でエビ養殖はできるのでしょうか?千葉先生によると「淡水産のオニテナガエビ」を育てるとのこと。オニテナガエビは東南アジア原産の藍色の長いハサミを持つ全長30cmにもなるエビ。

 そして千葉先生はバナメイエビも養殖するとのこと。バナメイエビはクルマエビに近い種類で最近はスーパーでよく見かけますが、海水のエビです。海水に生きるバナメイエビと淡水に生きるドジョウやホンモロコ。本当に共存できるの?
 千葉先生が働く北里大学に伺って見せてもらったのは海水魚のクマノミとスズメダイと淡水魚の金魚が一緒に泳ぐ水槽。普通、海水の魚を淡水に入れ、淡水の魚を海水に入れたら死んでしまいます。そこには、塩やカルシウムといった体の中の“ミネラル分”が大きく関わっています。海水魚も淡水魚も体液の中に0.9%のミネラル分が含まれていて、水を取り込みながら、それを一定に保っています。海水のミネラル分は3%。淡水は、ミネラル分がごくわずかしかありません。そのため、海水で生きる海水魚は、多すぎるミネラル分を外に出し、水分だけをとどめる機能を持っています。
 逆に、淡水に生きる淡水魚は微量のミネラル分をとどめ水分を排出する機能を持っているんです。だから、海水魚を淡水に入れると体内に水分が多くなりすぎ淡水魚を海水に入れるとミネラル分が多くなりすぎて死んでしまうんです。しかし、体液に近いミネラルの濃度であれば海水魚も淡水魚も調節する必要がなくなり、同じ水で生きられるというんです!

ポイント3

海水産のバナメイエビと淡水魚のドジョウやホンモロコもいる!変な池ができそうなのだ!