放送内容

第1372回
2017.04.23
沖永良部島 の科学 場所・建物

 今回の目がテンは、謎の島シリーズ! 「2016年夏、人気急上昇の離島ランキング」で1位になった鹿児島県・沖永良部島!

沖永良部島ってどんな島?

 東京から飛行機を乗り継いで4時間半。調査するのは2016年入社の滝菜月アナウンサー。沖永良部島は、鹿児島県奄美群島に属し、鹿児島市から南におよそ552km。人口はおよそ1万3000人、自然が豊かで風光明媚な島です。
 しかし、ふもとの町を覗いてみると人気急上昇NO.1なのに、観光客が全く見当たりません。おきのえらぶ島観光協会の古村英次郎さんに魅力を聞いてみると、案内されたのは川…と思ったら、地元でジッキョヌホーとよばれる湧き水スポット。

 実はここ、【平成の名水百選】にも選ばれた地下水が湧き出る名所だったんです。このように島には、地下からの湧き水を汲める「湧水(ホー)」と呼ばれる場所や、「暗川(クラゴー)」と呼ばれる、地下から流れてくる川の水を汲める場所が至る所にあり、島の皆さんはこれらの地下水を生活によく利用しているそうです。でも、これが島の人気とどんな関係が?謎は深まるばかり…。
 次に案内されたのが地下水を組み上げるポンプ。このポンプを使って、沖永良部島では、特産であるえらぶゆりやさとうきび、じゃがいもなど、様々な作物を育てているんです。生活用水に農業用水と、とっても水が豊富な島なんです。

 しかし、ここで疑問が…一般的に島は、川が少なく水の確保が難しいはず。なぜ沖永良部島には水がこんなに沢山あるのか?古村さんによると、なんと島の豊富な水は、全て洞窟から流れてきていたんです。しかも、その洞窟の数が尋常ではありません!その数なんと200以上!実は、ここ数年、洞窟内部を探検するケイビングというスポーツが人気を呼んでおり、沖永良部島には、その洞窟を求めるケイビング客が急増!洞窟の聖地とまで呼ばれているんです!

ポイント1

人気急上昇の離島No,1に輝いた理由は、島の地下にある200以上の洞窟にあった!

ナゼ沖永良部島には洞窟が多い?

 なぜ沖永良部島には洞窟が多いのでしょうか?やってきたのは島で最も有名な洞窟「昇竜洞」。全長3500mあるこの昇竜洞はそのうちの600mが一般公開されています。洞窟の専門家、大阪経済法科大学客員教授の浦田健作先生と内部を調査。先生によると、この島の洞窟は石灰岩で出来ているとのこと。石灰岩が雨水で溶かされできた洞窟を、鍾乳洞と呼び、この島にある200以上の洞窟は、この鍾乳洞です。

 では、どうして沖永良部島には鍾乳洞が多いのでしょうか?浦田先生によると、秘密は島の地形にあるといいます。沖永良部島の地形は、基盤岩と呼ばれる地層が山の一番高い所から海まで続いています。その上に、頂上付近を除いてドーナツ状にかぶさるように、石灰岩が取り囲んでいます。ここに雨が降ると、頂上に降った雨はまず基盤岩を流れていきます。基盤岩は雨水では溶けないため、そのまま地表を流れて、谷などへ集まり水脈を作ります。そしてこの水脈が石灰岩へ到達すると、徐々に溶かして、洞窟を作るんです。しかしもし、地表が石灰岩で覆われているうえに、地形が平坦だった場合、降った雨が水脈を作にくく、そのため洞窟ができにくいんだそう。沖永良部島の南に有る与論島がまさにその地形で、石灰岩は豊富にあるのですが、沖永良部島に比べて洞窟ができにくいんです。

ポイント2

沖永良部島は、島の高低差と洞窟をつくる石灰岩のバランスが絶妙な洞窟のできやすい島だったのだ!

話題のケイビングの魅力調査!

 滝アナはガイドの平健也さんとケイビングへ!ケイビングは普通の洞窟観光ではありません。つなぎ、ヘッドライト、ヘルメットは必須アイテム。命綱を付けるハーネス、グローブも着用し、安全対策。
 今回ケイビングする水連洞は、道のり全長約1.4キロ。名前の通り、地下水が豊富な洞くつ。幾つかの難所がありますが、それを越えれば3つの絶景を見ることができます。

 それではスタート!水連洞は30年ほど前までは観光洞として公開されていましたが、今は人が管理していません。洞窟に入って少し進むとあたりはもう、真っ暗。そのまましばらく観光用の道を進むと、目の前に立ちはだかったのは…「腐った橋」。慎重に橋の鉄枠を渡ります。そして渡り終えるとその先は手付かずの自然洞窟。目の前には大きな水たまりが。深みにはまらないよう注意して進みます。しかしその先には、歩ける場所が無いほどさらに巨大な洞窟プール!洞窟で、まさかのスイミング!ちなみにこの時の洞窟内の水温は約20度。
 プールをこえると、洞窟の専門家・浦田先生があるものを発見。クモの糸の先端に鍾乳石が付いています。あまり報告例がなく、とても珍しい鍾乳石なのだそう。

 ではそもそも鍾乳石はどのようにしてできるのか、その仕組を実験で再現。用意したのは、ペットボトル、お湯、スポンジに、ガーゼと、熱帯魚の水槽でカルキ抜きにも使われる、チオ硫酸ナトリウムという、物質。まずは、薬品をお湯に【薬品3:お湯1】の割合で溶かした水溶液を作ります。この水溶液を使うと、本物の鍾乳石より短い時間で、鍾乳石のできる仕組みを見られます。この水溶液を入れたペットボトルの口をスポンジでギュッと詰め、その上をガーゼでおおいます。これを逆さまにセットし、水滴がなるべくゆっくり落ちるように底に空気穴を開けて調節。そのまま放置すると、実験開始から2日かけてペットボトルの口の部分からつららのようなモノができました。鍾乳石は、水にとけていた石灰分が再び結晶化することで大きくなっていきます。

 それでは再びケイビングへ!さらにプールを越えると第一絶景ポイントに到着!ライトアップしたその場所がこちら!!

 実はこれ、リムストーンと呼ばれる形の鍾乳石で、田んぼの畦(あぜ)のように鍾乳石が沈殿してできたもの。さらに水がたまっているものをリムストーンプールと言います。たまった水が、含まれる石灰分の影響で、エメラルドグリーンに輝いています。ライトアップされた絶景が見られるのもケイビングツアーの魅力の一つ。

 そして次なる絶景を求めて更に奥へと向かうと、なんと道が途切れてしまいました。しかし、わずかな横穴に風速計をかざしてみると風が吹いているのがわかります。専門家によると、この先に道が続いているとのこと。ガイドの平さんが、手を前に出し、足で身体を押し出して進んでいきました。これをお手本に、続いては滝アナが挑戦。すると穴の途中でヘルメットが引っかかり絶体絶命に…それでもなんとか切り抜けました。

 難所を抜けて進んだ先に待つのは、第二の絶景ポイントがこちら!

 ライトアップするとステージのような場所に様々な鍾乳石が並びます。中でも目を引くのが純白の鍾乳石。浦田先生によると「鍾乳石を作っている炭酸カルシウムの純度が高いと白く、少し半透明になる」とのこと。ここまで純度が高い鍾乳石は滅多にないんだそう。でも、まだまだ終わりません。更に進んで最後にたどり着いた絶景は、ツアーで行ける最奥地の滝!

 鍾乳石、滝、緑の滝壺、とっても幻想的な世界が広がっていました。最後は滝アナ、滝つぼダイブで地底の滝を楽しみケイビングが終了!

ポイント3

地底を探検すると、驚きの世界が広がっているのだ!

※自然の洞窟の探検は、必ず専門ガイドと一緒に行なってください。