放送内容

第1394回
2017.10.01
バイオロギング の科学
[Part2・前編]
水中の動物

 動物たちにカメラや行動記録計を取り付けその生態を探る研究・バイオロギング!
 今回のターゲットは…その生態がほとんど分かっていないジンベエザメ!

「ジンベエザメ・ユウユウ搬出大作戦」

 ジンベエザメは世界最大の魚類と言われていて、成長すると全長15メートル以上にもなり、重さは30トン。寿命は100年以上と言われていますが詳しいことはほとんど分かっていません。「どうしてジンベエザメはこんなに大きいのか?」海の生物のバイオロギングのスペシャリスト・長崎大学海洋未来イノベーション機構の河邊玲教授の水族館で保護しているジンベエザメ放流プロジェクトに密着して、その謎に迫ります。
 桜島を望む錦江湾にある、いおワールド「かごしま水族館」ここで最も人気なのがジンベエザメのユウユウです。

 ユウユウがここへやって来たのは2年前、志布志湾の定置網に掛かったところを保護されました。当時の体長は4メートル…この2年間で5メートル40センチまで成長し水族館で飼育できる限界の大きさに達したのです。海へ放流されることが決まり、その姿を見ておこうと、この日多くの人が集まっていたのです。そして放流にあたり、バイオロギングすることが決定!そのために必要なのが、全長7メートルのジンベエザメ専用の輸送容器。その内部には、驚きの工夫が隠されていました。ジンベエザメは、泳ぎ続けることで海水の中の酸素をエラで取り込んで呼吸をする魚。停まってしまうと呼吸ができなくなるため常に泳いでいる必要があるんです。そのため、海水が満たされた輸送容器の中では、常にパイプから海水を吸い上げ、前方に運びます。そこで酸素と共に再び流入させることで、輸送中のユウユウの呼吸を助けるというのです。

 搬出作業、本番当日。輸送容器を水槽に入れ込みます。エサを使って容器までおびき寄せること8度、ユウユウが無事、容器の中に入りました。しかし、ここからが本番!ユウユウを海まで運ばなければなりません。釣り上げられた容器は、そのまま建物の外で待ち受けていたトレーラーの荷台にセット。輸送中は、ユウユウに異変がないか常にモニタリング。いよいよ、ユウユウを載せたトレーラーが海へ向けて出発!輸送先は、かごしま水族館からおよそ60キロ離れた片浦港。しかし、そこに至るまでには金峯山を通る峠超えが。傾斜がキツく、カーブの多い山道…はたしてユウユウは無事なのか?出発して1時間半…ようやく峠を超え、東シナ海が見えてきました。2時間後…ようやく片浦港に到着。ユウユウは長時間の輸送にもかかわらず、落ち着いている様子。今度は、クレーンで輸送容器ごと海へ。動力がないため、漁船で引っ張って運びます。
 しかし着いたのは、生け簀。ここに1週間、入れておくと言うんです。これは輸送中に慣れない容器の中に入れられて溜まったストレスを軽減する意味。また、慣れない海の環境に順応させる意味でも、1週間ほど時間が必要なんです。飼育下でも、ちょっとストレスがかかるとエサを食べなくなることが報告されています。

ポイント1

ジンベエザメはあんな大きなカラダをしているが、実は結構繊細な魚なのだ!

ユウユウどこへ行く?バイオロギング開始!

 いよいよバイオロギング開始!ということなんですが、今回取り付ける装置は2つ。1号機は外側のオレンジ色の部分が浮力体で、中に3台のカメラが仕込まれています。2号機はカメラが1台、そして水深や水温、体の動きなどが分かる行動記録計、そして体温計が仕込まれています。実は今回は放流してから4日間のあいだバイオロギングする予定なので、1台ずつ違うタイミングで撮影を行い、より長時間の撮影に対応しようということなんです。
 そしてユウユウの体のどこに装着するかにもポイントが。1号機を左の胸ビレに、そして2号機は背中に装着。この2つのアングルからユウユウの見る世界を記録しようという試みです。

 ユウユウの放流の日。水族館に河邊先生率いる長崎大チームが合流しました。今回のバイオロギングは、かごしま水族館と長崎大の合同プロジェクトです。そこへ佐藤真知子アナウンサーも合流。
 生け簀の中のユウユウは元気そう。1週間で、海の環境にも馴れてきたようです。そこで、沖合まで運ぶために再び輸送容器に入ってもらいます。水中では、7人のダイバーがユウユウを誘導しようと奮闘。必死で誘導するも、元気いっぱいのユウユウ。なかなか上手く行きません。なんとかユウユウの収容に成功!すぐに船で引っ張り、容器の中のユウユウの呼吸を助けます。そしていよいよ装置の取り付け開始。1時間かけてようやく胸ビレと背中に装置を取り付けることに成功!向かうは、東シナ海に面した大海原!沖合6キロの放流地点。カメラを付けたユウユウが海へ帰っていきました。
 しかしバイオロギングはここからが本番。装置は上手く行けば、4日後にタイマーで自動的に取り外される仕組みなんです。浮上したら電波を発して位置情報が衛星を通して届くんですね。それを目指して回収に行くという段取りです。河邊先生によると、これまでの経験上、回収が最も苦労するところなんです。装置の取り外しが上手く行くのか?そして映像が上手く撮れているのか?しかも、ユウユウがどこへ行くかはカメラを回収してみないとわかりません。

ポイント2

はたして、ユウユウのバイオロギングは成功するのか?次回に続くのだ!