放送内容

第1422回
2018.04.22
イルカ の科学 水中の動物

 東京から南へおよそ200km。伊豆諸島の1つ御蔵島は世界的にも珍しい、野生のイルカと泳げる島。世界中からイルカの研究者が御蔵島に集まり様々な生態調査を行っているんです。そんな御蔵島のイルカを科学します!

研究者注目の島

 人口はわずか300人ほどの御蔵島。イルカの社会行動について研究している帝京科学大学・篠原正典先生によると「御蔵島は昔からイルカがずっとすみ続けている。水中に人間が入ってイルカ同士が何をしているのか見られる環境がある」とのこと。世界には、野生のイルカが定住している場所がいくつかありますが、海の中に人間が入って調査できる場所は御蔵島を含めて、世界で3か所しかないと言われています。

 そんな世界でも珍しい場所で野生のイルカの生態を調査します!御蔵島では、イルカの生態を守るためウォッチングできる時期は3月15日から11月15日までと決まっています。スタッフが撮影に訪れた時期は、3月末、ちょうどイルカウォッチングの解禁直後で久しぶりの人間で興味津々になる絶好のタイミングです!海に出てから、およそ10分で早速ミナミハンドウイルカとご対面。御蔵島には、およそ150頭のミナミハンドウイルカが生息しています。

 番組スタッフに近づき同じスピードで一緒に泳いでくれました。篠原先生によると「イルカは好奇心が旺盛。人間が来たときも、どうやって付き合ったらいいのか関係性をイルカから模索している」と言います。
 御蔵島にたくさんのイルカが定住している理由は、独特な地形にあります。船で島を1周してみると、見えてくるのは崖ばかり。御蔵島は、360°、崖に囲まれている島なんです。漁業が盛んな場所では、イルカが魚を食べ荒らしてしまうため人間たちに追い返され、寄り付かなくなるのですが崖で囲まれている御蔵島では港が作りづらく、イルカを追い払う必要もなかったんです。そのため、多くのイルカが定住しています。そもそも、御蔵島がこのような地形になったのは黒潮と関係があります。何千年もの間、流れの強い黒潮にさらされて海岸部分が削り取られてしまったため、断崖絶壁の島になったんです。

 さらに火山でできた島なので海はすぐ深くなっています。これで湧昇流が起こりやすく、海の底にある栄養塩が上の方まで上がってきて豊かな海になります。特殊な地形と黒潮のおかげで、餌の小魚が豊富なので、イルカが住みやすい環境なんです。

 イルカの研究者たちは御蔵島で20数年前から個体識別という調査を行っています。個体識別調査とは、イルカの顔の特徴や、 体の傷跡、肌の状態などを目印に、それぞれのイルカに名前をつけ、生態を研究すること。個体識別はすべてのことを知るのにベースになるため、生活史を知るには絶対必要なのだそう。そして、この個体識別調査により、育児経験のないイルカが血縁関係も、仲が良い関係でもない他者のイルカの子を育てるというのを、世界で初めて確認できたんです。理由は、まだわかっていないのですが、イルカの「助ける」という社会行動の特性が養子とりに繋がった可能性があるとのことです。

ポイント1

イルカの知られざる生態を発見できたのは、御蔵島だからこそなのだ!

御蔵島イルカの貴重な生態

 研究者が注目する御蔵島でイルカの様子を撮影していたところ、不思議な行動をしているイルカを発見!胸ビレで相手の体をなでているようです。篠原先生によると、これは「ラビング」。イルカが胸ビレで相手をこすることでお互いの親密さを確認するコミュニケーションの一つ。

 御蔵島では、いたるところでイルカたちがラビングし合う様子が観察できます。さらに海の中を泳いでいると海の底を一列に並んでゆっくり泳いでいるイルカたち。これは眠っている最中。イルカは半球睡眠と言って、片方の目を閉じ脳の半分だけを休ませることで、泳ぎながら眠ることができるんです。

 さらに、別のイルカは頭から空気を出しました。先生も驚いたこの行動は「バブルリング」。頭の上にある憤気孔から空気を吹き出してリングを作って遊んでいるんです。篠原先生も、バブルリングは何年分のデータを整理しても100回くらいしか見られていないのだそう。

 さらに先生が大興奮した貴重な映像が他にも次々に!イルカたちが小魚の群れを追いかけて遊んでいたところ、一頭のイルカが尾びれを大きく動かし水圧で小魚を失神させ別のイルカが小魚を食べました。他の動物は食べ物に対する執着心が非常に強くて分け合わないが、イルカはみんなで共同で狩りをして、みんなで分け合える動物なんだそう。続いて、イルカが海の中を漂う海藻を体に引っ掛けて遊んでいたのですが、海に漂う海藻をイルカがキャッチして、それを尾びれから放るとスタッフがキャッチ!これぞ海藻キャッチボール。イルカが遊んでくれるのです!そして、先生が今回の撮影の中で一番驚いていた映像が、一頭のイルカが手を回すスタッフを、垂直な状態でじっと見ていました。普段しない動きで、イルカがよっぽど興味を引かれたと推測。篠原先生も初めて見た行動でした。

ポイント2

御蔵島の海でイルカの珍しい生態を撮影することに成功したのだ!

佐藤アナ 御蔵島上陸でイルカとダンスに挑戦!

 飛行機、ヘリを乗り継ぎついに、御蔵島に初上陸した佐藤アナ。今回挑戦するミッションが「イルカとダンス」イメージは、イルカと仲良く戯れるマーメイド。翌日の本番に備えこの日は早めに就寝。
 そして、上陸2日目。朝から、ウエットスーツに着替え準備万端!しかし微妙な天気。ガイドさんから「風が強く、海に入ることができない」と・・・。でも、チャンスはまだあります!しかし3日目はさらに天候が悪化。またもや中止に。いよいよ都内に戻らなければいけない最終日…海は大荒れ!

ポイント3

結局、1度も海に入ることなく帰ったのだ!