チェコ民族復興運動のさなかに生まれ育ったミュシャにとって、チェコ人としてのアイデンティティと祖国愛は、生涯変わらぬ精神的支柱であり、10代で画家になることを決意した時から、画業を通して祖国のために働くことが夢でした。その決意は、ミュシャがしばしばスラヴ統一を象徴するロシアの民族衣装ルパシカを着て自画像や写真に現れることや、ミュンヘンやパリ、ニューヨーク、シカゴなど、行く先々でスラヴ協会を結成し、コミュニティのリーダー的な存在となっていたことからもうかがえます。
このセクションはミュシャの芸術の原点となる祖国愛をテーマとし、自画像、家族や友人のポートレイト、故郷イヴァンチッツェを題材とした作品などで構成し、本展全体の導入章としたいと思います。