第4章: The Message of Beauty 美の探求

四季

《四季》 1896年 カラーリトグラフ(屏風型フレーム・エディション) 54 x 103 cm (C)Mucha Trust 2013

四季を1年のサイクルとして絵にすることは古くから行われていたが、当然のことながらそこでは季節感をいかに出すかがポイントとなる。ミュシャの絵で「季語」に当るのは、「冬」の雪は一目瞭然として、「夏」は大きな赤いケシの花と、「夏」が足をひたしている冷たく心地よい水である。「春」では春らしい花の咲く中、小鳥たちがさえずっている。「秋」は女性が手にしているブドウが季語である。いずれにも共通しているのは、たとえば夏=青年、冬=老年の見立てから夏を青年、冬を老人として描く場合もあるが、ミュシャらしく、またベル・エポックにふさわしく、ここではすべて若い女性が季節として擬人化されている。これらのシリーズは1枚ずつバラして、四季それぞれのカレンダーにしたり、商品の宣伝ポスターに転用することもあった。