第5章: Paris 1900 パリ万博と世紀末

装飾鎖付きペンダント

《装飾鎖付きペンダント》 1900年 金、エナメル、淡水真珠、青貝、半貴石 159cm (C)Mucha Trust 2013

ミュシャは何よりもまずポスター作家、版画家として知られているが、そのほか、油彩画家、挿絵画家、彫刻家、商品パッケージ、食器や宝飾品のデザイナーとしての顔もある。ミュシャが宝飾品、アクセサリーに力を入れたのは1900年前後の数年であるが、そのきっかけはサラ・ベルナールのためにミュシャがデザインしたポスター《メディア》であった。ここで主役を演じるサラの左腕に巻かれた(絵の中の)蛇のモチーフのブレスレットをサラが気に入り、当時の有名な宝飾店フーケにこれを実際のブレスレットとして作らせた。以後、ミュシャとフーケの「コラボ」が始まり、1900年のパリ万博で頂点に達したが、精巧なデザインと洗練された装飾性を見せるこのペンダントもパリ万博に展示されたもののひとつと思われる。