ストーリー

第1回(2008年4月22日放送)

 都心のきらびやかなレストランで働いていた23歳の料理人・江崎ヨシ夫(内博貴)。ショーアップされた派手なパフォーマンスがウリの今の仕事に疑問を感じた江崎が、「自分の働くべきところ」と選んだのは東京の下町にある「一升庵」という老舗料亭。
 ところが、江崎の前に現われ「一升庵の女将」と名乗った女性は、二日酔いで酒の臭いをぷんぷんさせた若い女…。江崎は、その「おせんさん」こと、半田仙(蒼井優)がいまの一升庵の女将と知り「雇って損はさせない」からと頼み込み働くことを許される。
 先代の時から一升庵に勤める仲居頭の浅井シズ(余貴美子)に案内された板場では、板長の藤城清二(杉本哲太)、二番板の留吉(向井理)、追い回しと呼ばれる雑用係の健太(奥村知史)が働いていた。そして、テル子(鈴木蘭々)冬子(工藤里紗)玉子(森田彩華)という3人の仲居が揃っている。そして、江崎が子供の頃に会ったことがある先代の女将・千代(由紀さおり)は、おせんにその座を譲った後、伊豆で悠々自適の隠居生活を楽しんでいるようであった。

 料理の腕には自信満々の江崎だったが板場に入るやいなや、一番格下の雑用係を命じられてしまう。納得がいかないうえに、一升庵の料理のやり方といえば、セオリーとは全く異なりめちゃくちゃに見える。面取り、隠し包丁もせずに煮る大根、煮干のワタや頭を取らずに取るダシ。それこそが「一升庵の思想」というが江崎にはサッパリ…。

 おせんとなじみの骨董屋・珍品堂さん(渡辺いっけい)に勧められて200万円もする信楽の水桶をぽーんと買い、平気で外に放置するおせん。“身ひとつで出直す”という江崎の言葉を素直に受け取り、持ってきた家財道具を勝手に売り払ってしまうおせん。客に豆腐の産地を聞かれても答えられないおせん。江崎はおせんの行動を、全く理解できない。本当に女将の風格があるのかも。しかも給料が月5万円と聞き文句たらたら。「一升庵に来たのは失敗だったかも…」
 江崎は「憧れの一升庵はオレの幻想でした。ここにも本物はありませんでした」とおせんに告げ、早々に一升庵を出て行くのだった。

 ある日おせんは、馴染み客のクッキングスクール校長・木下秀雄(松方弘樹)の頼みで、スーパースピード料理のカリスマと言われ、テレビでも活躍する料理研究家・桜井三千子(片桐はいり)と、料理対決をすることになってしまう。「料理は戦いじゃありませんよ」というおせん、ただ桜井の横でまかない料理を作るだけなら…と出演をOKしたのだ。

 『木下クッキングスクール創立60周年記念イベント。家庭料理とまかない料理。スーパースピード料理研究家・桜井三千子VS一升庵女将・半田仙』
 対決の日、調理室にはおせんが使ったこともない電子レンジ・ミキサー・フードプロセッサーなどの便利調理器具がたくさん。しかしおせんは包丁・まな板・雪平・宮島・焼き網と昔ながらの道具だけで料理をする。
 その会場にフラリと現れた江崎は、おせんのつきそいで来ていたシズと一緒に観戦することに…。

 料理対決の課題は『アフターホームパーティー』
 前日の料理の残りのてんぷら・ロースカツ・ヒレカツをどのように料理するかというもの。
 司会者に紹介されて登場した桜井はおしゃれなエプロン姿で、テキパキとフードプロセッサーや電子レンジを使いこなし、みるみると作業をすすめる。わずか6分で海老マヨネーズソースライスとカツ丼の2品が完成。
 一方のおせんは割烹着姿で申し訳なさそうにしながら、桜井のスピィーディさに対しゆっくり、ゆっくりと料理を進める。おせんは、ヒレカツでソースカツ丼と海老天茶漬けを作るという。

 白髪葱を切っていると、静まった会場におせんの葱を切っている音が心地よく響いている。そのノスタルジックな音に聞き入る会場の人々…。その姿はまるで、子供の頃みた、母のせつないくらい日常の姿…。
 網焼きした海老のてんぷらを切ってお椀に入れる。丼によそったご飯に割り下で煮たヒレカツをのせ、白髪葱をのせる。海老のてんぷらには熱い煎茶をかけて、おせんもやっと2品を作り終える。

 いざ、審査。審査員3名のうち2票が桜井とおせんに分けられる。木下校長は、結局甲乙付け難い…と両方の札を上げて勝負は引き分けに。このイベントのスポンサーでもある林(宅間孝行)に睨まれたからなのだが、本当は木下はおせんの料理に感激していたのである…。
 イベントも終わり、誰も居なくなった調理室で江崎はおせんの作ったカツ丼を食べてみる。
 「…」黙ってガツガツとそのカツ丼をほおばる江崎だった。
 そこに現れた木下校長とシズの会話を聞き、おせんはアフターホームパーティというテーマを考え、深酒した相手のことを思い、卵やたまねぎを使わないさっぱりしたカツ丼を作ったことを知る。スピーディではないが、食べる人のことを思いやった料理だったのだと江崎は知るのだった。
 おせんの心持ちに感じ入った江崎は一転、おせんに「もう一度一升庵で働かせて欲しい」と頼み込む。「でも、一升庵の女将なら、豆腐の産地くらい知ってても…」などと言いながら。

 おせんは江崎を豆腐屋に連れて行き、豆腐の産地を知らなくても、豆腐をこさえる職人さんが信じられればいいのだと話すのだった。
 「一升庵の料理は、手間を惜しまず、人を信じることから始まるんでやんすよ」
 結局、再び一升庵に迎え入れられた江崎だったが、彼は忘れていた。
 給料は5万円だってことを…。