ストーリー

第3回(2008年5月6日放送)

 「一升庵名物 とろろめし」ののぼりを店前にたてる仲居たちとおせん(蒼井優)。誰も、なぜとろろ飯だけのぼりを立てるのか、理由は知らない。

 ある日江崎(内博貴)は飲み屋で元板前だという静岡なまりの男(西村雅彦)に出会う。「タコ引きの竜」と名乗るその男は、江崎が一升庵で働いていることを話すと、江崎に飲み代を押し付けて逃げてしまう。「一升庵のヤツは俺におごって当然なんだ!」と。

 江崎が翌日、その男のことをみんなに話していると清二(杉本哲太)は顔色を変える。おせんは千代(由紀さおり)にその竜を知っているかと尋ねるが、理由は教えてくれない。
 おせんは、江崎に頼んで「タコ引きの竜」に会いに行く。

 江崎とともにタコ引きの竜を探し出したおせんは、1枚の写真を竜に見せる。若き日の千代と竜が客と一緒に笑顔で映っている写真…。おせんは竜の写った写真が他の写真とは別に保存されていたことから、この人が自分の父親では?と子供の頃から思っていたと言うのだ。竜は、それを聞いて、一升庵の看板だった自分と跡とり娘の恋は無い話ではないとニヤリ。しかし「じゃ、どうして板長にならなかったんですか」と聞かれ、腕を怪我して包丁を握れなくなった自分を、千代は放り出したうえ、弟分の清二を板長にしてメンツもボロボロにされた・・・と竜は語る。

 「なにかわっちにできることがあるなら言ってください」おせんの言葉に、竜は「うまい酒を死ぬまで飲ましてくれ」と答えるのだった。

 約束を果たすため、おせんと竜が一緒に飲んでいる所に千代がやってきた。千代は竜に向かって「あんたと私の間にどうやったら子供が生まれるんだよ」とおせんを騙して酒を飲んでいる事を怒るが、竜は「あんたが俺にした事はこんなもんじゃすまねえ!」と言い返し去っていく。
 おせんは、実は竜が父親ではないことには気付いていたが、千代がしたことのお詫びのつもりで会っていたのだという。どうして包丁を握れなくなったからと竜を放りだしたんだ、働く人を幸せに出来ない女将なんて…と言いかけるおせんに千代は「暖簾を守るってのはままごとじゃないんだ」とピシャリ。

 シズ(余 貴美子)が、おせんに本当のいきさつを語る。当時の竜は包丁の技ばかりに気を使う料理人だったと。店の危機を感じていた千代はニ番板の清二を板長に任命し、「包丁の技は第二義。客の魂に伝わる味を第一義とする」と宣言。竜がケガをして包丁を握れなくなったのは、その後やけになって飲み屋でケンカしたからなのだと。

 全てを知ったおせんは竜を一升庵に招待し「一升庵で最も愛されている料理です」と、とろろ飯を出す。実はこのとろろ飯は、竜が一升庵にいたとき弟弟子・清二の為に賄いとして作った料理。この味を忘れられなかった清二がとろろ飯を作り、千代が看板料理にすると宣言したのだ。そして、のぼりを出すよう指示したのだと…。そして、このとろろ飯はいまやまごうことなき一升庵の看板料理。おせんは、一升庵全員を揃え「素晴らしいとろろ飯を残してくれた事に感謝します」と頭を下げるのだった。

 竜を店先で送り出しているところに、屋台を引いた千代が現れる。のぼりを屋台にかけ、商売の足しになるなら使ってくれと竜に渡す。のぼりは、竜のためにかけられていたものだったのだ。意地っ張りの竜が、一升庵に戻ってこれるようにと。
 給料5万で一升庵で働くのはカンベンだと笑う竜は「自分の料理を看板にしてくれてありがとう」そういってのぼりをかけた屋台を引きながら一升庵をあとにする…。

 

 

 

『タコ引き』とは刺身包丁の中のひとつで、関東地方で多く使われており、 刃元から刃先が同じ幅で、先が角張っているものです。