ストーリー

第9回(2008年6月17日放送)

 一升庵の門前に停まっているパトカー。なんと、おせん(蒼井優)が、殴打事件を起こしたという。馴染みの乾物屋で、入院した店の大将(久保酎吉)の代わりに店を切り盛りする息子(山中聡)が、作る手間が全く違う「本枯節」と「荒節」の区別は客にはわからないと言い切り、適当な商売をするその姿勢に思わず手が出てしまったのだ!

 その店の鰹節の仕入先で、静岡の焼津にある「ヤマジョウ」が本枯節の製造中止を決めた。おせんは生まれたときから「ヤマジョウの本枯節」で育ってきたのだ。その味が消える・・・。いてもたってもいられなくなったおせんは江崎(内博貴)と共に焼津に向かうことに。

 「ヤマジョウ」の社長(夏八木勲)は、鰹節の天才職人と言われた「藤坂二郎」の背中を追って本枯節作りに打ち込んでいたという思いをおせんに打ち明けながらも、もう妻と工員に無理はさせられないと告げる。
 矢田(加藤雅也)という男の会社・エンプールが鰹節パックの大工場を作るので、その下請けを、と勧められているようだ。「ヤマジョウ」は借金に苦しみ、従業員たちの生活を守るためにもそれ以外、他に選択肢がないというのだ。

 時代の波に消えゆく運命のようにもみえる「本枯節」。
 どうしていいかわからないおせんの側で、留吉(向井理)も鰹節に対しては大きなわだかまりがあるようにみえる。実は、留吉の実家は鹿児島・山川の鰹節工場だという・・・。
 そんなある夜、おせんは常連客から矢田が「カツブシ王子」と呼ばれ、彼の父が有名な「鰹節職人」藤坂二郎だったことを知る。

 自分には何も出来ないと悩んでいるおせんに、江崎は「一升庵を守るためなら何でもするのがおせんさんの仕事。必死で一升庵を守ろうとしているとは思えない」と言ってしまう。
 翌朝おせんは、矢田にヤマジョウの件を考え直して欲しいと告げに行く。「あなたのお母さんが誇りだと言った、その本枯節がこの世からなくなってしまっていいんですか」と。矢田は静かに怒りを見せながら「それは私のせいではない。時代の趨勢。大衆の嗜好。日本という国がおのずからそれを求めたのだ」「私の中で、本枯節は藤坂二郎で終わったのだ」と言い放つのだった。

 一升庵ではヤマジョウの社長夫婦から、最後に自分たちが作ってきた本枯節で作った料理を味わいたいと予約が入った。2人を迎えたおせんは矢田が藤坂二郎の息子であった事を告げ、矢田に余計なことをしてしまった、契約に悪い影響があったら申し訳ない、と詫びる。自分もきっと同じ事をしたからと、ヤマジョウの社長は微笑むのだった。

 そして、鹿児島で有名な鰹節そのままの味を味わえる「茶節」を出すため、留吉が給仕を申し出ていた。
 「鰹節はかきたてをとっとと喰うのがいちばん美味いですから」
 おせんは、丁寧に丁寧に本枯節を鰹箱でかく。大女将(由紀さおり)に5歳の時から教えられたように・・・。
 おせんにかきたての鰹節を出された社長は、涙ながらになんでこんなにうまいものを皆が食ってくれねぇのか・・・とつぶやく。

 給仕を手伝っていた留吉が、自分の父は本枯節を作っていたが、借金が膨らんで削りパック工場に転換したと話し始める。生活は驚くほど楽になって家族を守るために本枯節を捨てる決断をした父を恨んではいない、しかし父親の自慢だった本枯節を作らせてあげられないことが寂しい、二度と「うちの父ちゃんは日本一の鰹節作ってるんだ」と言えないのが悔しいと・・・。その話を聞きヤマジョウの女将(李麗仙)はもう一度なんとかならないかと言葉を詰まらせる。うちの鰹節は、私と、工場のみんなの誇りなのだと・・・。

 おせんは意を決し「この味を舌に刻み、受け継ぎ、繋ぐ―、それが女将の仕事だと先代より教えられました。それこそが私の生きる意味だと友に教えられました。そしてそれは一升庵を繋ぐ事。これだけの香り・味・仕事・心意気、一升庵200年の暖簾に誓い、わっちが継がせていただきます!」と言い切る。
 おせんは契約の際、矢田守を一升庵に招き、矢田の舌の記憶に訴えてみるというのだが・・・。