From イングランド

ラグビーワールドカップ取材記

2015年10月2日

ウォリックのホテルは快適です。朝、シャワーを浴びる際にお湯が出るかどうかは運次第ですが、「それがヨーロッパのスタンダード」だと、「LINE」の無料通話で近況報告をしあった日本の方から言われました。そりゃ、そうです。大手マスメディアの方が「宿代、何とか1泊3万円以内に抑えたいと思っていて…」と取材前の旅行計画を明かすなか、こちとら1泊8000円程度でまともな暮らしを求めているわけですから。自宅のアパートよりはるかに清潔なだけでも、感謝しろというものです。

ただ、以後「本場のラグビーを観よう!」と海外(特にイングランド)への長期滞在を考える皆さま、これだけは言っておきます。

出国前に、宿泊先の洗濯機の有無はチェックすべきです。今大会のジャパンの合宿地であるウォリックには、コインランドリーはありません。一般的なクリーニング屋さんに洗濯を頼むこととなります。シャツ3枚に下着類数点とパンツ1本で、1回、3000円近くします。次回からは洗い場で手洗いを決めました。乾くかなぁ…。

午後。電車に揺られ、ミルトンキーンズ・mkスタジアムへ行きます。ブリットレイルパスという「国外出身者に限り、1か月国鉄乗り放題」チケットが効果を発揮します(こちらも出国から約数週間前の購入がおススメ)。道中、某通信社ラグビー担当記者の方と出会います。話題は、この日、海外通信社が発表した「フランス、8強一番乗り」というニュースについてです。そのニュースが誤報だったからです。ワールドカップ予選プールの勝ち点争い、私のような算数の苦手な記者にとっては難儀なものです。

その勝ち点争い。ジャパンも渦中にありますね。以前の日記にも記しましたが、「残りの2試合を全勝しても決勝トーナメントに行けない可能性あり」「上位争いをするチームが取っているボーナスポイント(4トライ以上獲得、7点差以内の敗北でそれぞれ1ポイントずつ)を、ジャパンが取っていないから」という論旨です。私も、その関連事案に関する原稿依頼を受諾しました(「どうでもいい」とは、書いておりません)。

もっとも当事者はこうです。

「勝たないことには始まらないので。我々はチャレンジャーですから、そういうことを言える立場にない」

いまやすっかり時の人、五郎丸歩副将の弁です。そうです。参加する予選プールBに参加する各チームを客観的に観て、2日時点での勝ち点順に並べると、こうなります。

・スコットランド代表=欧州6強の一角。今大会では事前準備が奏功し、スクラムハーフのグレイグ・レイドロー主将を軸に立体的な攻撃が機能。挑戦者チームから順当に白星得る。

・南アフリカ代表=過去2回王座に就いた、力強き優勝候補。が、初戦で予想外の黒星。センターのジャン・デヴィリアス主将は途中離脱。

・日本代表=24年間ワールドカップ未勝利のアジアの島国。ところが、初戦で優勝候補を倒す大活劇を演じた。

・サモア代表=大会前は絶対王者ニュージーランド代表とも好試合を演じた、環太平洋の雄。欧州や南半球から職業選手を集め、抜群の破壊力としなやかさを兼備。大会前は「予選プールBで南アフリカ代表の次に力がある」と識者評。

・アメリカ代表=お国柄もあって、国際大会で無類の結束力を示してきたフィジカルチーム。国内リーグが急ピッチで整備されるなど、競技の普及度合いも右肩上がり。

8強入りに向けて星勘定云々を考えてきた歴史もなければ、勝敗以外のことを考慮に入れてワールドカップのゲームを勝った経験もありません。そういうチームにとっては、「勝ち点を考えない」ことが勝ち点を得る最大の方策であることは想像がつきます。

到着。前日練習を取材。その後の会見にはエディー・ジョーンズヘッドコーチとプロップ畠山健介選手、さらにはセンターのマレ・サウ選手が登壇します。

「世界で最もパワフルなチームの1つと戦う…。4年前(現職就任時)にこのプロジェクト(W杯への挑戦)をスタートさせた時から、(日本代表の)フィジカル面での不利をどう覆すかを考えてきた。明日は、その成果を見せる絶好の機会です」

指揮官、万人の心を盛り上げる言葉選び、相変わらず。

海外メディアの単独取材(イングランド代表ヘッドコーチ就任に興味あり、と現地新聞コラムで発信)は積極的に受ける「エディーさん」ですが、日本のメディアが日本語で取材できるのは共同会見時のみ。こうなってしまったことについては、コーヒーショップでの注文すらロクにできない英語力の僕がお詫びいたします。すみません。ただ、質問ができる機会には、その責務を果たします。

挙手。マイクを受け取ります。

――9月28日の午前中、選手に喝を入れたようですが。

「…何のことを言っているのか、わかりません」

まずい空気が流れます。

指揮官と通訳の佐藤秀典さん、続けます。

「私はいつも選手と話をしていますが」

改めて申し上げますが、ここは公式会見の場です。他の同業者が横並びで座っているなか、汚い言葉で表せば「タイマン」ですごまれる…。なかなかの圧力を受けます。小学校の教室で担任教諭に怒鳴られることなど、屁でもありません。こういう時は、周りの座席を見回さないこと。そこで嘲笑する人間の顔などを見てしまえば、それこそ心が乱れます。もう、怒っている(かもしれない)登壇者の顔を見るしかないわけです。

こちらも後には引けません。せめて相手が話を切り上げるまで、粘るしかないわけです。

――喝を入れた、と、そういった証言があるのですが…。

「ビデオテープでも、あるのでしょうか?」

はい。ありません。

「選手がそう言われたというなら、選手に聞いてみたらどうですか」

お。これは助け舟か。隣には2人の選手がいます。ちらりとそちらを見やります…。

…。

…。

下を向かれておいででした。

サモア代表戦は3日、同会場でキックオフです。

著者紹介

向風見也
向風見也

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポーツナビ」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。「現場での凝視と取材をもとに、人に嘘を伝えないようにする」を信条とする。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)。

通常の取材リポートは「Yahoo!ニュース個人」の「ラグビーライターのしごと。」
(http://bylines.news.yahoo.co.jp/mukaifumiya/)をご覧ください。

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