From イングランド

ラグビーワールドカップ取材記

2015年10月10日

ウォリックの宿をチェックアウトし、重い真っ赤なトランクをがらがら引きずって、電車とバスを乗り継ぐこと約3時間。「できるだけチープなプライベートシャワー(数時間後に電気がつかないことが判明)がある個室」を、と検索した、「英語、ヒンディー語対応可」の宿へチェックイン。建物の構造上階段を下りて、狭い通路を渡って、また階段を登って、部屋にたどり着きます。トランクを持ちながら、です。

すぐに外出します。目的地はトゥイッケナムスタジアム。最寄り駅を探してうろうろしているところ、ファン専用のシャトルバスを発見します。赤や黄色のジャージィを着た人々に混ざり、座席につきます。

降車場からグラウンドの周りをぐるっ、と歩き、受付の白いテントの下で試合のチケットを受け取ります。執務や記者会見参加や食事のできるメディアセンターへ行けば、やっておりました。サモア代表対スコットランド代表(ニューカッスル・セントジェームズスタジアム)。

 

スコットランド代表が勝てば、同じ予選プールB参加の日本代表の準々決勝進出への道が絶たれます。試合中、グロスターはキングスホルムスタジアムにはそのジャパンがいました。翌日のアメリカ代表戦に向け、練習と記者会見をおこなっていました。あとでわかったことですが、ジャパンの記者会見の直前にメディアセンターのテレビ(サモア代表対スコットランド代表を放送)はスイッチが切られたようです。

僕がトゥイッケナムに着いたころ、当該のゲームはハーフタイムを終えた頃でした。

「26―23」

日本代表を前に沈黙していたサモア代表が、日本代表を黙らせたスコットランド代表をリードしています。人間とは、わからないものです。

Facebookをログインすると、サモア代表を応援する日本人ファンの書き込みで埋まっています。選手たちがいくら「他の試合のことは考えない」と言っても、結局、皆、ベスト8に入ったジャパンが観たいのです。

後半34分、スコットランド代表のスクラムハーフ、グレイグ・レイドローキャプテンが逆転トライを決めます。36―26。重要な試合(スコットランド代表は負ければ予選敗退の可能性も)の重要な局面(接戦の終盤)に、重要な活躍! 本物のエースの隊列に加わりつつあります。

もっとも、終始1対1と肉弾戦で持ち味を発揮していたサモア代表は続く38分に追い上げ。36―33。観戦者であろう日本人ファンの、ツイッターでの呟きが印象的でした。

「別に、日本のために戦ってたわけじゃないだろう。でも、ありがとう!」

日本代表の田中史朗選手が言うように、「ラグビーは、試合に勝っても負けてもプレーに感動がある」のですね。

ほどなくして、トゥイッケナムでのゲームも始まります。赤のウェールズ代表と、黄色のオーストラリア代表が戦います。勝った方が、レイドロー主将らスコットランド代表とぶつかるわけです。

終始、タイトな攻防。お互いどうにかスペースを見つけ、相手防御の手薄な区画を打ち落とそうにも、やはりお互い、守備網に穴ができません。目を引いたのは、オーストラリア代表フランカーであるスコット・ファーディーの「待ってました」と言わんばかりのジャッカル(嗅覚と技術)、ウェールズ代表の両ウイングのボールタッチ数の多さ(整理された戦術と個々の意識のシンクロ?)、もうひとつオーストラリア代表のモールの団結力(一般論として、指導と準備の賜物です)でしょうか。

ターニングポイントは後半25分から27分にかけての頃の攻防です。

敵陣の深い位置まで攻め込んだウェールズ代表を向こうに、オーストラリア代表が我慢に次ぐ我慢。

ゴールラインの向こう側へ突っ込んでくるボール保持者を、ロックのケイン・ダグラス選手が抱え上げます。インゴールの下に自分の身体を滑り込ませ、球を地面につけさせません。

ウェールズ代表は敵陣ゴール前右でスクラムを獲得、命を繋ぎますが、直後の攻防でノット・リリース・ザ・ボール(倒れたまま球を手離さない反則)を犯します。何とか12-6というわずかなリードを守ったオーストラリア代表は、直後の33分、だめを押します。15-6。ノーサイド。

ホテルへ戻れば、大広間でパーティーが開かれていました。インドのものと思しき音楽が流れていました。僕は部屋に戻り、寝ました。

著者紹介

向風見也
向風見也

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポーツナビ」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。「現場での凝視と取材をもとに、人に嘘を伝えないようにする」を信条とする。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)。

通常の取材リポートは「Yahoo!ニュース個人」の「ラグビーライターのしごと。」
(http://bylines.news.yahoo.co.jp/mukaifumiya/)をご覧ください。

ラグビーワールドカップ取材記
2015年11月1、2日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月31日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月30日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月29日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月28日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月27日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月26日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月25日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月24日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月19~23日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月18日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月17日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月13~16日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月12日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月11日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月10日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月9日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月8日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月7日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月6日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月5日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月4日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月3日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月2日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年10月1日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月30日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月29日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月25日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月24日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月23日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月22日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月21日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月20日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月19日

ラグビーワールドカップ取材記
2015年9月18日


ページトップへ