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2000/10/15 放送
世紀を駆け抜けた女・李香蘭そして山口淑子

 

2つの顔を持つ女・・・。
−−−−山口淑子、現在80歳。またの名を−−−−李香蘭。

激動の20世紀を駆け抜けた彼女は、中国の大地に生まれ、日本人でありながら、中国人女優−−「李香蘭」としてスクリーンの上に妖しく輝いた!!

・・だが、そのまばゆい光の陰には、歴史の巨大な闇が潜んでいた!

「満州国」という名の国家の欲望と策謀が!!
国家の実権は、日本の関東軍が支配する「傀儡国家」に他ならず、野望と銃が・・歴史を動かしていた。戦火中国の人々を踏み潰し、日中の2つの国を泥沼の中に引きずり込んだ!!

−−−まさに、そんな中、彗星の如く現れた中国人女優・李香蘭。
スクリーンの花はどれほど、人々の心を酔わせたことだろう・・・

かつて東洋一を誇った満映の撮影所−−その一角、防空壕の在った地中深くに、李香蘭の”仕掛け人”とも言うべき男の亡骸は眠っている。男の名は−−−甘粕正彦。
満映(満州映画協会)の理事長であり、その実、関東軍の謀略工作の立役者だった男である!!
甘粕が見た幻・・・李香蘭とは彼にとって何だったのか・・・。

そして歴史の女神は、いたずらの如く「2人のヨシコ」を巡り合わせた。もう一人のヨシコとは、愛新党羅顕(けんし)こと、川島芳子−−−−「男装の麗人」と言われた女性スパイだ。
日本人を装う中国人、川島芳子と、中国人を装う日本人、李香蘭こと山口淑子。 国境の狭間で2人は出会い・・・そして互いの皮肉な宿命に目を伏せた・・・。
2人にとって「祖国」とは一体−−−!
そして2つの青春の命運を分けたものは・・・!!
李香蘭という美しい虚像は、人々に一瞬の見果てぬ夢を見せ−−−
やがて哀しい「歴史」となった!!
そして、幻想は彼女を日本と中国、2つの祖国の国境の狭間に引き裂いたのである!!

山口淑子は、大正9年(1920)旧満州に生まれ、この地で育った。 父・文雄は、堪能な中国語を見込まれ、満鉄(南満州鉄道)が経営する炭坑の社員に、中国語を教えていた。みんなに混ざって一緒に中国語を学び、気がつけば、誰よりも自然に中国語を身に付けていた・・。 ”母国語”として・・・。
そして外国人が多く住む、この国際都市で女子校に上がったヨシコに仲の良い友達ができた。
−−−同い年の白系ロシア人の娘リューバ。そしてリューバに紹介されたのが・・・、亡命オペラ歌手、マダム・ポドレソフだった。
彼女について声楽を学んだ淑子は歌の才能を見事に引き出され、やがて前座としてステージに上がり、ラジオで紹介されるまでに。

昭和12年、日本と中国は虜構橋事件を機に本格的な戦争へと発展!!抗日の機運が高まり騒然となっていた。
祖国日本が中国人の怒りと憎しみの敵となってしまうとは・・・!
中国人になりすました淑子がその後ろめたさを感じながら、2つの祖国の板挟みになって苦悩し始めたのはこの時からだった。

学友たちから「抗日集会」に誘われ、「日本軍が北京に攻めてきたら君はどう戦うか」−−−−そう問われた時、彼女は・・・。

「『私は・・・北京の城壁の上に立ちます。』
そうとっさに答えていた。城壁に立てば、日本軍か中国軍か、どちらかの銃弾で真っ先に死ぬかも知れない。でもそれが私に、 一番ふさわしい・・・と』−−−!!

昭和13年、北京の学校を卒業した淑子のもとに満映(満州映画協会)から、映画に使う歌を歌って欲しい、との依頼が来た。
満州の首都・新京(長春)に出来たばかりの撮影所は、「日満親善」の文化政策を担っていた。

だが・・・、淑子が行ってみると、待っていたのは、女優としてのカメラテストだった!
満州人に分かり易い音楽映画を作りたいが、ピッタリする役者がいないという。そこで声楽を学び、日中両方の言葉に堪能な淑子に目を付けたのだ。

−−−かくして18歳の女優・李香蘭が誕生。
「日満親善」の美名の背後に隠された日本の野望を、淑子はまだ知らない・・・。

歌う女優”李香蘭”は瞬く間に日満の銀幕のスターへと駆け上がっていった。
とりわけ長谷川一夫と共演した大陸三部作のラブ・ストーリーで、李香蘭は生まれて初めての祖国・日本へ・・・。
昭和16年、日劇で開かれた「歌う李香蘭」は、詰めかけた観衆が日劇を「七回り半」囲み、入場できない熱狂的な群衆が暴徒と化す社会的事件となった−−−!!

そしていつしか李香蘭は、満州の中国人として一人歩きしていた。
しかも日本人に協力的な中国人娘ばかりを次々と演じなければならない。実生活までも・・・。「日満親善のシンボル」として美しいヒロインの姿は、中国侵略の現実を知らない庶民を、甘い幻想へと誘っていた。

・・日本人でありながら李香蘭を演じることに疑問を抱きながらも淑子は、もはや後戻り出来なかった・・・。
しかし、淑子の苦悩をよそに昭和18年、李香蘭は、上海で製作された歴史大作「萬世流芳」で中国トップスターらと共演、彼女の歌った主題歌も中国全土でヒット。トップ女優、李香蘭の名はアジア全域に知れ渡ることに・・・。

思いあまった淑子は、記者会見で自分が日本人であることを告白しようと申し出るものの、結局は許されず、逆に、中国人の記者からこう追求される始末。
「あなたは中国人でしょう。なのに一連の中国人を侮辱する映画に 出演したのはなぜか。誇りを忘れたのか・・・」!!

ここに至って耐え難くなった淑子は、満映を辞めることを決心。
甘粕理事長は、意外なほどこうあっさりと淑子の意思を受け入れた

時あたかも昭和19年、敗色濃くなる中、甘粕は帝国崩壊の予兆を感じていたのかも知れない・・・。そして迎えた昭和20年8月!
8月15日、淑子は上海で敗戦の玉音放送を聞いた。
ようやく、2つの祖国が血を流し会う戦争は終わった。
だが・・・彼女を待っていたのは強制収容所と軍事法廷だった!!
「李香蘭は中国人でありながら日本軍に協力した”漢奸”つまり祖国を裏切った売国奴」だという!
日本人だといっても信じてはもらえず、裁かれれば、銃殺は間違いない・・・!!
そんな淑子のもとに現れた一人の面会者・・・!?
果たして、その面会者とは?

−−−敗戦の時、中国の「売国奴」として銃殺になる寸前の「奇跡の脱出劇」とは!!
−−−そして、李香蘭から日本人女優・山口淑子への華麗なる変身!!
−−−さらには、ハリウッド女優。シャーリー山口へ!!
私生活でも、時にアメリカの世界的彫刻家イサム・ノグチの妻として−−−!!
さらには、外交官の妻として−−−!!
幾度、名前と顔が変わったことだろう・・。

戦後、人々の前から姿を消した彼女が次に現れたのは−−−− テレビのブラウン管だった。 キャスターとして、ジャーナリストとして復活、各国を取材した 彼女はさらには国会議員に −−−!!

・・・だが、彼女の目の前にはいつも「国境」、戦火があった。 そして、歴史が動いていた・・・。

山口淑子は言う・・・。
「李香蘭は死んだ人間です・・でも・・私でもあります。」

山口淑子を駆り立てたものは何だったのか?
そして、道のりの先に待ち受けていたものとは・・・・?

「李香蘭」という数奇な宿命を背負って生きた・・・山口淑子。
そのアルバムは、心の家路を辿った歴史の迷い子の「流転の軌跡」でもあった−−!!

 
 
 

 
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