
© 2008 Warner Bros. Pictures (India) Pvt. Ltd. and RSE People Tree Films
今年のアカデミー賞8部門受賞し、日本でもヒットしている「スラムドッグ$ミリオネア」。これで、11年前の「ムトゥ 踊るマハラジャ」以来2度目の“ボリウッド”ブームが来るのか、と思ったら、公開が決まっているインド映画はこの作品だけ。ちょっと拍子抜けの感じですが、この「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」は「スラムドッグ$ミリオネア」よりインド映画らしいインド映画です。親子愛、姉妹愛、師弟愛、カンフー、ワイヤー・アクション、京劇、ダンス、生き別れ、記憶喪失、秘密兵器…。 まさに何でもありの2時間35分です。
インド・デリーの下町チャンドニー・チョークで毎日毎日、路上で野菜を刻んでいるシドゥ。味気ない生活に飽き飽きしていたある日、中国から来た2人組の旅人に会う。自分たちの住む村が北条という男に牛耳られているその中国人は、シドゥこそ中国の伝説の戦士・劉勝の生まれ変わりであると中国に招待する。シドゥは中国語が喋られるインチキ占い師チョップスティックとともに村に入ると、大歓迎を受けすっかり劉勝になりきり英雄気取り。しかし、武道を全くやったことのないシドゥは北条一味の攻撃を受け、化けの皮がはがれてしまう。絶体絶命の中、カンフー・マスターのチャン刑事に会い、カンフーの特訓を受け、宿敵・北条に最後の戦いに挑む…。
インドでは「スラムドッグ$ミリオネア」の3倍の初登場興行成績を記録した映画です。幼児売買や貧困などムンバイの「負」の部分にクローズアップした「スラムドッグ$ミリオネア」と違って、実にカラッとしています。
2008年に日本で公開された邦画は388本ですが、インドの年間製作本数は900近くあり、世界一の映画国です。その映画国インドでは初になるカンフー映画だというから意外です。しかもそのカンフー・アクションが初めてにしては見応えがあります。ジェット・リーのアクション映画を支えたアクション監督ディーディー・クーが本作でも担当しています。
少々詰め込みすぎの感がある映画ですが、見たことのあるシーンも満載です。チャン刑事がシドゥにカンフーを教えているところは「ベスト・キッド」、ワイヤー・アクションは「グリーン・デスティニー」を彷彿します。悪人の北条は「007 ゴールドフィンガー」のハロルド坂田演ずるオッド・ジョブみたいにツバに刃が付いた山高帽が武器。また「007」シリーズの様な秘密道具も多数出てきます。その中のひとつ、パラシュートにもなる雨傘を使って、高層ビルから今作のヒロイン・サキと飛び降りるシーンはまるで「スーパーマン」で見せたロイス・レーンとの空中ランデヴーです。
大体、上映時間3時間ぐらいのが多いインド映画。本国では途中インターミッションが入り、観客はその休憩時間にチャイを飲むんだそうです。この「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」もインターミッションのスーパーが出ますが、日本での上映はぶっ通し上映。でも、その前半と後半では全く作風が違っています。インターミッション前までは、いかにシドゥがダメ人間かを、騒がしくコミカルに描いています。ホントに騒がしい。静かな映画を作ったら罪になるかのようです。ところが後半は打って変わって、シドゥの人間的成長をシリアスで丁寧になぞっています。2本分の映画を見た感じ。
主人公のシドゥを演じたのはアクシャイ・クマール。インドではヒット作連発の大スターだそうで、一見アダム・サンドラーのオリエンタル版に見えます。でもこの映画で一番注目は女優。シドゥの恋人役サキを演じたディーピカー・パードゥコーン。ビックリするぐらい美人でスタイルも完璧です。映画では双子の妹ミャオミャオも演じ一人二役でしたが、情熱的なサキとクールなミャオミャオを演じ分け、メイクのせいもあるのでしょうが、最初別人が演じているのかと思いました。私はミャオミャオのメイクの方が好きでしたね。
☆「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」2009年5月30日(土)よりシネマスクエアとうきゅう、シネマイクスピアリにてロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2008 Warner Bros. Pictures (India) Pvt. Ltd. and RSE People Tree Films

© 2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.
1966年の放送開始以来、TVシリーズ5本計701話、アニメシリーズ1本計22話、劇場用映画は10作製作された「スタートレック」。そして今年43年目を迎える「スタートレック」に11本目の映画が誕生しました。監督はTVドラマ「LOST」や映画「M:i:Ⅲ」で売れっ子映像作家になったJ.J.エイブラムス。舞台になるのはシリーズの原点、TVシリーズ以前の話。主人公カークが、いかにしてUSSエンタープライズのキャプテンになったかを描いています。
将来、USSエンタープライズNCC-1701の艦長になる男ジェームズ・タイベリアス・カークが生まれたのは、父ジョージが代理艦長を務める宇宙船USSケルヴィンの脱出用シャトルの中だった。ジョージは突如現れたロミュラン星の大型船ナラダの猛攻を受け、自らの命を犠牲にして、出産間際の妻を初め乗組員800人の命を救った。
それから22年後、カークは自分の進むべき道が見つからず、やんちゃな日々を送っていたが、ある日USSエンタープライズの初代キャプテン、パイクと出会う。パイクはカークの潜在的素質を見抜き、惑星連邦艦隊入隊を勧める。殉職した父を越えたいカークは入隊するが、適正力を持ちながらも、トラブルメーカーでもあった。難攻不落といわれるシミュレーション「コバヤシマル・テスト」を唯一クリアに成功するが、実はカークがプログラムを不正に書き換えた事がわかり、謹慎処分を受ける。その時、緊急事態が発生、エンタープライズに出動令が下される。謹慎中のカークは友人ボーンズの機転で艦内に潜り込む。
バルカン星のスポックはバルカン史上、初の地球人との混血児であった。高い知能を持ち、バルカン人特有の感情を表に出さない少年であったが、“ハーフ”であることから異端扱いされ、それがコンプレックスでもあった。成人したスポックは連邦艦隊に入隊、エリートコースを歩み、「コバヤシマル・テスト」を製作したのもスポックだった。そして今ではエンタープライズのサブ・リーダーに昇進していた。
直感的なカークと冷静沈着なスポック。水と油の2人。お互い敵意丸出しでエンタープライズに乗り込み、未曾有の危機に立ち向かう。
日本では「スター・ウォーズ」の方が人気はありますが、アメリカでの「スタートレック」人気は、冒頭のデータのように凄い物があります。「トレッキー」と呼ばれる熱心なファンも生まれ、「スタートレック」へのオマージュ的パロディ映画「ギャラクシー・クエスト」(2000)という大傑作も誕生しています。
でも映画化は「スター・ウォーズ」が先。「スタートレック」も75年に映画化に踏み切りましたが頓挫。77年の「スター・ウォーズ」の成功を見て、映画化を再検討、79年に劇場版映画が公開になりました。それから30年経って完成した「スター・トレック」、見事な出来映えです。
大勢のファンはJ.J.エイブラムスが作るのだから、全く新しい時代の「スター・トレック」を生み出すと予想していたでしょうが、エイブラムスが作ったのはカークとスポックの青年時代。「スタートレック」サーガの原点です。異なる環境で育った2人の青年。性格も正反対でお互い相容れない存在の2人が、それぞれ相手を認め合い、力を合わさなくては勝てない敵に直面した時にどう行動するか。エイブラムスはカークとスポックの心理状況を綿密に描いています。
私自身、映画は多分10本とも観た記憶はありますが、TVシリーズは観たことがなく、熱心なファンとは言えません。試写の時、隣にいた男性はどうやら「トレッキー」らしく、私が気付かないところで笑ったりしていました。この映画の話が、TVシリーズに繋がっていくと考えれば、もちろん「トレッキー」の方の方が楽しめると思います。でも、この映画で初めて「スタートレック」に接する方でもスクリーンに引き込まれます。スペースオペラといえば、視覚効果。あの『ILM』が担当しています。ひとつの星がブラックホールに吞み込まれるシーンや、ロミュランの異形の宇宙船「ナラダ」の造形など、見たことのないシーンがふんだんに盛り込まれています。カークが律を犯した罰で、エンタープライズから氷の惑星デルタ・ヴェガに転送された時に襲ってくる怪物は、エイブラムスが製作した「クローバーフィールド/HAKAISHA」に出てくる巨大モンスターに似ています。
出演者はカーク役にクリス・パイン、スポット役にザッカリー・クイントとまだまだこれからの俳優を起用しています。でもザッカリー・クイントはうまい。感情を表さないバルカン人なので喜怒哀楽を顔の表情で出せません。それを目だけで表現しています。他に敵に当たるロミュラン人のボス、キャプテン・ネロを「ミュンヘン」のエリック・バナ、スポックの母アマンダを2001年に万引きで逮捕されたウィノナ・ライダー、未来のスポックにあのレナード・ニモイがそれぞれ演じ、脇を固めています。
余談ですが、この「スター・トレック」に「スター・ウォーズ」のR2-D2がこっそり出演しているらしいのです。配給元の米パラマウント・ピクチャーズでは、「R2-D2を探せ!コンテスト」なるものを実施。劇中にでてくるR2-D2を探して、5月25日までに送ると、映画で使われた小道具が当たる、という物〈http://www.facebook.com/note.php?note_id=80929709882&ref=mf〉。もうすでに締め切ってますし、日本公開は5月29日からだから間に合いませんが、何度も観て探してみるのもいいかもしれません。
☆「スター・トレック」2009年5月29日(金)より丸の内ルーブル他全国ロードショー
配給:パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン
© 2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.

© 2009 East Wing Holdings Corp. and SAJ. All Rights Reserved.
「猟奇的な彼女」や「僕の彼女を紹介します」でパワフルでコミカルなヒロインを演じ、日本でも人気の韓国女優チョン・ジヒョン。今回の「ラスト・ブラッド」ではパワフルはパワフルですが、別の意味でパワフル、初の本格的アクションに挑み、世界進出を狙った映画です。
1970年の日本、アメリカ空軍関東基地のハイスクールに1人の日本人が編入してくる。名前はサヤ(チョン・ジヒョン)。黒く長い髪を三つ編みにし、空軍基地なのにセーラー服に身を包んだ女性。どこから見ても女子高校生だが、サヤはある組織が送り込んだ“オニ・ハンター”。“オニ”とは、400年前の戦乱の時代に大量に流された血をによって力を得た種族で、いま人類に最後の戦いに挑んできたのだ。サヤは“オニ”のボス・オニゲン(小雪)に殺された父の形見である日本刀を武器に、人間を襲う“オニ”を始末し、さらに父の敵であるオニゲンを倒す目的で“オニ”が多く出没するハイスクールに来たのだ。転校早々、同じクラスのアリスが女子生徒に化けた“オニ”2匹に襲われる所に遭遇。サヤは一瞬にして“オニ”を斬り捨てる。こうして、“オニ”対サヤの長い戦いが始まった。
原作は2000年のフルデジタル・アニメ映画「BLOOD THE LAST VAMPIRE」。各方面で高い評価を得、国内外の賞を受賞し、ジェームズ・キャメロンやタランティーノなどの映像クリエーターからも絶賛を浴びた作品です。その後、小説、漫画、テレビゲームとメディアミックスに発展し、今回実写化されました。
サヤは人間と“オニ”のハーフと言う設定。だから人間離れしたスピードとパワーを持って、“オニ”を退治をします。肩に背負った黒く長い筒の底を踵で蹴り上げて、中に入っている大振りの日本刀を飛び出させるアクションは真似したくなる感じです。圧巻は飲食店街で繰り広げられる大バトル“オニ”百人斬り。次々に現れる“オニ”(“オニ”と言っても見た目は西洋人が考えるヴァンパイアの容姿)を日本刀や出店のテーブル、肉屋の出刃包丁などでバッタバッタと倒していきます。それを支えるワイヤー・アクション。前回紹介した「チョコレート・ファイター」は一切ワイヤーを使わないアクションでしたが、こちらは使い放題。アクション監督を務めたのが「リーサル・ウェポン4」や「トランスポーター」シリーズのコーリー・ユン。最近は「レッドクリフ Part II -未来への最終決戦-」でもその手腕を発揮しています。相当激しいシーンをこなしているので、エンディングでNGシーンとか入れて欲しかったです。
人間と“オニ”のハーフと言っても、サヤの主食はやっぱり人の生き血。小さい頃、好きになった男の子の首筋に無意識に噛みついて殺してしまった、というトラウマを抱えています。いつ“オニ”の本性が芽生えてくるのか、怯えながら生活しているのです。だからお腹が減ったからと言って人間の喉に噛みつく訳にもいきません。そこは組織が用意した血液で補います。常時2、3本冷蔵庫に血液の入ったペットボトルが入っています。誰の血だろうと最後まで気になりました。
この映画は日本が舞台ですので、日本人俳優も出ています。まず、サヤの宿敵オニゲン役の小雪。世界デビューはチョン・ジヒョンより先輩で、2003年に「ラストサムライ」で経験済み。今回も堂々とした演技で存在感は抜群。チョン・ジヒョンと互角以上に張り合っています。
そしてもう1人、倉田保昭。サヤの育ての親・カトウと言う役で、サヤに剣術を教え込むと言う役回り。倉田保昭は1972年にはアジアに進出した海外デビューの大先輩です(「新宿インシデント」にも出演していました)。今年63歳とは思えない身体の動きで、ある意味、チョン・ジヒョンのアクションよりも見応えある演技をしています。
この作品からチョン・ジヒョンは『Gianna Jun』と名前を変えています。海外進出のため「チョン・ジヒョン」では欧米人に発音しにくい、と言う理由だそうです。残念だったのがチョン・ジヒョンの日本語のセリフ。全部吹き替えになっています。口の動きはセリフとあっているのですが、相当ヘタだったのでしょうか。ヘタでも聞きたかったです。
☆「ラスト・ブラッド」2009年5月29日(金)よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー〈R15+〉
配給:アスミック・エース
© 2009 East Wing Holdings Corp. and SAJ. All Rights Reserved.

© 2008 sahamongkolfilm international all rights reserved. designed by pun international
トニー・ジャー主演の「マッハ!!!!!!!!」(03)や「トム・ヤン・クン!」(05)で今まで観た事もないムエタイ・アクション映画を撮ったプラッチャヤー・ピンゲーオ監督が、さらに驚くべき映画を撮りました。トニー・ジャーの身体的能力には当時びっくりさせられましたが、今作はそれを軽く凌駕する俳優が出現。それがまだ15、6歳にしか見えない少女ジージャー(実際、撮影当時は24歳)です。ピンゲーオ監督がプロデュースした「七人のマッハ!!!!!!!」のオーディションに来た彼女を見てその才能に惚れ込み、4年間のトレーニングの末「チョコレート・ファイター」のヒロインとしてデビューさせました。
タイに進出を目論む日本人ヤクザのマサシ(阿部寛)は、敵対するタイ・マフィアのボスの愛人ジンと恋愛関係になる。しかしその関係がばれてしまい、マサシは単身日本に帰国。だがこの時、ジンはマサシの子供を身籠もっていた。数か月後、女の子が生まれ、ゼンと名付けられるが、育っていく内に脳に障害がある事が分かり、自閉症を患う。やがて美しく成長していったゼン(ジージャー)は自分の身体能力に気付く。TVで放送されたアクション映画を観るだけでその技をマスターすることが出来たのだ。
ある日ゼンに突然の不幸がやってくる。母ジンが白血病に冒されていたのだ。多額の治療費を払えないゼンはある日、昔ジンがお金を貸した人のリストを見つける。幼なじみのムンと取り立てに行くが、素直に返してくれる人などおらず追い返される。しかし愛する母のためにはお金が必要。ゼンはいつしか身についた武術で立ち向かう。ボロボロになりながらも襲いかかる者を倒し、お金を取り戻しす事に成功。ところがその行動がマフィアのボスの耳に入り、ジンとムンが人質に取られてしまう。ゼンはひとりで敵地に乗り込む。
ピンゲーオ監督のアクションの特徴はCGはおろかワイヤー・アクションを使わない事、そしてスタントマンも起用せず、ジージャーが身体を張って演じています。それはエンドロールで分かります。ジャッキー・チェンの映画なら「NGシーン」をここで観られるのですが、この映画はそこでメイキングを観せちゃっています。それを観るとジージャーの顔面に蹴りが入っていたり、割れたガラスが手に刺さっていたり、思わず目を背けたくなる映像ばかりです。それにしても、このジージャーって子、凄い。おとな数十人と乱闘となるのですが、ほとんどが蹴りで相手を倒します。その蹴りの種類も豊富で、さすがムエタイの国と感心します。格闘ゲームのコンボを実写で観ているようです。今年2月公開「ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー」のチュンリー役クリスティン・クルックよりも、今月30日公開の「ハイキック☆ガール!」主演・武田梨奈よりも多分強いです。
クライマックスの列車の高架と雑居ビルの看板や軒を使った大バトルは必見。ここを観るだけでもこの映画の価値を味わえます。これまでのアクション映画はスクリーンの右左に激しく動く、上下にはせいぜいジャンプの時だけですが、この映画は高架から屋根に飛び移り、その下の看板に飛び降り、またの軒に跳ね上がり、そこでボコボコにされ地面に落ちる、と上下左右にこれでもかと動き回ります。これもエンドロールのメイキングで分かったのですが、4、5メートルはある高さから落ちるシーンは、実際マットも引いていない地面に叩きつけられています。監督の「カット」の声がかかると、助監督や看護師が駆け寄り手当を施す。…もうそれはそれは壮絶な現場です。
この映画でピンゲーオ監督ははじめて「親子愛」というのを描いていますが、やはりこの監督の真骨頂はキレのいいアクション演出。監督もそのことがよく分かっているらしく、人間関係の説明や親子愛のベースを頭30分で全部消化、この30分はやたら展開が早い。残り1時間はひたすらジージャーに暴れさせています。
そして阿部寛。登場シーンは頭と最後しかないのですが、お尻丸出しのラブシーンや、斬られても何故か死なない殺陣のシーンはヘタすればギャグの世界に陥るのを、彼の存在感の救っています。
最後に、タイ人が撮ったがために起きたであろう日本のシーンに明らかな間違いを発見しました。映画の最初の方に、阿部寛が小学生の頃を思い出す場面があります。教室の学級文庫が画面右に映し出された時、「恐竜が絶滅したナントカ」という図鑑の文字が“裏返し”になっているのです。おそらくプリントの時に裏焼きしてしまったからでしょう。日本語が分からないタイ人なら無理もないことかもしれません。
☆「チョコレート・ファイター」2009年5月23日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東北新社
© 2008 sahamongkolfilm international all rights reserved. designed by pun international

© 2008 Prescott Productions, LLC All Rights Reserved
アカデミー賞に3度輝く名匠オリバー・ストーン監督。社会性の高い話題作を手掛ける映画監督ですが、1991年の「JFK」、1995年の「ニクソン」に続き、題材に選んだ3人目のアメリカ大統領は『支持率ワースト1のアメリカ大統領』ジョージ・W・ブッシュです。
映画はイラク、イラン、北朝鮮のテロ支援国家を総じてなんと呼ぶかをオーバルオフィスで議論(『悪の枢軸』に決定)する2002年1月から、05年の第2期目における一般教書演説までまでを軸に、青年時代から「神のお告げ」により大統領を目指すまでを挟み込んだ構成になっています。「JFK」はジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件を、新たな調査資料をもとに検証したドラマでしたし、「ニクソン」はウォーターゲート事件やロバート・ケネディ射殺の黒幕がニクソンだったという説に踏み込んだ物だったのに対し、「ブッシュ」では知られざる素顔を暴き出すようなことはせず、ダメ男ブッシュがなぜ大統領になったのかを数々のエピソードで語っています。
名門ブッシュ家に生まれ、祖父は上院議員、そして父は41代目大統領ジョージ・H・W・ブッシュ。成績が悪くても身内がOBなら入学できる「レガシー・チップ」制度でイェール大学に進学。そこでフラタニティ(男子大学生の友愛会)の1つである「デルタ・カッパ・エプシロン」に所属します。そこは新入部員の歓迎が手荒いのが有名。無理難題を新入部員に投げかけ、答えられなかったら酒を一気飲みさせられるのですが、ブッシュは先輩部員40人の名前を全部暗記していて、一目を置かれます。人心掌握に長けているエピソードのひとつです。ただ根気がなく、バイトで始めた石油発掘のバイトも「暑い」が理由で辞めてしまうし、酔って暴れて拘置所に入れられたり、バーで知り合った女性をくどき妊娠させてしまう。そういう悪態の尻ぬぐいは全部、当時下院議員だったパパ・ブッシュでした。その頃からファザコンに陥っていきます。パパ・ブッシュも出来のいい弟ジェブの方をかわいがります。何とか父を見返そうとするブッシュ。
そんなある日突然「父の後を継げ」と神のお告げを聞き改心。図書館司書のローラと結婚しますが、テキサス州の下院議員選では共和党候補として出馬するも落選。ところが40歳の誕生日にパパ・ブッシュから、大統領選を手伝った欲しいと連絡が入り受託。デュカキス候補の致命的なVTRを流すというブッシュのアイディアで、見事パパ・ブッシュは第41代大統領に就任します。しかし、いくら名参謀でも注目されるのはパパ・ブッシュだけ。「ロビイストは嫌だ。親父なんて負ければ良かったんだ」。
その4年後、再選を狙うパパ・ブッシュはビル・クリントンに敗北。敗因は湾岸戦争でフセインにとどめを刺せなかったから、と推測し、再び政治家を目指すブッシュ。まずテキサス州知事に立候補します。しかしパパ・ブッシュは反対。なぜなら同時期に弟ジェブがフロリダ州知事に出馬するから。結果はジェブが落ち、ブッシュは見事当選。パパ・ブッシュは落選したジェブに気を遣うばかり。
テキサス州知事2期目の時再び“神の啓示”を聞きます。「大統領になれ」。ブッシュは自分がフセインを捕まえれば、父の出来なかったことを達成できる、父を超えられる!と思い、立候補。そして2001年、カール・ローブらスタッフにも恵まれ、見事第43代大統領に。
映画では、ブッシュは父を超えるため、イラク戦争を起こし、父が在職中になし得なかったフセイン確保を実現したように描いています。「大量破壊兵器」を保有するテロ国家を制裁するという大義名分で。しかし、ブッシュが再選を果たした翌年、自ら、大量破壊兵器疑惑に関する情報の多くが結果として誤っていたことを認め、大統領として戦争に踏み切った責任を負うと表明しています。
映画の中でパパ・ブッシュが「自分にあった器の仕事をしろ」と言うシーンが数回出てきます。野球好きなブッシュが地元球団テキサス・レンジャーズのオーナーになった時「コミッショナーをやりたい」とパパ・ブッシュに話した時もこう言われました。そしてアメリカ大統領になったブッシュも「器ではなかった」のでしょう。なのに大統領になってしまった…。ひとりの男としての苦悩がひしひしと伝わります。
ラストで、歓声は耳に入ってくるのに観客のいないベースボール・スタジアムのセンターフィールドで、飛んできたフライをキャッチしようとするシーンがあります。でも構えたグローブにボールがなかなか落ちてこない。これは当時のブッシュを物語っています。「自分の夢が叶って、仕事も一生懸命やった。国民も声援してくれると思っていたが、理解してくれる人は誰もいない。ボールをキャッチしないとゲームセットにもならない」…。
主演のジョシュ・ブローリン(ブッシュ役)をはじめ登場人物は驚くほど本人に似ています。チェイニー副大統領役のリチャード・ドレイファスのそっくりな仕草は笑えますし、ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官役のタンディ・ニュートン、パウエル国務長官役のジェフリー・ライトもそっくりです。
ブッシュ大統領の逸話としては、2001年にTVでフットボール観戦中、食べていたプレッツェルを喉に詰まらし死にかけた、というのがありましたが、映画でもきっちり描かれています。
☆「ブッシュ」2009年5月16日(土)より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
配給:角川映画
© 2008 Prescott Productions, LLC All Rights Reserved

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2006年に公開され全世界で7億5800万ドルの興行収入を上げた「ダ・ヴィンチ・コード」。その続編にあたる「天使と悪魔」です。ただダン・ブラウンの原作では「天使と悪魔」の方が先。でも、監督はロン・ハワード、主演のロバート・ラングドン役はトム・ハンクスと前作と同じで、続編ぽい作りになっています。今回のテーマは【宗教 対 科学】です。
ローマ教皇が亡くなり、その次期教皇を決める選挙「コンクラーベ」が行われることになる。しかし次期を同じくして、400年前にローマ・カトリック教会によって消滅したとされる秘密結社「イルミナティ」が復活した。目的は17世紀、ローマ・カトリック教会の総本山ヴァチカンが行った科学者弾圧の復讐。「イルミナティ」は次期教皇候補の4人の枢機卿を誘拐し、「イルミナティ」が神の代わりに崇拝する“土=EARTH”、“空気=AIR”、“火=FIRE”、“水=WATER”の4大元素をその胸に焼き印し、その元素にちなんだ方法で殺害する。そして、スイス・ジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN)から、わずか1グラムで原子爆弾と同じ破壊力を持つと言われる「反物質」を盗み、ヴァチカンを爆破すると予告する。
ヴァチカンの要請で捜査に加わったロバート・ラングドンの推理で、1時間おきに実行される枢機卿の暗殺を、ヴァチカンの爆破を阻止できるのか…。
3年前に文庫版が出た時に原作は読みました(読み終わってすぐBOOK・OFFに売っちゃって、あらすじも忘れていましたが…)。上中下巻計1000ページもの長編を138分に詰め込んでスリリングな展開にしたのは、さすが名匠ロン・ハワードの手腕です。ただ、消化不良の部分もあります。前ローマ教皇侍従(カメルレンゴ)のカルロ・ ヴェントレスカ(ユアン・マクレガー)が突然ヘリコプターを操縦するところなど突飛すぎて笑えます(たしか原作ではその辺の説明もあったような気がします)。
やはりどうしても前作「ダ・ヴィンチ・コード」と比べてしまいますが、今作の方がアクション映画としては数段上です。4つの予告殺人が実行されるのをラングドンは阻止しなければならない。それも1時間おきに実行される。タイムリミットに追われる緊張感は前作になかった物です。その反面、謎解きの部分は多少おろそかです。前作は、「ウィトルウィウス的人体図」や「モナ・リザ」、「最後の晩餐」という有名な絵画の隠された秘密を暴くという、視覚的な楽しさがありましたが、今作はそれが希薄で、ラングドンの直感でズバズバ謎を解いていくという少々強引な展開です。そして残念だったのが、「イルミナティ」が殺害の前に押す焼き印“EARTH”、“AIR”、“FIRE”、“WATER”のアンビグラムがちょっとしか見えなかったこと。アンビグラムとは上下反対にしても同じように読める文字のことで、原作本では図解までして見せていたのに、映画では確認すら出来ませんでした。権利的な問題があるのでしょうか。余談ですが、「イルミナティ(Illuminati)」はラテン語。でも「EARTH」「AIR」「FIRE」「WATER」は英語。なぜ?
前作の「ダ・ヴィンチ・コード」は、キリストの秘密を暴き、ヴァチカンから敵視される存在になったラングドンが、今作では逆に助けを乞われる。順番を原作と逆にしたことで起きた矛盾です。
17世紀は宗教が科学者を弾圧する時代でした。全ての天体が地球を中心に回っているとした「天動説」が信じられている時代に「地動説」を唱えたガリレオ・ガリレイ。1633年、ガリレオはヴァチカンの聖職者たちから告発されます。有名な「ガリレオ裁判」です。その結果、軟禁の刑。死ぬまで監視つきの部屋に住まわされ、外出は禁じられました。
「天使と悪魔」では、この科学者不遇の時代にガリレオをはじめ多くの科学者が秘密結社「イルミナティ」に集結、密かに活動していたとあります。でも調べると「イルミナティ」の発祥は1776年。ガリレオの生きている時代にはまだなかったことになります。ここに出てくる「イルミナティ」は作者ダン・ブラウンの創造の物なのでしょうか。
しかし、17世紀は科学よりも宗教が強かったのは事実。弱い立場で同じ志を持つ者が団結することはあったでしょう。
でも今は違います。クローン技術の進歩によりヒトがヒトを作ることも可能な時代になってきました。宗教的には神でしか作れないはずの人間が、科学の力で作れるのです。宗教と科学の関係も変わっていきます。1992年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は、ガリレオ裁判が誤りであったことを認め、ガリレオに謝罪しました。死後350年たって、ようやく詫びたのです。それまでヴァチカンが地動説を認めなかったというのも驚きです。
映画のラストで枢機卿のひとりがこんな事を言います。「宗教には欠点もある。だが、それは人に欠点があるからだ。誰しも、私にも」。
今年9月に「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの第3弾が発売されます。タイトルは「ザ・ロスト・シンボル」。早くもソニー・ピクチャーズが映画化に向けて動いていると言うことです。
☆「天使と悪魔」2009年5月15日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

© 2009 NEW LINE PRODUCTIONS
誰しも一度くらいは「あの頃の自分に戻れたらなあ」と思う事があるでしょう。それは、青春時代を思い起こしている時や、あのとき別の道を歩んでいたら今よりはきっといいはずと思い悩んでいる時など…。
この映画「セブンティーン・アゲイン」はタイトル通り、中年に差し掛かった男が17歳に戻るお話。しかし今までの映画と違うのは、タイムスリップして昔の時代に戻るのではなく、時代はそのままで自分ひとりが若返ってしまう話です。
1989年、17歳のマイク(ザック・エフロン)はハイスクールの有望バスケット選手。今日の試合で活躍をすれば、有名大学からの推薦入学が受けられると張り切ってコートに出る。しかし、応援に来ていた恋人スカーレットの浮かない顔を見て心配になり駆け寄る。問い詰めると「妊娠した」と答えるスカーレット。マイクは大喜び。結婚を決意し試合を投げ出した。
2009年、37歳のマイク(マシュー・ペリー)はあの大恋愛の末結婚したスカーレット(レスリー・マン)と離婚調停の真っ最中。出世コースから外れ、息子・娘にも煙たがられている。居場所のないマイクは大雨の夜を彷徨っている内に奇妙な出来事に遭遇し、その弾みで17歳の身体に戻ってしまう。パニックに陥るマイクだが、人生のやり直しのチャンスと考える。ハイスクール時代の親友でオタクの才能を発揮し大金持ちになったネッド(トーマス・レノン)に事情を説明し、父親を演じてもらい、輝かしい日々を送ったハイスクールに編入する事に成功するが…。
普通のタイムスリップ映画だと時代感覚の差で笑いを生みますが、この映画ではジェネレーション・ギャップが売り。見た目はハイティーンでも中身はおやじギャグが身についた中年男。会話もファッションもずれて、クラスでは完全に浮きまくります。それを米国ティーンのアイドル、ザック・エフロンが演じているのでおかしさは増します。ザックをよくご存じない方に説明しますと、現在21歳、2006年エミー賞に輝いたTVドラマ「ハイスクール・ミュージカル」の主演で大ブレイク。07年公開のミュージカル映画「ヘアスプレー」、09年「ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー」に出演。甘い顔立ちとバスケとダンスで鍛えた身体が魅力です。ところがその20年後のザックはマシュー・ペリーとなり、甘い顔には皺ができ、引きしまった身体は肉がたるんできています。その差は強烈でマシューはザックの引き立て役みたいな感じです。
マイクが17歳に戻った事で、妻スカーレットが自分の母親のように見え、娘、息子が友人のように見えます。映画では、息子アレックスもバスケ部に所属していますが、そこでイジメに遭っています。そのいじめている張本人スタンが、よりによって娘マギーの恋人であることでもマイクは頭を痛めます。マイクはマギーとスタンを別れさせようと画策する内に、マギーはマイクに恋心を抱くようになり、またマイクは自分の妻スカーレットに寄りを戻すよう懸命にモーションをかけていきます。スカーレットはハイスクール時代のかっこよかったマイクに似た青年が言い寄ってくるもんだからまんざらでもない。文章にするとドロドロの近親相姦モノに見えますが、映画ではカラッとした笑える描写になっています。
もう一つ、マイクの親友ネッドとハイスクールの女校長との”オタク愛”も見所です。「ロード・オブ・ザ・リング」ファンならニンマリする場面もたっぷりです。
頭の固い観客は「なぜ17歳に戻ったのか」とか「スカーレットはマイクの大事な日になぜ妊娠を告げなければならないのか」とか、口を挟みたくなるシーンが満載です。でもそんな事は問題ではありません。映画は「人生の岐路に立たされ時、別の道に進んでみてもそれが今より正しいのかは分からない。それより、せっかく今の道を進んできたわけだから、その道の中でベストを尽くせ」と言っているような気がします。
☆「セブンティーン・アゲイン」2009年5月16日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2009 NEW LINE PRODUCTIONS

© 2008 Talentaid International Ltd. All Rights Reserved.
「レッドクリフ PartII ─未来への最終決戦─ 」の大ヒットで、脚光を浴びる中国映画ですが、今回の「ウォーロード/男たちの誓い」も「レッドクリフ」に勝るとも劣らない気合いの入った中国映画です。時代は19世紀の終わりに実在した両江総督の馬新貽(ばしんい)の暗殺事件がベースになっているとの事。中国史で言うと「清朝」の末期に当たり、日本では明治時代。日清戦争の24年前の話です。今公開中の「レッドクリフ」の“赤壁の戦い”が西暦208年の事ですから、「ウォーロード」はずいぶん最近の話になります。でも観るとさほど時代が変わらない印象を受けるのは何故でしょうか。中国の史劇の映画化は今後も続き、6月公開の「大秦帝国」は8時間40分の超大作。その時代はさらに古く、紀元前で秦の始皇帝以前の話。中国史に詳しい人は着衣でいつの時代が分かるのかもしれませんが、疎い私には時代の違いが分からず、同じ時代のように感じます。
19世紀末、清朝の圧制下、太平天国の乱が起こる。清朝軍将軍のパン(ジェット・リー)は味方の兵士を全滅され、失意の中彷徨っている時、盗賊団のボス・アルフ(アンディ・ラウ)とウーヤン(金城武)と出会う。盗賊団の過酷な境遇を目の当たりにしたパンは、動乱の時代を生き延びるには清朝側につくべきと主張する。パンの説得に同意したアルフとウーヤンは、運命を共にする義兄弟の契り『投名状』を交わす。3人の結束力で次々と太平天国軍を撃破。西太后からも一目を置かれる存在になった。しかし、権力のために戦うパンと仲間のために戦うアルフの間に次第に深い溝が出来てくる。そしてその2人を信頼しているウーヤンも苦悩する。「死ぬ時は一緒」と誓った3人の運命は…。
この話は中国では有名な話だそうで、1973年には「ブラッド・ブラザース/刺馬」で映画化され、TVや舞台で繰り返し取り上げられる題材です。全然知りませんでした。
主演格のジェット・リーがアクションに頼らない演技が見事です。運命を共にする事を誓った義理の熱い人格から、次第に権力に目覚め冷酷になっていく心情の変化を全身で表現しています。今までのジェット・リーは「強いけど、純朴なため悪い大人に利用される」役が多かったけど、今回は自らの意思で「ずるい大人」になる役を演じています。ジェット・リーはこの役で『香港電影金像奨』の主演男優賞に輝いています。以前紹介した「新宿インシデント」では、ジャッキー・チェンもアクションを封印した演技が好評を得ました。今、アジアのアクション俳優の転機の時期かもしれません。
でもこの映画、アクションがないわけではなく、合戦シーンは迫力満点。ヘタなCGやワイヤーアクションなど使わず、生身のパワーのぶつかり合いで魅了します。結構残酷でどぎついシーンもあります。
そして私が一番注目したのが、金城武。「レッドクリフ」ではで頭脳労働に徹した諸葛孔明役。常に戦況を冷静に見つめて、表情ひとつ崩さなかったのに対して、この「ウォーロード」では熱い男を演じています。極めつけはジェット・リーとのバトル。映画のクライマックスでの1対1の決闘ですが、まさに“死闘”という感じ。ジェット・リーのアクションはこのシーンぐらいしかないのですが、そこはジェット・リー、金城武を赤ん坊のように扱います。しかし、金城も血だらけ泥だらけになりながらも必死に挑む姿は、いつもポーカー・フェイスの諸葛孔明役とは大違いです。新境地を見た感じです。
ひとつ残念だったのがナレーション。ウーヤン(金城武)が全てを悟った上で過去を思い出すように語っているのです。これだとウーヤンは最後まで生き延びる事が、ラストを観る前に分かってしまいます。ここはひとつ、第三者(天の声)がナレーションをした方がよかったのではないでしょうか。
最近のアジア映画の大作は国を越えた才能が集まって、ハリウッドに負けない迫力とエンタテインメントの作品がたくさん出てきました。逆にハリウッドはインドを始めアジアの作品を注目しています。次は日本人監督、日本人俳優主演で世界に挑んで欲しい物です。
☆「ウォーロード/男たちの誓い」2009年5月8日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー〈PG12〉
配給:ブロードメディア・スタジオ
© 2008 Talentaid International Ltd. All Rights Reserved.

© 2007 Bangkok Dangerous, Inc. All Rights Reserved.
去年の10月に紹介したジェシカ・アルバ主演のホラー映画「The Eye」。そのオリジナル版「the EYE【アイ】」を撮った香港出身の兄弟コンビ・オキサイド&ダニー・パン監督のハリウッド進出第第2弾映画となる「バンコック・デンジャラス」を紹介します。これは2002年の自ら監督したタイ映画「レイン」のセルフ・リメイクになっています。
世界を股にかける凄腕の殺し屋ジョー(ニコラス・ケイジ)。彼には自分に課した「殺しのルール」があった。《完璧な計画》《痕跡の隠滅》《契約の遵守》。ジョーはこの3つを守り続け、依頼された仕事は100%こなしていた。プラハでの仕事を終え、自分の限界を感じたジョーは、バンコックでの4件の暗殺をこなしたら引退を考えていた。まず地元でいつでも始末できるパシリを探す。自分の存在を隠すためだ。ある日雑踏で観光客相手にスリを働くチンピラ・コンと出会い雇う事にする。コンの仕事は依頼主との連絡係だ。第1の標的を片付けたジョーは逃走の際、思わぬ怪我をする。立ち寄った薬局で対応したのは、耳の不自由な女性店員フォン。身振り手振りで賢明に説明する姿を見たジョーは、無機質だった心の中に愛情が芽生えた。またコンの真摯な働きぶりにジョーは、コンを弟子と認め自分の後を継いでもらうべく、戦い方を伝授する。そうして、完全主義者だったジョーの心の中に隙が生まれてきた。それは次の暗殺に大きく影を落とす…。
セルフ・リメイクと言っても、設定は大胆に変えています。まず、オリジナルの「レイン」は主人公がコン。リメイク版で、ジョーが一目惚れする耳が聞こえないフォンを、オリジナルではコンが好きになり、そのコンが耳が聞こえない事になっています。オリジナルのタイトル「レイン」は邦題で、原題はリメイク版と同じ「Bangkok Dangerous」。なぜ「レイン」になったのかはよく分かりません。雨のシーンが印象に残るからか、「フォン」という言葉がタイ語で「雨(fon)」と言う意味だからか、謎です。
オリジナル版と比べると、主人公をジョーという健常者に変えた分、オリジナルの聴覚障害があるコンのストイックさ、心に持つ暗さの部分が損なわれた感じがします。またニコラス演じるジョーが前半では冷酷で笑顔ひとつ見せない暗殺者であったのに対し、フォンと出会い恋に落ちると、やたらニヤニヤしたり、デートの食事でトムヤムクンを「辛い辛い」と汗を拭きながら食べる姿は同一人物とは思えません。でも、その変化が最大の危機を招き、最悪の結末に向かう伏線になっているのだから仕方ないのかもしれません。
パン兄弟にしてもこの、このハリウッド進出第2弾は大きな賭けでもあります。第1弾は
2007年の「ゴースト・ハウス」。主演は今でこそ「トワイライト-初恋-」で注目されてきましたが、当時はまだ無名に近いクリステン・スチュワート。だから今回ニコラス・ケイジというビッグ・ネームが出演するという事で、失敗は許されません。また主演のニコラスがプロデューサーという形でも携わっているのでなおさらです(全米では2008年9月2日公開で初登場1位でした)。
スケール感は「レイン」とは比較にならないぐらいアップしています。タイ名物の水上マーケットでのボート・チェイスで始まり、モーターボートとバイクの追いかけっこに発展していくところはハリウッドとタイのコラボって感じがします。
ニコラス・ケイジは7月に「ノウイング」というディザスター(災害)ムービーの公開が控えています。こちらも楽しみです。
☆「バンコック・デンジャラス」2009年5月9日(土)より渋谷東急、109シネマズ×ユナイテッド・シネマ他全国ロードショー〈R15+〉
配給:プレシディオ
© 2007 Bangkok Dangerous, Inc. All Rights Reserved.