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築城せよ! 2009.06.16


© 「築城せよ」製作委員会

 試写は公開日までに十数回、多い映画で20回以上行われます。試写を回し始めた最初の頃に行くと、前評判もそれほど聞こえてこなく、どんな映画化さっぱり分からないで観る事もあります。今回紹介する映画「築城せよ!」がまさにそうでした。試写の案内をメールでいただき、初回がちょうどスケジュールが空いていたので、予備知識もなく行きました。出演者もそれほど人気のある俳優さんが出ているわけでもありません。監督も初めて聞く名です。でもそんな映画がおもしろかった時の喜びといったらこの上ない物です。

 愛知県猿投(さなげ)市。「猿投玉」というお手玉しか名物がなく、過疎化が進んでいる町である。町民は猿投城跡地に城を復元し、集客を図ろうとしていた。そんなある日、城跡の古井戸に落ちた役所の職員、大工の棟梁、ホームレスの3人に、400年前の武将とその家来の霊が乗り移った。武将は恩大寺隼人将(片岡愛之助)と名乗り、かつてこの地に築城を試みたが裏切りにあい、城の完成を見ずに命を落とした悲劇の武将だった。恩大寺は夢であった城の完成のために町民に協力を求める。タイムリミットは霊が離れる満月までの3日間。土台無理な計画に町民は動こうとはしなかったが、恩大寺はホームレスの段ボールハウスを見て、「段ボール城」を思いつく。紙の城なんて危なくてダメだと反対する家来や町民。しかし、大学で建築学を専攻するナツキ(海老瀬はな)は段ボールの特性に注目し、不可能ではないと判断、設計図を作り、築城の指揮を執る事になった。だが、そんな町民の盛り上がりを苦々しく思っている男がいた。城跡に工場を誘致し、雇用を拡大して町を潤そうと考えていた町長(江守徹)だ。はたして、段ボールの城は完成するのか。また、町長の企てる妨害策は…。

 「築城せよ!」の監督・古波津陽が2005年に撮った1時間弱の短編映画「築城せよ。-Raise the Castle!-」がサンフェルナンドヴァレー国際映画祭で最優秀外国語映画賞を受賞。その作品をもとにセルフリメイクした作品が本作です。機会があったら元になったその短編も観てみたいです。

 「歴史ブーム」の流れなのでしょうか、戦国の武将が今の世の中に霊になってやってくると言う設定は、8月に公開する竹中直人監督の「山形スクリーム」と同じです。でも「山形スクリーム」は武将が人々が恐怖する“霊”の域を脱しないのに比べ、こちらは現代人が“霊”と知りつつ、“霊”に扇動されながらも協力していくと言う奇妙な設定になっています。

 この映画の最大の特徴は、段ボールで城を造ると言った奇想天外な発想と、実際に段ボール12000個使用して高さ25mの城を造ってしまった所です。「ものづくり、人づくり、地域づくり」をコンセプトとした愛知工業大学50周年記念事業として、エキストラや城造りに多くの学生が参加、また地域住民も多数協力しています。愛知工業大学はこの映画製作の経験を生かして、今度は名古屋城天守閣を1/5スケールで造った、と先月報道されました。

 壁や屋根などの外装だけではなく、柱や梁まですべて段ボール製。強度が必要な床の部分は
5mm厚の段ボールを高さ5cmの帯状に切り、それを3枚重ねにして、5cm間隔に格子状に組む、など工夫をして造っていきます。実際、築城にかかった日数は約1か月。完成しても1週間で壊してしまうのはもったいないくらいの城です。

 古波津監督は長編映画初監督と言うことで、演出の甘い部分はあります。テーマとなる「城を段ボールで造る」という部分をもっと強調し、ドキュメンタリーぽくしても良かったと思いますが、CGなどの視覚効果に頼らず、手作り感たっぷりの映画を撮ったバイタリティは凄いです。


☆「築城せよ!」2009年6月20日(土)より新宿ピカデリー他にてロードショー
配給:東京テアトル
© 「築城せよ」製作委員会