
巨匠スペルバーグの「リンカーン」が、奴隷解放を法案化した第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンを描いた渾身の一作なら、奇才タランティーノは「ジャンゴ 繋がれざる者」で、武力によって黒人奴隷を解放した白人黒人のコンビを描いた。スピルバーグとタランティーノ。このハリウッドを代表する2大監督。アプローチの仕方は異なるが、思う理想は同じ。品格のある映画「リンカーン」に対して、「ジャンゴ…」はエンターテインメントに徹している。
1985年、テキサス北部。足枷で繋げられた5人の黒人奴隷が、2人の奴隷商人に急かされている。そこにロングコートに三つ揃いのスーツを着た歯科医シュルツ(クリフトフ・ヴァルツ)が行く手を遮り、奴隷達にカールトン農場の監督官プリトル3兄弟を知る者を訊ねる。すると一人の奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が前に出る。自分の妻ブルームヘルダ(ケリー・ワシントン)が兄弟によって別の奴隷市場に売り飛ばされ離ればなれにさせられたのだ。邪魔をする奴隷商人をシュルツはあっさりと射殺し、5人の奴隷の足枷を外し、ジャンゴだけを馬に乗せ連れて行く。歯科医シュルツ、実は賞金稼ぎで多額の賞金のかかった顔の知らないプリトル兄弟を捜すためにジャンゴの助けが必要だったのだ。彼は必要なら奴隷とも手を組む、黒人だからといって差別をしないドイツ人だ。タランティーノの前作「イングロリアス・バスターズ」ではユダヤを憎む偏見の固まりの将校役だったヴァルツが、ここでは一転、黒人の味方という180度違う役回りというのが面白い。

スーツを着こなし馬に乗りバーにも入ってくる黒人に、世間の目は冷たい。保安官がジャンゴを連行しようとするが、シュルツはあっという間に保安官を撃ち殺す。実はその保安官もお尋ね者で、首に賞金がかかっていたのだ。シュルツとジャンゴは町民が大騒ぎする中、連邦警察から賞金をもらい町を後にする。ジャンゴはシュルツの相棒となるべく銃の手ほどきを受け、早撃ち術を身につける。そして簡単に3兄弟を射殺し、次の目的、ジャンゴの妻ブルームヘルダ捜しだ。奴隷市場の記録からブルームヘルダは、ミシシッピー州のキャンディランド農園領主カルビン(レオナルド・ディカプリオ)に売られていることが判る。カルビンは黒人嫌いのフランスかぶれの男。黒人奴隷同士の殺し合いを観て楽しむという黒人の天敵だ。その腹心で、黒人ながら黒人嫌いのスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)は、シュルツとジャンゴが現れた意味を見抜き、カルビンに告げる。そしてここからタランティーノお得意の血で血を洗う大決戦が始まる。
アメリカ南部のお話しだが、作りは西部劇。それもマカロニ・ウエスタンに近い。オープニングタイトルでも、荒涼とした南部の砂漠に赤い文字でクレジットがバシバシ出てくる。アップの画からロングショットへのスピード感溢れるズームバック、そこにかかるエンニオ・モリコーネの音楽…ゾクゾクします。「続・荒野の用心棒」(1966年)の主演ジャンゴを演じたフランコ・ネロも酒場のシーンでカメオ出演しているし。今回のタイトル「ジャンゴ」もここから来てるのでしょう。決してタランティーノも出演していた三池監督の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」からではないはず。出演と言えば、今回の映画にもタランティーノが後半出ていた。爆弾で吹っ飛ぶ役だけど。
実は迫力の銃撃戦はラスト前で起こり、そこで終わらない。「二度美味しい」ところを持って行きたかったのだろうが、その後が蛇足の様に感じてしまった。
今回、ディカプリオが俳優人生で初めてと言っていいほどの極悪人役を演じているが話題になっている。たしかにその力の入れ様はハンパないが、その執事役スティーブンを演じたサミュエル・L・ジャクソンの不気味さはその上を言っている。老けメークを施し、カルビンに服従している様に見せかけ、腹の中では…という含みを帯びた役を軽々演じている。やっぱり芝居が上手い。なにやらしても自分の物にしている。そしてジャンゴ役のジェイミー・フォックス。当初ジャンゴ役にはウィル・スミスがやる予定だったとか。でも心に闇を持つ役は、ネアカなウィル・スミスとは正反対。結果オーライという感じでした。
☆「ジャンゴ 繋がれざる者」2013年3月1日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー〈R15+〉
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

今作の監督ロバート・ゼメキスと言えば、最近では「ポーラー・エクスプレス」(04)や「ベオウルフ/呪われし勇者」(07)、「Disney's クリスマス・キャロル」(09)など、CGアニメ映画の監督の印象が強い。でもその前までは、ヒットシリーズ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」3部作(85〜90)やアカデミー作品賞、監督賞を獲った「フォレスト・ガンプ/一期一会」(95)など実写映画でも優れた作品を残している。正直、ゼメキスのCGアニメはそんなに好きではなかった。モーションキャプチャーが不気味で気色悪く、キッズアニメにしては絵面が怖い。早く生身の人間を使って映画を撮って欲しいと思っていた。そのゼメキスが「キャスト・アウェイ」(00)から12年ぶりに実写映画のメガホンを取ったのがこの「フライト」である。主演も、アカデミー俳優であるデンゼル・ワシントン。これが面白くない訳がない。
だがこの映画、あらすじを紹介すればするほど、観た時の面白さが半減する。私がこの映画を観たのが、去年の11月。まだ映画の内容や登場人物の人となりがそんなに伝わってない時期だった。分かっていたのは次に挙げる7点。
1)デンゼル・ワシントンはパイロット役
2)そのデンゼルが操縦する旅客機が突然機体の故障で墜落しかける
3)デンゼルは卓抜した操縦テクニック(背面飛行)で難を逃れ、被害者を最低人数に抑える
4)その機体トラブルは他のパイロット10人がシミュレーションしても全員着陸に失敗するほど困難な事故だった
5)デンゼルは一躍ヒーローになる
6)ところが彼の血液からアルコール反応が出る
7)一転、事故の原因はデンゼルにあるのではという疑いがかけられる
果たしてデンゼルは英雄なのか犯罪者なのか…? ということで私は勝手に、アルコール反応が出たのは誰かの企みで、彼を陥れる何者かの仕業、それを解明していくサスペンス映画と思って観に行った。ところがこれが全然違っていた。意外とどストレートで捻りもない。デンゼルが“善玉か悪玉か”とか“アルコールの謎”なんて物は最初の1シーンで判ってしまう。
だからといって面白くなかった訳ではない。デンゼルの演技の濃さ。最近彼は悪役もこなす様になったので、“善玉か悪玉か”の判断もつきにくい。また周りの役者の熱演も見応えある。デンゼルを弁護するドン・チードル。デンゼルとは1996年の「青いドレスの女」以来の共演だ。そしてジョン・グッドマン。彼はデンゼルがピンチの時にどこからともなく現れる頼りになる男。最近ジョン・グッドマンはほんとにいい仕事をしている。「アルゴ」や「人生の特等席」など、主演をフォローする大事なデブ役はほとんど彼の仕事だ。
最後にもう一度、ヘタに映画紹介のブログなどを読んだりせず、この映画の知識を上記の7点だけインプットして観てもらいたい。その方がより面白く観られます。
☆「フライト」2013年3月1日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
© 2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

2011年のサンダンス映画祭で監督賞、同じくカンヌ国際映画祭で“若者の視点”賞など、アメリカ国内外の映画賞を11個も獲った作品。ある若い女性が、カルト集団のマインド・コントロールから逃れようと闘う2週間を描いたサスペンス映画である。日本ではカルト集団を描いた作品というと「20世紀少年」が有名だが、こちらの映画は空恐ろしいサイコスリラーだ。

コネティカットの湖畔の貸別荘に2週間の休暇でやってきたテッド(ヒュー・ダンシー)とルーシー(サラ・ポールソン)夫妻に一本の電話がかかってくる。電話の主は長らく音信の途絶えていたルーシーの妹マーサ(エリザベス・オルセン)だった。マーサのただならぬ様子を察したルーシーは別荘に向かい入れる。実はマーサはこの2年間、キャッツキルという緑豊かな山中で、パトリック(ジョン・ホークス)率いるコミューンに身を寄せていたのだ。しかしマーサはその2年間のことを姉ルーシーに話そうとはしない。ただ時折見せる理解しがたい言動にルーシーは動揺していた。それでもテッドの協力もあり時間をかけて辛抱強く元のマーサに戻るのを待つことにする。一方のマーサもコミューンの記憶に悩まされていた。またいつかキャッツキルに連れ戻されるのではないか? この恐怖を引きずっている限りコネティカットの別荘も安住の地ではなかった。

ここで描かれるコミューン(=カルト集団)はオウム真理教の様な宗教めいた物はない。パトリックが築こうとしているのは自給自足で質素な生活。ただ妙な仕来りがあり、マーサはマーシー・メイと別名で呼ばれ、女性は男性の食べ残した物を食べ、新入り女性は“浄めの儀式”と言う名目でパトリックと寝なければならない。そんな記憶がマーサを夜な夜な苛めるのだ。また2年間のカルト集団の生活からして観れば、今の別荘暮らしは満たされまくっている。テッドに向かって「金銭や成功を求めるのが模範的な生き方ではない!」、またルーシーに向かっては「いい母親にはなれないわよ」と毒突く。自給自足の生活から見ればその通りかも知れない。

2年間の記憶が更にマーサを悩ませる。実は脱走直後に集団の幹部に見つかるが、何故か引き戻そうとはしないし、質素な生活の影に、金銭目当てに殺人も厭わない集団だと言うことが見えてくる。映画は現在の別荘暮らしと、2年前のカルト集団内での生活が同時進行で描かれる。だから観客は、これが現実なのかマーサの頭の中の出来事なのか、理解しきれなくなってくる。われわれもこの31歳の新人監督ショーン・ダーキンに洗脳されているのかも知れない。

特にラストシーンは夢か現実化、ハッピーエンドかアンハッピーエンドなのか、観ている方に判断を委ねられている。怖い映画だ。
☆「マーサ、あるいはマーシー・メイ」2013年2月23日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー〈PG12〉
配給:エスピーオー
© 2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

9.11以降、姿をくらましたビンラディンを探し出す女性CIA分析官の異常なまでの執着を描く物語。徹底した聞き込み取材に基づく脚本は真に迫っており、事実なので結末は判っているが、2時間38分の長尺を緊迫感と緊張感で飽きさせない。
冒頭、ワールド・トレード・センターが崩落するシーンから始まるが、映像は一切なく、黒い画面に逃げ惑う人々、助けを求める声だけが流れる。もはや惨劇を嘆く時代ではない。喪に服するのは終わった。今は復讐の時だ。ビンラディンを捕まえるのは民意である。強いアメリカを見せつける番なのだ。
そしてその2年後、捕虜として捕まえられたサウジ・グループの連絡係シーンを尋問するシーンに繋がる。尋問といえども拷問に近い。暴力は振るわないが、毛布を被せ水に濡らす窒息を誘う姑息なやり口。そこにワシントンから赴任したばかりのCIA女性分析官のマヤ(ジェシカ・チャスティン)がやってくる。もちろん凝視できない。だが彼女はビンラディンの居場所を突き止めるために派遣された人材、弱気は出せない。強情なサウジ・グループの捕虜も過酷な尋問に少しずつ口を割る。しかし肝心な情報は掴めない。そんな時に起きる2005年7月のロンドン同時爆破事件。そしてマヤの戦友とも言える同僚女性ジェシカをもあ巻き込んだ2009年12月のチャップマン基地自爆テロ事件。これらの事件でマヤの《ビンラディン逮捕》の意志は決定的になる。顔を背けていた拷問まがいの尋問も率先してやる様になる。だが政府はビンラディンの居場所よりも次のテロがどこで起きるかの方が重要だと、マヤの必死で手に入れた情報に耳を貸さない。マヤは孤軍奮闘しビンラディンを探しまくる。それでも7年かけてビンラディンの“連絡係”を突き止め、アジトまで発見する。後は逮捕に踏み切るための証拠を政府に突きつければ実行に移せる。しかし政府高官は大量破壊兵器発見の失敗から、なかなかGOサインを出さない。すると突然舞台はネバタ州のあの《エリア51》に移る。私の浅はかな知識で「エリア51ってUFO研究しているところじゃないの?」と思ったが、実は軍の機密航空機のテストをしているところらしく、アジト上空の偵察、そしてビンラディンの身柄拘束に最新のステルス機を使用するということだった。政府はマヤの「95%の確率でビンラディンが居る」という言葉を信じて、2011年5月1日、ネイビーシールズの出動を要請する。

そして後半30分間はビンラディン捜索に時間を費やす。タイトルの「ゼロ・ダーク・サーティ」は深夜0時30分―作戦決行の時間を表している。
暗視ゴーグルのグリーンがかった映像が緊迫感を煽り、観ている方をじりじりさせる。なかなか見つからないビンラディン。行く手を阻む男たちをバンバン撃ち殺して、中に進む。まるでテレビゲーム。「メタルギア」をプレイしているかのよう。相変わらず男勝りなキャスリン・ビグローの演出は冴える。前作「ハード・ロッカー」では戦場という極限の状況で、主人公は神経が麻痺し戦争中毒になるが、こちらマヤは身も心もビンラディン捜索にかけている。実際、マヤの私生活は一切描かれていない。どんな生活をしているのか、家族はいるのか、まったく分からない。女性CIA局員といえば、アンジーが演じた「ソルト」を思い出すが、このマヤはソルトほどの戦闘能力も分析能力も持っていないフツーの局員。超人的能力を持っていなくても、根気と信念があれば道は開けるのだ。
そのマヤを演じた主演のジェシカ・チャスティンは、これまで「ツリー・オブ・ライフ」や「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」でお嬢さん女優としての認識しかなかったが、この映画で化粧っ気なしで表情を崩さない‟鉄の女”を演じていおり、アカデミー賞ノミネートも当然だと思える活躍をしている。
元々事実で固めたこの話ではあるが、マヤは実在しない。彼女はビンラディン捕獲に携わった人物の総合体であろう。女性という立場を捨てたマヤが作戦終了後に流した涙は、キャスリン・ビグローってやっぱり女性だったんだと感じたシーンだ。

☆「ゼロ・ダーク・サーティ」2013年2月15日(金)より全国ロードショー
配給:ギャガ
Jonathan Olley © 2012 CTMG. All rights reserved

「超能力は実在するのか?」・・・ユリ・ゲラーの来日で、スプーン曲げや止まった時計を動かすなどの超能力ブームが日本に来たのが1970年代半ば。それ以降、超能力の真偽を検証する特集が流行った。この映画に出演するロバート・デ・ニーロ扮する“超能力者”サイモン・シルバーはユダヤ人という設定からも、おそらくユリ・ゲラーをモデルにしているのだろう。そんな超能力者に対して真っ向から否定する一派もどの時代にもいる。大槻教授みたいな者だ。この映画の中ではシガニー・ウィーバー演じるマーガレット・マシスン博士とその助手、キリアン・マーフィー演じるトム・バックリー博士だ。この2人はことごとく自称“超能力者”のいかさまや、超常現象のからくりを暴いてきた。余談だが、この2人の博士が田舎町に建つ一軒家に引っ越してきた一家を悩ませるポルターガイスト現象のくだりは、この監督ロドリゴ・コルデスが製作総指揮を務めた「アパートメント:143」で改めて一本の映画にしている。
さて、そんなバッタバッタとエセ超能力者を切って行っている二人の前に強敵が現れる。伝説の盲目超能力者サイモン・シルバーが30年の沈黙を破って現れ、人前でサイキックショーを披露するというのだ。強者の化けの皮を暴いてやろうといきがるトムだが、マーガレットは尻込みをする。実はマーガレットが若い頃、サイモンとテレビ番組で対決に挑んだが、インチキを証明できなかったばかりか、心の中の弱みを突かれ完敗したのだ。「シルバーは危険な人物、近付くな」とトムに忠告するが、血気盛んなトムは聞き入れる訳がない。好奇心旺盛な女子学生サリー・オーウェン(エリザベス・オルセン)を仲間に入れ、調査に乗り込むが…。

ロバート・デ・ニーロは来週公開する「世界にひとつのプレイブック」を含めると今年すでに3本公開する。先月公開の「フリーランサー NY捜査線」では悪徳刑事、「世界にひとつ…」ではフットボールの試合に全財産をかける親父役、そして本作では伝説のサイキックと相変わらず役の幅は広い。「レッド・ライト」も彼の怪演なしでは成立しなかっただろう。超能力者かインチキ野郎か。タイトロープを渡るような芝居はデ・ニーロの真骨頂だ。その怪優と渡り合うこれまた大物女優のシガニー・ウィーバー。インチキ超能力者をズバッと論破するのはカッコイイし、超常現象も科学的に解明する姿はりりしい。この大御所二人の対決がスクリーンで観られると思ったが、それは期待はずれ。敵前逃亡だもん。
実質的主演のキリアン・マーフィーは、クリストファー・ノーラン監督作の常連。何を考えているのか分からない爬虫類的な顔は、この手の映画には打って付け。ラストのデ・ニーロとの対決は必見だ。
そのラストなのだが、これがトンデモエンディング。すんなり受け入れるか受け入れられないのかは人によって違うだろう。我々はこの映画を見る前の宣伝からもう騙されていたのだ。そしてミスリードさせるストーリー展開。後半のトムがサイモンの“超能力”に怯えながらも真相を突き止めに走る姿は、こんな結末を迎えるなんて想像できない。さらに言うと。ここまで書いたこのブログも読者を騙していることになる。仰天の結末は劇場で。
☆「レッド・ライト」2013年2月15日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給:プレシディオ
© 2011 VERSUS PRODUCCIONES CINEMATOGRAFICAS S.L. (NOSTROMO PICTURES) / VS ENTERTAINMENT LLC

アメコミ好きでも有名なニコラス・ケイジが自ら志願して主演を取った、マーベルコミック社の同名コミック原作の第2弾。前作は2007年の公開だから、もう5年前。当時はまだあった髪の毛も今作では生え際がますます後退している。そう言えば第1作の時に来日して、“日本のニコラス・ケイジ”モト冬樹と2ショット会見を行っていたなあ。
第1作目で、父を死から救うため悪魔と契約し、自らの中にゴーストライダーを宿したジョニー・ブレイズ(ニコラス・ケイジ)。憎しみや怒りに呼応して突然現れるゴーストライダー。
そして本作。抑制できないゴーストライダーの存在に悩み続け、ジョニーはひとり人里離れた地で静かに暮らしていた。しかし、特殊な能力を持ったジョニーを人は放ってはおかない。彼の元に僧侶モロー(イドリス・エルバ)がやってくる。モローは、悪の化身ロアーク(キアラ・ハインズ)が新たに取り憑く身体として狙っているダニー(フォーガス・リオーダン)を助けて欲しいと言う。ロアークこそがジョニーに呪いをかけた張本人。コイツを倒せば自分も解放できるのでは…と考えたジョニーは重い腰を上げる。ダニーは母ナディア(ヴィオランテ・プラシド)と共に逃亡の生活を送っていた。ロアークはナディアの元カレであるキャリガン(ジョニー・ホイットワース)を手下にし、ダニー母子を追い詰める。果たしてジョニーはダニーを守り、自らの解放に成功するのか?

前作と大きく違うのは監督とバイク。監督はジェイソン・ステイサム主演の「アドレナリン」、「アドレナリン:ハイ・ボルテージ」を撮ったマーク・ネヴェルダインとブライアン・テイラーのコンビ。前作の監督マーク・スティーヴン・ジョンソンは今回は製作総指揮に回っている。この監督交代は正解。「アドレナリン」シリーズのハイテンションな演出が、このコミック原作の映画にはピッタリ。アクションシーンにはCGを極力避け、スタントにも生の迫力、リアルな臨場感、スリル満載のスピード感を生み出している。しかしCGは使うところには使っている。ゴーストライダーのスカルフェイスや炎に包まれるバイクなど効果的だ。
そしてバイク。前回のヘルバイクは原作のコミックに倣ってハーレー・ダビットソンだったが、今回はヤマハのVMAXに変更された。これはフロントの長いチョッパー型のバイクだとアクションには不向きと判断。よりリアルな演出にこだわった監督とニコラスのアイディアだそうだ。
そして今回目につくのは、ハイテンション過ぎるニコラスの演技。ジョニーからゴーストライダーに変身する時の表情は、「マスク」のジム・キャリーのようにコロコロ変わる顔の演技を観ているようだった。また今作はバイク以外の乗り物にも乗る。乗った物はすべて炎に包まれる訳だが、全長220mの“Bagger 288”と呼ばれるバケット・ホイール・エクスカベーター(移動式露天採掘マシーン)を操ったシーンは圧巻。あとゴーストライダーが立ちションするとオチンチンから炎が吹き出す。笑えるシーンである。

マーベルコミックと言えば昨年の「アベンジャーズ」が大ヒットしたが、同じくマーベルコミック出身のゴーストライダーは、一度もメンバーになった事がない。「ファンタスティック・フォー」のメンバーになった事は一時期あるそうだが、やはり悪魔に魂を売ったダークなヒーローはメンバーに入れてもらえないのか。
☆「ゴーストライダー2」2013年2月8日(金)より丸の内ピカデリー他全国ロードショー
配給:松竹/ポニーキャニオン
© 2012 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.