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ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイ  EAMES: The Architect & The Painter 2013.05.07

 『イームズ・チェア』で有名なデザイナー、チャールズ・イームズと、その妻で画家でもあるレイ・イームズのドキュメンタリーである。

 イームズ・チェア・・・背もたれと座面が一体化したシェル型椅子だが、そのデザイン性もさることながら、これまで大量生産できなかった物が、軽量、低価格で販売されるようになった画期的な製品である。この映画は、“家具”を“インテリア”にした夫妻を追う。

 とはいうものの、私がこのイームズ夫妻を知ったのは椅子ではない。この映画でも軽く紹介されている『パワーズ・オブ・テン(Powers of Ten)』という短編科学フィルムで私はイームズを知った。
 パワーズ・オブ・テンとは何か? 「10の力」ではない。パワーズというのは「べき乗」という意味。同じ数をいくつも掛け合わせた物。例えば“2の2乗”は2×2で4。3の3乗は3×3×3で27。従ってパワーズ・オブ・テンは“10のべき乗”という意味である。

 イームズ夫妻がこの映画を完成させたのは1977年(その9年前に習作である「ラフ・スケッチ」を完成させているが)。シカゴの公園でシートを敷いて寝転ぶ男女。それをカメラは画角1メートル×1メートルで捉える。これが“10の0乗”メートルだ。次にカメラは上空へ移動して行き、“10の1乗”メートル=10メートル四方の映像、広い公園に寝そべっている男女という画になる。更にカメラは天空に上がり、10の2乗=100メートル四方になると公園全体が見られる広さだ。そしてその10秒後、更に画面は広くなり1000(10の3乗)メートル四方。シカゴの街並みまで広がり公園は豆粒ほどの大きさでしかない。このように10秒ごとにべき数は上がっていき、10の6乗(100万メートル)ではミシガン湖全体が見え、10の7乗(1000万メートル)では地球全体を見ることが出来る。数字は更に上がっていき、地球の軌道、(11乗)太陽系(13乗)、さらには銀河系(21乗)、この辺になるとどんなにズームバックしても宇宙の景色は変わらないのだ。最終的には10の24乗、1億光年四方まで行く。そしてカメラはそこから地球に近付いていく。最初の10の0乗まで着たら、今度は10のー1乗(10センチメートル)、-2乗(1センチメートル)とミクロの世界に突き進んでいく。皮膚の内部、細胞、染色体、分子、原子,原子核、最終的には-15乗まで行き、陽子、中性子の世界まで入っていくのだ。

 今でこそCGが発達し、この手の特殊撮影は楽に出来そうだが、1977年はまだCGが存在しない時代。それでも実写からアニメーションの繋ぎがスムーズで驚かせる。私はレーザーディスクでこの映画を観た。江守徹が吹き替えた日本語のナレーションで見やすかった。オリジナルはYouTubeなどの動画サイトでも見ることが出来るので

 この映像はいろんな方面に影響を与え、あのオザケンこと小沢健二のソロデビュー曲『天気読み』で「星座から遠く離れていって 景色が変わらなくなるなら・・・」と歌っている。

 話が「パワーズ・オブ・テン」に終始してしまったが、このイームズ夫妻は他にも、映画や家具、建築物から広告イメージまで幅広く活躍している。夫のチャールズ・イームズはハンサムで注目されているが、彼の活躍は妻のレイのアドバイスがなければなかっただろう。先月公開の「ヒッチコック」のアルフレッドと妻アルマの関係を思い出した。


☆「ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイ」2013年5月11日(土)より渋谷アップリンク、シネマート六本木ほか全国順次ロードショー
配給:アップリンク
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