
ある日を境に、天使のような顔をした子供たちが突然大人を次々と殺すようになった。それも喜々として…。
1977年、スペイン産のホラー映画『ザ・チャイルド(原題:¿Quién puede matar a un niño?/英題:Who Can Kill a Child? 』が公開された。その衝撃的な内容は、その年のアポリアッツ・ファンタスティック映画祭で批評家賞を受賞したほどだった(グランプリはデ・パルマの『キャリー』)。
あれから36年。今度はメキシコ産リメイクが登場する。邦題は同じだが、原題“Juego de Ninos”の意味は「子供の遊び」。オリジナルの原題の意味が「誰が子供を殺すことができるか」。今の時代、このオリジナル原題を付けたら完全に浮きまくる。時代の移り変わりが感じられる。

新婚のカップルフランシスとベスはスペインに旅行に出かける。妻のベスは身重であり、今のうちに2人だけの静かな世界で過ごしたいと思い、ボートを借りて沖合の小さな島へ乗り込む。しかし、その島は子供だけしかおらず、大人の姿が見当たらない。不審に思うフランシスは探索に出かける。無人のバーに残されたベスに一人の少女が近付き、珍しそうにベスの大きなお腹を触り去っていく。フランシスが食べ物を手に戻って来た時、バーの無線が鳴り意味不明な言葉を発し切れる。不安は積もるが、取りあえず今晩泊まるところを探す二人。寂れたホテルを見つけるが、やはりここにも人影はない。その時、表に杖をついた老人の姿を見かける。飛び出し声をかけるが、その老人を追って一人の少女が現れ、杖をもぎ取り滅多打ちにする。止めに入ったフランシスに不敵な笑いを向ける少女。フランシスは大ケガをした老人を路の脇に寝かせ、ホテルから薬を持って戻ると、その老人はもういない。すると空き地から子供たちの笑い声が。覗いてみると瀕死の老人を十数人の子供たちが取り囲み、棒で叩きナイフで刺し石をぶつけている。ショックを隠し切れないフランシスはホテルに戻り、宿泊しているはずの客を捜すが、部屋には死体がゴロゴロ。その時ベスの叫び声が。慌てて妻の元に駆け寄るフランシスが見たのは一人の男性。始めて生きている大人を見たフランシスは事情を聞く。男は言う「ある夜、子供たちが一斉に笑い出した。その声を聞いた妻が外に出ると、たちまち子供たちに囲まれ忙殺された。その中には自分の娘もいた…」。その時再び無線が鳴る。明らかに助けを呼ぶ大人の女性の声だ。フランシスは女性がいるであろう元に駆けつけたがすでに遅し、子供たちにバラバラにされていた。「早く島を出よう」。身支度をする3人の前に男の娘が現れ手を引っ張って連れて行こうとする。制止を聞かずホテルを出た男の断末魔の声。「ここの子供たちは狂っている」。フランシスとベスはボートの置いてある沖に走る…。

オリジナルより残酷描写は多い。切り刻まれた女性の遺体は結構衝撃的。ただ全米公開時の上映時間は105分、日本公開版は87分。20分近くカットされている。もっと残酷なシーンがあったのかも。
いまや子殺しも親殺しも、オリジナルが作られた1977年ほど珍しい出来事ではなくなっている。オリジナルでは背景に、アウシュヴィッツ収容所や朝鮮戦争、ベトナム戦争、ビアフラの飢餓があった。大人の紛争で被害を被るのはいつも物言えぬ子供たち。その復讐心が怨念となって次々と伝染していった…と解釈できる。しかし今作は、子供たちがなぜ大人を殺すのかが全く見えない。「ホラーに殺す理由なんかいらないぜ」と言われればそれまでだが、今の子の時代だからこそ、理由を見せて欲しかった。その点で言えば、オリジナルのほうに軍配を上げる。
☆「ザ・チャイルド」2013年5月11日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー〈R15+〉
配給:AMGエンタテインメント
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