芸能デスックリーン

記憶探偵と鍵のかかった少女  Mindscape 2014.09.16

 “記憶探偵”というのは、人の意識の中に入り込み、潜在的に記憶しているものを引き出す能力を持った者。それははっきり憶えているものや、完全に意識の中から消え去ったもの、また思い出したくなく封印したものまで、この記憶探偵には見えてしまう。

 映画の主役、マーク・ストロング演じるジョン・ワシントンはその能力を持った数少ない調査員で、これまでも幾多の事件を解決していった。しかし、妻の自殺がきっかけで現場から一時身を引いていた。そんな時、彼の所属する組織“マインドスケープ”社の上司セバスチャン(ブライアン・コックス)から仕事の話を持ち込まれる。それはアナ(タイッサ・ファーミガ/ヴェラ・ファーミガの21才違いの妹)という16才の少女が拒食症で彼女の記憶からその下人を探って欲しい、というものだった。アナは郊外の大屋敷に住んでおり、実父は病死。実母と継父の3人暮らしだ。また彼女のIQはずば抜けて高く、幼少の頃から問題ばかり起こしていた。早速、屋敷を訪ねたジョンは記憶の中に潜入するセッションを行うが、彼が見たものは、《継父からの虐待》《実母に傷付けられた掌の傷》《継父とメイドの不倫》《教師による性的虐待》《級友の殺人未遂》という信じられないものばかりだった。
 セッションを続けていくうちにアナはジョンに心を開くようになり、食事も摂るようになった。しかし、喜ぶのも束の間、アナの面倒を見ている不倫疑惑のメイドが階段から落ち大ケガをする。継父はアナが彼女を突き飛ばしたというが、アナはやったのは継父だと猛反論「継父は財産目当てで母と結婚し、相続に邪魔な私を施設に入れたがっているの!」。
 ジョンはアナの記憶の裏を取るために、直接関係者に当たるが、出てくる事実はアナの記憶と反することばかり。自分の見たアナの記憶は事実なのか。それとも彼女の作った妄想なのか? ジョンは大きな壁にぶち当たる。そんな時、何者かが自分を尾行しているのに気付く。

 監督のホルヘ・ドラドはスペイン人。ロケもスペインで行われ、怪しいムード作りに一役買っている。また時計、バラ、メトロノーム、そろばん、螺旋階段、鍵、肖像画など小道具がさりげなく、かつ意味ありげに使われている。スクリーンから目が離せない。

 今作で初の主演を務めるマーク・ストロング。ギョロっとした目が市川海老蔵を思い起こす。『シャーロック・ホームズ』や『キック・アス』、『ジョン・カーター』で主人公の敵を演じてきたので、めっきり悪役づいているが、ここでは、美少女に言い寄られ、翻弄される中年紳士を演じている。シュッとした立ち姿や堀の深い表情から、その落差は見てて楽しい。

 その中年紳士を掌の上でもてあそぶアナ役タイッサ・ファーミガはこれまで大きな役といえば『ブリングリング』で、セレブ宅に侵入する女の子グループのひとり。しかしここでは、得体のつかめない美少女をミステリアスに演じている。透明感もあるし今後出演作を経るごとに、オスカー候補にもなった姉のヴェラ・ファーミガのようないい女優になりそうだ。

 今見ているものは現実なのか、それともアナの記憶の中なのか、それともまた別のものか・・・。この【また別のもの】の存在がこの映画のキーポイントである。これをいち早く感じると、この映画の謎が解ける。先ほど小道具の話をしたが、特に時計。やたら聞こえる秒針の時を刻む音に注目して観てみる、意外に謎解きが早くできるかも。
 

☆『記憶探偵と鍵のかかった少女』2014年9月27日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー〈PG12〉
配給:アスミック・エース
Stills photographs by Quim Vives - Copyright © 2013 OMBRA FILMS, S.L. - ANTENA 3 FILMS, S.L.U. - MINDSCAPE PRODUCTIONS, S.L. - THE SAFRAN COMPANY - OMBRA FILMS, LLC.