芸能デスックリーン

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション  The Expendables 3 2014.10.27

 新旧のアクションスターが勢揃いしてチームを組み、むちゃくちゃ大暴れをする人気シリーズの第3弾。スタローン、シュワちゃん、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレンの常連はもちろん、新顔のメル・ギブソン、アントニオ・バンデラス、ウェズリー・スナイプス、さらにはハリソン・フォードまで引っ張り出せたのは、このシリーズが成功しているのと、脚本も担当したスタローンの人望だろう。

 今回もそれぞれのスターの見せ所をちゃんと用意して、相変わらずの派手なアクション、爆破、カースタントを見せてくれる。ストーリーなんて毎回同じ。CIAが持ってきたミッションをバーニー・ロス(スタローン)率いる自ら“消耗品(エクスペンダブルズ)”と呼ぶ傭兵チームが解決していく。今回の敵は、バーニーと共にエクスペンダブルズを作った盟友でありながら、チームを裏切りダークサイドに落ちていったストーンバンクス(メル・ギブソン)。一度はこの最強の敵ストーンバンクスに仲間を殺されかけたバーニーは、すでに若くはないメンバーたちにチーム解散を告げる。そして若く有望な傭兵をスカウトし新生エクスペンダブルズを結成し、ストーンバンクスに立ち向かう。しかしそれは旧メンバーの不満を買うことに。そこにCIAエージェント、ドラマー(ハリソン・フォード)からストーンバンクスがブカレストで武器売買を行う事を聞く。新生エクスペンダブルズはこれまでのメンバーにはできなかったIT戦術を駆使しそれなりの活躍はするが、如何せん経験が少ない。バーニー以外は捕獲される。「まだまだ若い者には任せられん」と
、旧メンバーが立ち上がる。

 これまでミッションをエクスペンダブルズに与えるのは、ブルース・ウィリス演じるCIAのチャーチだったが、出演料の折り合いがつかず“3”を降板してしまった。その時スタローンはウィリスを「欲が不悪で怠惰なヤツだ」とツィッターで批判したことから不仲説が浮上(のちに“言い過ぎた”と謝罪)。そのかわりの出演したのがハリソンだと言われている。またウィズリー・スナイプスは“1”から出演するはずだったが、収監されて実現されなかったが、刑が解け晴れてエクスペンダブルズのメンバーに。役の仲でも「脱税で刑務所に入っていた」とセルフパロディをして笑いを取る。また、2作目まで大活躍していたジェット・リーは甲状腺疾患のためか出番は少なく、役どころではシュワちゃん演じるトレンチが率いる別の傭兵チームに参加していることになっている。トレンチとリー演じるイン・ヤンの掛け合いのシーンから「二人はゲイなのでは」と言う噂も立っているとか。

 すでに4作目の構想も上がっているこのシリーズ、あの007俳優ピアーズ・ブロスナンの名も上がっている。そんな中、毎回出演の噂があるスティーヴン・セガールは絶対出ないと宣言している。まさかパトロールで忙しいからではないだろうが(彼は保安官でもある)、ネットの記事によると、嫌いな人が出ているからとか。出演が実現したらマジバトルが観られるかも知れない。
 また女性版エクスペンダブルズの構想もあるらしい。『エクスペンダベルズ(ExpendaBelles)』と名付けられたこの企画、出演者がこれまだ豪華。メリル・ストリープ、キャメロン・ディアス、ミラ・ジョヴォヴィッチ、シガニー・ウィーバーの名前が上がっている。

 アベンジャーズ並みに世界が広がっていくエクスペンダブルズ・シリーズ。楽しみは尽きない。
 

☆『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』2014年11月1日(土)より全国ロードショー
配給:松竹/ポニーキャニオン
© EX3 Productions, Inc. All Rights Reserved.

誰よりも狙われた男  A Most Wanted Man 2014.10.15

 今年2月2日、ニューヨークの自宅で死んでいるのを発見されたフィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作品。元MI6という異色の経歴を持つ作家ジョン・ル・カレの同名スパイ小説の映像化である。

 9.11のテロ攻撃から10年以上経ったドイツ・ハンブルグ。この街は9.11の主犯、モハメッド・アタらがテロ計画を練った場所で、テロ対策班は特に神経質になっている。テロ対策チームを指揮するバッハマン(ホフマン)は密入国した青年イッサ(グレゴリー・ドブリギン)に目を付ける。彼はイスラム過激派として国際指名手配とされている男だ。バッハマンは彼を泳がし、やがて接触するだろうさらなる大物の足を掴もうとしていた。しかしイッサを狙っている者はバッハマンだけではない。ドイツの諜報機関である憲法擁護庁(OPC)の支局長モア(ライナー・ボック)は、イッサは超危険人物で即刻捕らえるべきと考える男。2人の意見は反発し合うが、アメリカCIAベルリン支局のサリヴァン(ロビン・ライト)はバッハマンの意見を尊重、72時間以内に結果を出すよう命じる。当のイッサは知り合ったトルコ人母子の家に匿われる。その母子は人権派弁護士リヒター(レイチェル・マクアダムス)を紹介されたイッサは、密入国の理由は旧ソ連の将校だった父の莫大な遺産の引き落としだと告白する。そのお金は父の悪事で貯めたもの、自分は一銭も欲しくない。どこか有効に使えればと思っていたのだ。早速リヒターは銀行家のブルー(ウィレム・デフォー)と接触。その直後バッハマンもブルーに会い、弱みにつけ込み協力を求める。実はバッハマンはイスラム派学者アブドゥラ博士に目を付けていた。慈善事業を手広くやっているが、その裏でテロ組織の資金を調達しているのでは…と睨んでいたのだ。イッサの金がアブドゥラに渡り、それがテロ組織に届けば一気に検挙できると。計画はバッハマンの思い道理に運んでいったが・・・。

 ル・カレ作品の映画化は少なくない。『ナイロビの蜂』や『テイラー・オブ・パナマ』など、最近では『裏切りのサーカス』もそう。この『裏切りのサーカス』の理解不能さから今作も「??」となることを恐れたが、気を張って観ればそう難しい映画ではなかった。ただスパイ映画だからって『007』や『ミッション・インポッシブル』のようにダンディで超人的な諜報部員も出てこないし、派手な銃撃戦やカーアクションもない。あるのは監視、盗撮、誘拐、尾行、脅迫など地味だがリアルな情報戦。作戦成功のためにここまでやるの?という恐ろしさだ。ただリアルさを追求するなら、ドイツ人役をすべてアメリカ人が演じているのはいかがなものか。出てくる会話はほとんど英語だし。ま仕方ないか。

 マクアダムスやデフォーなど芸達者な役者が揃っているが、なんと言ってもフィリップ・シーモア・ホフマンの演技の濃さは特筆。私は5年前の『ダウト あるカトリック学校で』の演技にKOさせられた。神父のホフマンとメリル・ストリープ演じるシスターの演技合戦は、あの大女優に一歩も引けを足らなかった。

 名優といえば、誰もがロバート・デニーロを挙げるかも知れない。確かに役によって身体を作り替えるいわゆる“デニーロ・アプローチ”で、その役になりきってしまうデニーロは凄い。でもホフマンはいつものメタボ、髭面で役を演じる。役柄を強引に自分に合わせてしまう。デニーロとは逆のアプローチだ。『誰よりも狙われた男』でも片時も煙草は離さず、仕事中でも酒をあおるチームリーダーを演じている。普段のホフマンもそうなんだろうと感じ、それが死期を早めたのではと考えてしまう。ラストのホフマンの怒りと屈辱に見舞われた表情には死相が表れていた。

 主演のホフマンの作品を観られるのはこれが最後だが、脇役で出演したのはあと1本ある。『The Hunger Games: Mockingjay』ハンガー・ゲームの3作目だ(厳密に言えばこの作品は前後編分けて公開するので後2本となるが)。来年公開だが、もう名演が観られなくなると思うとやはり寂しい。


☆『誰よりも狙われた男』2014年10月17日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:プレシディオ
© A Most Wanted Man Limited / Amusement Park Film GmbH © Kerry Brown

イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所  If I Stay 2014.10.06

 『キック・アス』で街を守るスーパーレディ「ヒットガール」を演じ、『モールス』では少年に想いを寄せるヴァンパイア、『キャリー』では血塗られた零能力者・・・。毎回特異な役柄が回ってくる若き女優クロエ・グレース・モレッツ。なんと今回はラブストーリーの主役、ようやく普通のティーンエイジャーの役である。

 オレゴン州のとある街。ロックバンドのドラマーの父とそのグルーピーの母、弟もイギー・ポップ大好きというパンクな家庭に生まれたミア(クロエ)は、意外にもチェロの才能を持ち、クラシック音楽の道に進むようになった。高校生になったミアはチェロにしか興味はなく、家庭でも学校でもチェロを片時も離さなかった。学校の人気者でロックバンド“Willamette Stone”のギター/ボーカルでもあるアダム(ジェレミー・ブラックリー)は通りかかった音楽室の中からチェロの流麗な旋律を耳にし、弾き手であるミアに一目惚れ、オクテであるミアに告白し、2人の交際が始まる。ミアの夢はNYのジュリアード音楽院でチェロを学ぶことだった。しかしそれはオレゴンの街でバンドを成功させたいと思うアダムと離ればなれになる事を意味する。ミアはジュリアードの最終選考まで残り、明日にも届くであろう合格通知を待っていた。気晴らしのため雪山にドライブに出かけたミア一家だったが、道中対向車と正面衝突をする。事故から“目を覚ました”ミアは道路に投げ出された父や母を見て動転する。しかし、さらに血だらけで倒れている自分の姿を見る。「私も死ぬかも知れないんだ…」。ミアは幽体離脱して生死を彷徨っていたのだ。やっぱりクロエは普通のティーンエイジャーは演じない。でも、このスーパー・ナチュラルな展開は物語の付け足しでしかない。ここから、ミアは家族全員なくなってしまい孤児としてでも生きる(Stay)か、両親や弟を追って来世で暮らす(Go)かの二者選択を余儀なくされる。幸せだったこれまでの半生がフラッシュバックのように脳裏をかすめる。

 普通なら生き返る“Stay”を選択するのは当然だと思うが、“Go”を選ぶ材料もいくつもあった。孤児で生きていくのはきびしい。これまでパンキッシュで型破りだったとは言え、両親の愛情はたっぷり受けていたから。その愛を受けられなくなった今、生きていて幸せか? またアダムに黙ってジュリアード音楽院を受験したことでアダムとは疎遠になっていたことも生に未練を残すことのない理由のひとつだ。アダムと離れて暮らすのは、孤児より辛いかも知れない。

 原作はアメリカのヤングアダルト(YA)小説作家ゲイル・フォアマンが2009年に発表した「ミアの選択」。アメリカではこのYA小説の映画化がヒットしている。『イフ・アイ・ステイ』に雰囲気が似ているジョン・グリーンのYA小説『The Fault In Our Stars』(さよならを待つふたりのために/日本公開未定)もアメリカで映画化され6月に公開された『マレフィセント』を抜いて初登場1位。もちろん『ハンガーゲーム』や『トワイライト』も大ヒット。そしてこの『イフ・アイ・ステイ』も『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と『ミュータント・タートルズ』に次ぎ3位を3週キープしている。この映画のヒットでアメリカでは原作本が売れ出しているそうだ。またその続編「Where She Went」も注目され、映画化も検討されているらしい。圧倒的に女子に人気の映画のようだが、日本の《壁ドン》に似たようにしぐさがあった。《ロッカーぎゅっ》っていうのかな。女子が開けたロッカーの扉を掴んで告る…。映画の前半でアダムがミアにやったシチュエーション。ティーン・ムービーではよく見るシーンである。ミアはかなり奥手に描かれているが、実際のクロエはあのベッカムの長男ブルックリン君といい仲になって、あちこち2ショットで出回っているらしい。映画とはかなり違う。

 “幽体離脱”したミアはその姿はこの世の人間には見えないし、喋る言葉も聞こえないことになっている。壁も通り抜けられないし、行きたい場所には徒歩で行く。但し、魂の抜けた身体の五感は離れた魂に届いている。というのがこの映画の幽体離脱の設定。でも、見えないはずのミアに影はあるし、すれ違う人は何かちょっとよけて歩く。ま、いいか。

 誰にも見えない疎外感は、生前にもあった。高校ではロックやポップス、ヒップホップが全盛のこの時期、ひとりクラシックに打ち込んでいたミアは、アダムのライブに行っても浮きまくり。打ち上げでも会話にもついていけない。そんなもどかしさが生死を彷徨っている時にもあるのは皮肉だ。

 “音楽の素晴らしさ”というのもこの映画の通奏低音にあり、ミアとアダム、やっている音楽はパンクとクラシック、水と油のようだが、音楽によってこの2人は繋がり、音楽によってお互いを尊敬し合っている。運指やボウの使い方など見事な演奏シーンはおそらく吹き替えだろうが、曲調にピッタリ合って違和感なし。ガーデン・パーティーでミアのチェロ、アダムのアコギでThe Smashing Pumpkinsの「Today」をセッションするシーンがあるが、意外にこの2つの楽器の音色が合う。でも、チェロって弾き方が色っぽくない。幅40cm以上はあるボディを両脚で挟んで固定して弾く。股が大開きになるのだ。だから女性チェロリストはパンツかロングスカート姿が多い。「101回目のプロポーズ」の浅野温子もロングスカートだったっけ。ミアのように膝丈のスカートで弾く女性は見たことがない。

 病室のベッドで横になっているミアの耳元に祖父が囁く。父親がバンドをやめた理由、ミアにチェロを買ってあげた秘密、そして「愛には犠牲がつきもの」…。ミアの最終選択はこの一言で決まったのでした。


☆『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』2014年10月11日(土)より新宿バルト9、梅田ブルク7他全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2014 Warner Bros. Ent. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights Reserved.

アンダー・ザ・スキン 種の捕食  Under the Skin 2014.10.01


 
分離独立でゆれたスコットランドを舞台にした異色のSF映画。主演のスカーレット・ヨハンソンが初のフルヌードで挑んだことでも話題になっている。

 グラスゴーの労働階級の街に一台のおんぼろバンが走る。運転しているのはそのバンには不釣り合いな美貌の女性(スカヨハ)。その“女”は道の迷ったふりをして、何人もの若い男性に話しかける。そして独り者の男性を見つけては誘惑し、服を一枚一枚脱ぎ捨てては男にセックスの予感を感じさせる。そして漆黒の沼におびき寄せ、男はふらふらとその沼の中に身を落とす。沈んだ男は皮膚一枚を残しすべてを抜き取られる。

 監督のジョナサン・グレイザーは、ジャミロクワイやレディオヘッドのミュージック・ビデオを手がける映像作家。2006年にはニコール・キッドマン主演の『記憶の棘』も撮ったスタイリッシュなクリエイターである。その力はこの『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』にも遺憾なく発揮され、キューブリックの『2001年宇宙の旅』を彷彿とする冒頭3分の光と闇の映像は、この映画の感触を物語っている。さらに全編で感じられる異様な緊張感。真白の部屋や暗黒の沼など不気味だ。

 しかし、この映画は失礼に思えるほど説明がない。頭十数分間、ラストの20分間セリフがない。スカヨハも前々作『her/世界でひとつの彼女』では声だけの出演だったが、その反動か、ここでのセリフはきわめて少ない。そのスカヨハ演じる“女”の素性も、行動の理由も、“女”の回りを疾走するバイカーの正体も明らかにせず、淡々と物語が進んで行く。ミカ・レヴィの音楽も妙に神経を逆撫でする。
 でも観客はある仮定を立ててスクリーンを見つめることになる。【スカヨハ演じるこの“女”はエイリアンではないか?】【彼らは“女”が捕らえた人間をエサにして生きているのでは?】。素の“女”は感情を押し殺し無表情だが、ひとたび男を誘惑する時の顔はとろけるような笑みでたぶらかす。

 何人もの男の誘拐に成功した“女”は、ある日重い皮膚病で顔面が崩壊している男性と出会ったことで、慈悲の感情が芽生え、人間を理解しようとする。食べられないケーキを食べては嘔吐してしまうし、“本当”のセックスをしようとしては、驚き自らの股を覗き込んでしまう。しかし皮膚病男を逃がしてから、捕獲をすることは一度もなくなった。バンを乗り捨て、自分の生きる道を模索するように森の中へ入っていくが・・・。

 冒頭でも言ったが、スカヨハのフルヌードが艶めかしい。モデルのようにスタイル抜群…とは言わないが、意外とふくよかな肢体は、捕獲された男たちの残念な裸と比べれば、十分色っぽい。最後の最後、「そこまで脱ぐか!」と叫びたくなるまでの脱ぎっぷり。是非スクリーンでご確認を。


☆『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』2014年10月4日(土)より新宿バルト9のか全国ロードショー〈R15+〉
配給:ファインフィルムズ
© Seventh Kingdom Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2014