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インターステラー  Interstellar 2014.11.18

 このところのSF映画、特に近未来を描くSF映画を観ると、かならず《地球崩壊》、《人類滅亡》が大前提にある。その理由として、隕石がぶつかってくる、未知の病原菌が蔓延する、未曾有の天変地異、エイリアンの襲来…。ま、最後にはいつも助かるのだが。

 そしてこの『インターステラー』も終末モノ。今回は何が地球を襲うのか? 長年に続く大規模な砂嵐だ。太陽の光は地表に届かず、畑は全滅、窓を開けようものなら一瞬にして砂まみれ。砂埃のため子供たちは肺をやられ、いつもゴホンゴホン。政府は食糧維持を最優先にし、これまで盛んに行われていた宇宙開発は隅に追いやられる。宇宙に目を向ける暇があったら食い物のを探せ、という訳だ。

 今回の主人公クーパーも元はNASAの優秀な宇宙飛行士。しかし今はそんな仕事もなく、別れた妻との子、トムとマーフを育てるため農夫としてトウモロコシを栽培している。このマーフという10歳の娘は感受性が鋭く、彼女の勘でとある秘密のプロジェクトを発見してしまう。そこはブランド博士とその娘アメリア博士が率いるプロジェクトで、残り少ない寿命の地球を捨て、他の惑星に人類をそっくり移動してしまおうという壮大な計画を立てていた。実は数年前に3人の宇宙飛行士が人間の住むことができる星をめざし飛んでいった。しかし消息を絶っており、その結果が知りたい。そんじゃあクーパー君、娘アメリアと一緒にどの星が移住可能か見てきて欲しいとムチャぶりをする。

 何十光年離れた惑星にまともにいったら戻って来た時には地球はない。ブランド博士は土星の近くにワープ可能な“ワームホール”があり、それをくぐれば時間の節約ができることを見出す。ただそこは時間が歪んでおり、飛行船の中では数時間の出来事も、地球では何十年も経過してしまう。少しのミス、時間のロスをしただけで、命取りになる訳だ。ブランド博士は言う「君の娘さんの時代で地球は終わる」。新しい宇宙飛行士が育っていない今、自分がやるしかないと使命感に燃える一方、大事な我が子を置き去りにしなければならないという葛藤に悩ませられる。たとえ無事に帰還できたとしても、時間観念が異なる宇宙では、父と子の年齢逆転もあり得る。今を大事にして娘と過ごすか。それとも娘の将来のために旅立つか? 究極の選択…。そう。この映画は“SF”という衣を着た親子の愛情物語なのだ。

 そしてクーパーが選択したのは娘の将来。「必ず還ってくる」と言い残し宇宙に旅立つ…。


 観てすぐ『2001年 宇宙の旅』のクリストファー・ノーラン監督流の解釈だと分かる。それに『フィールド・オブ・ドリーム』や『アルマゲドン』、『ゼロ・グラビティ』を掛け合わせたみたい。そういうとかなり安っぽく見えるけど、映画自体はノーラン節が効いてて難解かつ深い。

 製作に「ブラックホールと時空の歪み アインシュタインのとんでもない遺産」の著者、理論物理学者のキップ・ソーンが入っているため、宇宙の構造は最新の理論に基づいている。特にブラックホールはただ暗いだけではなく、その回りに光の渦がまつわりついている。ノーラン監督がキップ・ソーンに宇宙理論の教えを伺っている映像を見たことがあるが、映画を観ると随所にソーンの理論が活かされていることが分かる。

 一緒に宇宙飛行艇に乗り込むTARS、KIPP、CASEなるロボットが面白い。金属で出来た木工細工人形とでも言おうか。ユーモラスな動きが緊張感が続く映像を和ませる。ノーランと言えば『インセプション』の街がめくれ上がる映像が印象的だが、今作でもめくれ上がるのがつくづく好きなんだなあと思えるか所が数か所ある。巨大な津波が襲ってくるシーン、雲も凍り付き天空にも土地があるような惑星、チューブの中にいるようなスペースコロニー。ノーランの頭の中はどうなっているのだろうか?
 
 最後はあっと言う仕掛けを用意して終わる。物語の頭と繋がるのだ。詳しくは言えないが、この着地点はもうミラクル。こんなところがノーラン好きの頬を緩ませるのだろう。またノーランといえばJ.J.エイブラムと並ぶフィルム主義者。J.J.も今撮影中の『スター・ウォーズ・エピソード7(原題:Star Wars: The Force Awakens)』もフィルムで撮っているというし、この『インターステラー』もノーランはフィルム撮影にこだわった。デジタルを使えばCG処理やVFXも楽だろうが、ノーランはCGすら極力使用しない方式をとった。そこが近未来を舞台にしていながら温かみのある映像美が出せた。

 『インセプション』では人間の意識の中に入ってもがく話だったが、この『インターステラー』は逆に“宇宙”という外に向かって真理を求める物語。“内”から“外”。それがノーランの言いたかったことなのか?
 

☆『インターステラー』2014年11月22日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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