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ジャッジ 裁かれる判事  The Judge 2015.01.19

 2年連続でフォーブス誌の「最も稼いだ俳優」ランキング1位に輝いたロバート・ダウニー・Jr.の最新主演作。もちろんこの記録は大ヒット作『アベンジャーズ』『アイアンマン』シリーズのお陰で、この作品のせいではない。しかしアーマードを身につけていない、現実的な人物を描いたこの『ジャッジ 裁かれる判事』の主人公、ハンク・パーマーこそがロバート・ダウニー・Jr.の最も演じたかった役だったのだろう。彼と奥さんのスーザン・ダウニーが立ち上げた製作会社「チーム・ダウニー」の記念すべき第1作目がこの作品である事もその裏付けになる。

 金を積めばどんな胡散臭い被告でも無罪を勝ち取るシカゴの辣腕弁護士ハンク・パーマー。ある日裁判中に母の訃報が飛び込む。久しぶりに実家のあるインディアナ州の田舎町に帰るが、そこで疎遠だった父ジョセフ(ロバート・デュバル)の重大な事実を知る。ジョセフはこの町で絶大なる信頼を寄せられている判事だ。そのジョセフに殺人の容疑がかかっているというのだ。ジョセフはハンクにとって最も苦手な人物。絶縁状態が長年続いている。しかし42年間この街の正義のために働いてきた父が殺人を犯すはずがない。そう信じて弁護に立つことになったが、弁護内容の意見がことごとく食い違う2人。さらに次々と出されるジョセフの不利となる証拠品。ハンクはこのピンチをどう切り抜けるか・・・?

 ハンクの役どころは、信念は熱いがどこかやんちゃ坊主の雰囲気が抜けない弁護士。これはロバート・ダウニー・Jr.の最も得意とする人物像で、これまで演じてきたシャーロック・ホームズにしても、アイアンマン(=トニー・スターク)にしても同じだ。そのどこか憎めない性格が、アイアンマンやシャーロック・ホームズを親近感湧くヒーローに仕立て上げられた。だが本作で大きく違うのは、生身の人間を演じきっているところ。ハンクは仕事面では大成功を収めても、プライベートではその仕事のせいで家庭を顧みず離婚が決定的になっていたり、知恵遅れの弟デールの面倒を長男グレンに押しつけてる後ろめたさ、浮気相手に子供が出来ていた・・・など多くの困難を抱えている。そんな深刻な悩みを持つハンクをロバート・ダウニー・Jr.が演じることによって、ライトな感覚で観ることができる。

 そしてもうひとりの“ロバート”、ジョセフ役のロバート・デュバルの熱演。白か黒か最後まで分からせない計算された演技、意識はしっかりしているが身体はついていかないという老人特有のもどかしさ、そして、息子に弁護を頼むが主導権は譲らない頑固さ。アカデミー賞助演男優賞ノミネートも当然という迫真の演技だ。

 父は息子にとって越えなければならない大きな壁である。しかしそれは“敵”ではない。越えられた父はむしろうれしいはずだ。ジョセフはハンクにこの最難の裁判という壁で力を試してみたかったのかも知れない。お互い目指す方向は一緒なのに、かみあわない弁護内容。その理由が後々分かっていく筋書き。「めでたしめでたし」で終わらないのもこの映画のいいところでもある。
 

☆『ジャッジ 裁かれる判事』2015年1月17日(土)より新宿ピカデリー他全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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