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ジュピター  Jupiter Ascending 2015.03.23

 前作はトム・ティクヴァ監督との共作だったから、ウォシャウスキー姉弟単独監督作は2008年の『スピード・レーサー』以来となる。またオリジナル作品としては『マトリックス』3部作以来だから12年ぶりだ。その『マトリックス』のように革新的な映像を期待して観るとちょっとがっかりするし、壮大な輪廻転生をテーマにした『クラウド アトラス』のような物語性もない。かといって駄作かと言えばそうでもなく、SFやスペースオペラが好きな人はかなり興味を持って観られるだろう。

 父の影響で星を見ることが好きな女性ジュピター(ミラ・クニス)。ただ生活は貧しく、家政婦として質素に暮らしていた。しかしケイン(チャニング・テイタム)の出現でジュピターの人生は激変する。ケインは遺伝子操作されて戦いに勝つためだけに作られたハンター。彼はジュピターを守るために現れ、こう語る「宇宙で最も権威のあるアブラサクス王朝の女王が亡くなった。あなたは女王と同じ遺伝子を持つ女性、すなわち生まれ変わりである」。
 宇宙は今、女王の子供3人、バレム(エディ・レッドメイン)、タイタス(ダグラス・ブース)、カリーク(タペンス・ミドルトン)が継承を巡って争いを始めている。そんな中、女王の生まれ変わりのジュピターが存在することは、跡を彼女が引き継ぐことになる。せっかくのチャンスを潰されたくないバレムはジュピターを殺そうと地球にヒットマンを送り込むし、リークはケインを送り込みジュピターの護衛をさせ味方に引き込もうとする。その争いは地球を越え遥か宇宙にまで拡大する。

 なんと言っても見どころは、ウォシャウスキー姉弟の独創性。宇宙船や異星人のスタイル、居住地。メカなど、始めて目にするようなデザイン。たとえば、戦闘機は翼が本体にくっついてない。そんなセオリーをぶち破るアイディアは常人には浮かばない。さらにケインとヒットマンとのバトルシーンも目が離せない。シカゴの路地裏でわりと小規模ではあるが、スピーディーな撃ち合いから始まり、次はシカゴの街全体を崩壊させるような迫力ある戦闘、そして宇宙を巻き込んでのVFXオンパレードの大バトル。それがウォシャウスキー姉弟初の3D映像で繰り広げられるので堪らない。

 そしてもう一つはオスカー俳優エディ・レッドメインの冷酷な悪役ぶり。実はこの映画、当初全米公開を去年の夏に予定していたが、特殊効果に磨きをかけたいという理由で今年2月になった。エディの『博士と彼女のセオリー』よりも先に撮影していたのだ。もちろん、バレム役はホーキングとは全く違うテンションでこなしているが、何言ってる聞こえないぐらいのぼそぼそ声と時折見せるヒステリックな怒鳴り声を使い分け、得体の知れない悪役を生みだしている。ただ、見かけ同様全然強くないのもいい。

 お茶目な設定も興味深い。ジュピターが“女王”らしい振る舞いを見せるのが、ハチを自由に操れるところ。ハチは女王を見分ける嗅覚があるからと言うが・・・。また宇宙船が停まった後にはミステリーサークルが出来てるし、王位を継承する手続きが、書類をあちこちに提出して判子もらって次の窓口へと言うような役所のたらい回しだったり。

 この映画を観て何かを得たりする、勘当して涙を流すなんてことは皆無。同じ宇宙を扱う映画でも『インターステラー』ほど全然小難しくはないし、ワクワクして単純に「面白かった」と言える映画です。


☆『ジュピター』2015年3月28日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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