2010年 12月22日 水曜日放送 - ランキング探偵団2010年ベストセラーランキング

2010年ベストセラーランキング

今週のテーマは2010年本の売り上げランキング。本の売れ行きを見ればその時代が見えてくる。

今年の傾向をオリコンの葛城さんは語る。
葛城さん「小説は実はあまりよくなくて、Top30内には3冊ぐらいしか入っていない状況です」

そう、Top10に限って見ると、小説は3位の村上春樹さんの『1Q84』のみ。

葛城さん「実用性のあるものがストレートにヒットにつながっていると思います」

Top10の中で付録付き商品や実用書など実用的な商品が5つもランキングする結果になった。
中でも年間50万6千部を売り上げた第7位の『スッキリ美顔ローラー』にいたっては書店で売られているのにもかかわらず本がついていない。書店に置く事で、普段美容ショップに足を運ばない様々なターゲット層の獲得を狙ったのが大成功。

そのほか、各社いろいろなアイディアを駆使し、出版不況の中、実用書、実用品がベストセラーに輝いた。

さらに今年の時代を顕著に表したあるキーワードだあると言う。
葛城さん「今やっぱり求められているのは、その中に温もりとか励ましの言葉がある」

それがこちらの2作品。5位の『超訳ニーチェの言葉』と『くじけないで』



まず第8位、年間48万8千部を売り上げた『くじけないで』は御年99歳の柴田トヨさんの詩集

柴田さんは息子さんの勧めで92歳から書き始めた詩を1冊にまとめた。
葛城さん「92歳で詩を書き始めて何か始めるのに決して年齢は関係ないんだよって言う、すごい励ましになったんだと思うんです」

その人気は留まるところを知らず、カレンダーや朗読DVDまで発売。

「ねえ 不幸だなんて溜池をつかないで 陽射しやそよ風はえこひいきしない

夢は平等に見られるのよ 私 辛いことがあったけれど生きていてよかった

あなたもきっとくじけずに」
人生に迷った時に前向きに生きるトヨさんに姿を見て多くの人が励まされていたのだ。
続いて5位、年間薬1万6千部を売り上げた『超訳ニーチェの言葉』。人々はここにも励ましの言葉を求めていた。

ニーチェは19世紀に生きた哲学者で生きることに前向きに向き合う哲学を提唱した。私たちの生活に密着した文章が多く、「自己を越えろ」というニーチェの思想は様々な時代に人生の指針とされてきた。
とはいえ、これまでは文章が難しすぎて受け入れられなかった哲学書。しかし編集部にはある戦略があった。
藤田編集長「“超訳”ということにしました」

超訳とは難解な言い回しを、語り口調で分かりやすく表現し直したもの。
藤田編集長「ニーチェの本当の精神、本当の考えとか、もともとのスタイルは崩していない忠実だと思います」

それでは読み比べてみよう。
まず、従来のものから

「愛の治療法 相変わらず大ていの場合 愛にはあの古い荒療治が効く 愛し返すことである」

と、街の若い女性は意味を把握できないようだ。
これが超訳になると…

「愛をめぐるさまざまな問題で悩んでいるのなら たった一つの確実な治療法がある。それは自分からもっと多く、もっと広く、もっと暖かく、そしていっそう強くあいしてあげることだ」

若い女性もこちらを圧倒的に支持。こうして難解な言葉を優しい言葉に噛み砕く事によって、混沌とした世界に生きる、迷える人達に救いの手を差し伸べたのだ。
そう、この『超訳ニーチェの言葉』には、今年のベストセラーのもう一つのキーワードが隠れている。それが…

『超訳ニーチェの言葉』は難しいことを分かりやすく“噛み砕く”ことで多くの読者をひきつけた。“わかりやすく”といえば、今年ブレークした池上彰さん。著書も第6位に年間54万8千部を売り上げた『伝える力「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える!』。そして圏外ながら『知らないと恥をかく世界の大問題』が11位に。

難解なものをとにかく分かりやすく噛み砕く。そんな池上さんのスタイルが多くの人々の共感を得たのだ。
そして栄えある第1位。こちらも“噛み砕く”ことでヒットした1冊。

年間約121万1千部を売り上げた『もし高校野球部のマネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、通称『もしドラ』。著者の岩崎夏海さんはこう語る。


岩崎さん「200万部売れると予測の元で書く前から思っていました」
『もしドラ』とは、都立高校の弱小野球部のマネージャーとなった川島みなみが勘違いから手にした経営の神様、ドラッカーの「マネジメント」に胸を打たれ、まとまりのなかった野球部を「マネジメント」の力でまとめ上げ、甲子園を目指す青春小説ビジネス書

ドラッカーは1929年の世界大恐慌を目の当たりにし、失業者を減らすにはどうすればいいかを分析し、失業者にやりがいと生きがいを出させる「マネジメント」の極意を提唱。その後1974年に経営の教科書といえる『マネジメント』を書き上げた。

そんなドラッカーの理論は、派遣切りや大量解雇、就職不安など、居場所のない人達の多い今の時代にマッチした。
それにしてもなぜ、ドラッカーと高校野球を組み合わせたのだろうか?
岩崎さん「どうしても経営学の本は堅苦しいですね。そういうのをなんとか打破しようと思った」

さらに今をときめくAKB48の峰岸みなみさんがモデルとなった事もその人気を後押ししたようだ。
『もしドラ』の愛読者でスポーツジムのインストラクターを務めるこちらの女性は…
インストラクター「問題を抱えている生徒が多いので、ひとりひとりに歩み寄るアプローチの仕方だったりとか、それぞれの性格を分析したりとか」

『真のマーケティングは顧客からスタートする』。ドラッカーの教えを実践し顧客が何を求めているかを重要視するようになったという。

インストラクター「今までの自分のやり方だとどうしても通用しなかったことが変わった」
続いてこちらの中学生。担任の先生が『もしドラ』を読んだということだが…。
――先生は元々好き?
中学生「あまり好きじゃなかった。『もしドラ』を読んだ最近の先生は好きです。結構いろんな人と話しているからそれがあると思います」

『もしドラ』を読んで顧客である生徒の心をつかむことに成功したのだろうか?
この『もしドラ』の大ヒットにより元となった『マネジメント』も注目を集め売上部数ランキング16位にランクイン。

さらに『もしドラ』のように経営学+青春小説というスタイルが出版界に旋風を巻き起こし、今年後半同様な形のビジネス本が出版された。
『金欠の高校生がパフェットから“お金持ちになる方法”を学んだら』

16歳の男子高校生が時空を飛び越え、経済史上の大事件を体験する中で、投資の神様ウォーレン・パフェットと出会い、経済の仕組みについていろいろと教えを乞うというSFチックな小説。経済の入門書としてオススメとか。
『もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら』

ふとしたきっかけで仏教と出会った新進気鋭のパンクロッカーがお釈迦様をはじめ、最澄、空海、日蓮といった歴史上の高僧たちと殴りあいながら、悟りの境地を目指すという青春物語。これ1冊で思想、哲学、歴史を学べるという全く新しいタイプの仏教入門書。
『ヘーゲルを総理大臣に!』

日本の総理大臣に哲学者ヘーゲルが就任して、貧困や就職難、今の日本で息詰まるような生活を送っている若者たちが、人生についての様々な疑問をぶつけ、論議を重ねていくという、大変ユニークな哲学入門書。