WBC世界バンタム級タイトルマッチ

  • 見どころ
  • 選手プロフィール
  • 世界戦の軌跡
  • 見どころ

    昨年8月のV13戦で4TKO負けを喫してWBC世界バンタム級王座を失った山中慎介(35=帝拳)が、雪辱と王座返り咲きを狙って現王者のルイス・ネリ(23=メキシコ)と拳を交える。サウスポーのハードパンチャー同士の一戦はKO決着が濃厚だ。筋書きのないリング上のドラマの結末はリピート(返り討ち)なのか、それともリベンジ(復讐)なのか。

    両者の初戦は山中が高校時代を過ごした京都が舞台(島津アリーナ)だったが、ネリの完勝といってもいい内容で新王者誕生となった。山中は右ジャブと足で距離とタイミングをつくろうとしたが、若く勢いのあるネリが積極的にプレッシャーをかけて出たため、必然的に両者は中間距離でパンチを交換することになった。ラウンドを重ねるごとにネリの圧力は強くなり、巻き込まれた山中は腰高になってしまった。切り札の左ストレートはタイミングが合わず、打っても上滑りしてしまい、挑戦者の前進を止められなかった。そんななか、4回に連打を浴びせたネリが一気に回転を上げて襲いかかり、左ストレートでV12王者を腰砕けにさせた。さらに猛然とラッシュ。山中がロープを背に防戦にまわったところでセコンドがタオルを投入、ネリの4回TKO勝ちとなった。 こうしてベルトはメキシコに渡ったわけだが、後日、ネリのドーピング違反が発覚。結局、調査したWBCが「意図的に禁止薬物(ジルパテロール)を摂取したとは断定できない」との結論を出し、山中との再戦をネリに課すことで着地点を見つけた経緯がある。

    リング上の勝負にリング外のトラブルが加わったことで、両者のリマッチは因縁の色が濃くなっている。ネリは今回の再戦で自分が文句のない世界王者であることをアピールする必要があり、山中は王座を奪回して前戦が偶発的な“事故”だったことを証明したいところだ。

    25戦全勝(19KO)のネリ、30戦27勝(19KO)1敗2分の山中は、ともにサウスポーの強打者という括りに入るが、力を発揮する距離や戦い方は異なる。ネリは低い構えからプレッシャーをかけて出て回転の速い連打で倒す、あるいはストップに持ち込む好戦的なタイプだが、山中は右ジャブと足で距離とタイミングをつくっておいて切り札の「ゴッドレフト(神の左)」で仕留めるスタイルを確立している。ネリが中近距離で持ち味を発揮する連打型なら、山中は中長距離から長槍を突くタイプといえる。

    4回TKOという短い勝負ではあったが、両者は6ヵ月半前に拳を交えており互いに手の内は分かっている。この間の変化を挙げるとしたらネリがノンタイトル戦で当時同8位のアーサー・ビジャヌエバ(フィリピン)に6回TKO勝ちを収めたことか。渦中での試合ということで重圧がかかったものと思われるが、ネリは実力を示したことになる。ただ、4回に攻めて出たところに右を浴びて軽いダウンを喫しており、長所と短所の両方が出た試合といえる。ネリは16年12月の試合でもフィニッシュを狙って出たところに被弾してダウンを喫しており、好機にガードを下げて攻め急ぐ傾向がある。山中陣営とすれば、仮に窮地に陥ったとしてもそこから巻き返すチャンスが十分にあるといっていいだろう。

    初戦同様、今回も距離が大きなカギになりそうだ。前回に試合について山中は「自分が止まってしまったこと、少し意地になって(打ち合って)しまったこと」を反省点として挙げている。また上体が浮いてしまったため、今回は重心を落とし気味にして戦うことを心がけるつもりだという。そのうえで自分の距離をつくれるかどうか。出てくる相手を迎え撃つだけでなく、突き放して下がらせることも必要になるだろう。

    初戦のようにネリが連打で煽る展開に持ち込めばリピート(返り討ち)が濃厚、逆に山中が自分の距離をつくって左ストレートに繋げることができればリベンジ(復讐)が見えてくる。

    ボクシング・ライター 原 功

  • 選手プロフィール

    前チャンピオンルイス・ネリ(メキシコ)

    【出身】メキシコ、バハカリフォルニア州ティファナ
    【生年月日】1994年12月12日(23歳)
    【戦績】25戦全勝(19KO)
    【スタイル】左ボクサーファイター
    【獲得王座】
      2016年4月 WBC米大陸バンタム級王座(1度防衛) 【出身】メキシコ、バハカリフォルニア州ティファナ
    【生年月日】1994年12月12日(23歳)
    【戦績】25戦全勝(19KO)
    【スタイル】左ボクサーファイター
    【獲得王座】
      2016年4月 WBC米大陸バンタム級王座(1度防衛)
      2016年12月 WBCシルバー・バンタム級王座(防衛せず返上)
      2017年8月 WBC世界バンタム級王座

    元チャンピオン同級1位 山中慎介(帝拳ジム)「神の左/GOD LEFT」

    【出身】滋賀県湖南市
    【生年月日】1982年10月11日(35歳)
    【戦績】30戦27勝(19KO)1敗2分
    【スタイル】左ボクサーファイター
    【獲得王座】
       2010年6月 日本バンタム級王座(1度防衛)
       2011年11月 WBC世界バンタム級王座(12度防衛)

  • 世界戦の軌跡

    前WBCバンタム級チャンピオン・山中慎介 世界戦の軌跡

    • 王座獲得試合

      2011年11月6日 代々木競技場第2体育館

      クリスチャン・エスキベル戦【当時同級2位】

      11回TKO勝利で、WBCバンタム級王座を獲得。

    • 1度目の防衛戦

      2012年4月6日 東京国際フォーラム

      ビック・ダルチニャン戦【当時同級4位】

      12回判定(3-0)勝ちで、WBCバンタム級・初防衛に成功。

    • 2度目の防衛戦

      2012年11月3日 ゼビオアリーナ仙台

      トマス・ロハス戦【当時同級7位】

      7回・衝撃のKO勝利で、2度目の防衛に成功。

      写真:日刊スポーツ/アフロ

    • 3度目の防衛戦

      2013年4月8日 両国国技館

      マルコム・ツニャカオ戦【当時同級1位】

      12回TKO勝利で、3度目の防衛に成功。

    • 4度目の防衛戦

      2013年8月12日 大田区総合体育館

      ホセ・ニエベス戦【当時同級8位】

      1回KO勝利で、4度目の防衛に成功。

    • 5度目の防衛戦

      2013年11月10日 両国国技館

      アルベルト・ゲバラ戦【当時同級8位】

      9回KO勝利で、5度目の防衛に成功。

      写真:ロイター/アフロ

    • 6度目の防衛戦

      2014年4月23日 大阪城ホール

      シュテファーヌ・ジャモエ戦【当時同級3位】

      9回TKO勝利で、6度目の防衛に成功。

    • 7度目の防衛戦

      2014年10月22日 代々木競技場第2体育館

      スリヤン・ソールンビサイ戦【当時同級1位】

      3度のダウンを奪い12回判定(3-0)勝利。7度目の防衛に成功。

    • 8度目の防衛戦

      2015年4月16日 大阪府立体育館第1競技場

      ディエゴ・サンティリャン戦【当時同級7位】

      7回KO勝利で、8度目の防衛に成功。

    • 9度目の防衛戦

      2015年9月22日 大田区総合体育館

      アンセルモ・モレノ戦【当時同級2位】

      12回判定(2-1)勝ちで、9度目の防衛に成功。

    • 10度目の防衛戦

      2016年3月4日 島津アリーナ京都

      リボリオ・ソリス戦【当時同級3位】

      12回判定(3-0)勝ちで、2桁防衛となる10度目の防衛に成功。

    • 11度目の防衛戦

      2016年9月16日 大阪府立体育館第1競技場

      アンセルモ・モレノ戦【当時同級1位】

      4度のダウンを奪い、7回TKO勝利。11度目の防衛に成功。

    • 12度目の防衛戦

      2017年3月2日 両国国技館

      カルロス・カールソン戦【当時同級6位】

      5度のダウンを奪い、7回TKO勝利。12度目の防衛に成功。

    • 13度目の防衛戦

      2017年8月15日 島津アリーナ京都

      ルイス・ネリ戦【当時同級1位】

      プロ初黒星となる4回TKO負けを喫し、13度目の防衛ならず。

    • W世界戦公式会見

      2018年1月5日 東京都内

      因縁の相手、ルイス・ネリとのリベンジマッチを行うと発表。

      岩佐亮佑の初防衛戦と共に両国国技館で行われる。

IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ

  • 見どころ
  • 選手プロフィール
  • 見どころ

    習志野高校時代に選抜大会、インターハイ、国体を制するなど66戦60勝(40KO)6敗のアマチュア戦績を残して18歳でプロに転向した岩佐亮佑(28=セレス)は、そのころから「世界王者になる男」として期待されていた。思いのほか遠回りをしたものの、やっと昨年9月に“予約席”についた。デビューから9年が経ち、天才サウスポーは27歳になっていた(現在は28歳)。この間、あとからデビューした井岡一翔(井岡)、井上尚弥(大橋)、田中恒成(畑中)、比嘉大吾(白井・具志堅)、拳四朗(BMB)、久保隼(真正)、山中竜也(真正)らが先に世界王座についた。6回TKO勝ちで王座を奪った相手、小國以載(角海老宝石)も追い抜いていったひとりだった。「世界チャンピオンになったことで自分のボクシング人生は始まったばかり。これで終わりにしたくはない」と岩佐は言う。

    岩佐はサウスポーのボクサーファイター型で、左ストレートや右フック、アッパーなど多彩なパンチを持っている。動きのなかで立ち位置を変えながら戦うことができるのも特徴のひとつだ。また、「Eagle Eye」の異名があるように相手のパンチを見切る勘もいい。

    反面、出世が遅れたのは試合によって好不調の波が大きかったことに加え、日本王座挑戦、初の世界王座挑戦で躓いたためでもある。特に相手国のイギリスで臨んだ15年6月のIBFバンタム級暫定王座決定戦ではダウンを喫したすえの6回TKO負けで、「一瞬、引退も頭をかすめた」(岩佐)というほどだった。そんなどん底から巻き返しての戴冠だけに、感慨深いものがあるのだろう。戦績は26戦24勝(16KO)2敗。KO率は60パーセントを超える。

    そんな岩佐に挑むエルネスト・サウロン(28=フィリピン)は10年1月のプロデビューから8年、24戦21勝(8KO)2敗1分の戦績を残している。3年前には中国の昆明でWBCインターナショナル王座を獲得したが、南アフリカ共和国で行った初防衛戦で地元選手に判定負けを喫している。負けはしたものの異国での連戦はサウロンの経験値を大きくアップさせたものと思われる。以後は3連勝を収めている。

    サウロンはスタンスを広めにとり、腰を沈めながらじわじわと圧力をかけて出てくる好戦的なタイプで、中近距離で思い切り左右フックを叩きつけてくる。スピード感に乏しく、アプローチの仕方も比較的単純だが、小細工しない分、勢いづかせたら怖い選手だ。岩佐も「独特のリズムがあり、パンチを振ってくるので危険な相手」と警戒している。KO率は33パーセントと決して高くないが、その数字以上にパンチ力はありそうだ。 王者として正面から挑戦者を迎え撃つことも策のひとつではあるが、危険度は大きく跳ね上がることになる。可動範囲の広さやスピードという利点を生かし、岩佐は右ジャブを突いて相手をコントロールする選択をした方が賢明であろう。

    ボクシング・ライター 原 功

  • 選手プロフィール

    王者 岩佐亮佑(セレス)

    【出身】千葉県柏市
    【生年月日】1989年12月26日(28歳)
    【戦績】プロ:26戦24勝(16KO)2敗
        アマチュア:66戦60勝(40 KO)6敗
    【スタイル】左ボクサーファイター
    【獲得王座】
      2011年11月日本バンタム級王座(2度防衛)
      2013年12月OPBFバンタム級王座(1度防衛)
      2017年9月IBF世界スーパーバンタム級王座

    挑戦者同級13位 エルネスト・サウロン(フィリピン)

    【出身】フィリピン、オクシデンタル・ミンドロ州
    【生年月日】1989年4月7日(28歳)
    【戦績】24戦21勝(8KO)2敗1分
    【スタイル】右ボクサーファイター
    【獲得王座】
      2015年5月 WBCインターナショナル・バンタム級王座
      (防衛せず返上)