6月10日(水)深夜2:29〜3:29

指 揮 シルヴァン・カンブルラン
管弦楽 読売日本交響楽団
司 会 古市幸子(日本テレビアナウンサー)

ラモー作曲:
歌劇〈ダルダニュス〉組曲 から
ラヴェル作曲:
組曲〈クープランの墓〉
ベルリオーズ作曲:
幻想交響曲

※2009年4月18日 東京芸術劇場にて収録

読売日響次期常任指揮者、シルヴァン・カンブルラン 番組初登場!!
2010年4月から、読売日響の第9代常任指揮者に就任する、フランス出身の巨匠シルヴァン・カンブルランさんが「深夜の音楽会」に初登場!欧米で活躍中の多忙なマエストロは、独創的なプログラミングと、現代音楽に対する深い造詣が高く評価されている。様々な歌劇場で磨き上げられたドラマティックな音楽創りは常に好評を博し、アグレッシブで力強いオーラと頼もしい存在感を併せ持ったマエストロである。
今回のプログラムは、オール・フランス・プロ。ラモー、ラヴェル、ベルリオーズ、3つの時代と3人の作曲家の組み合わせ。オーソドックスであるからこそ、マエストロ・カンブルランの優れた聴覚と卓越した指揮技術が最大限に活かされるという、大注目の演目だ。

《シルヴァン・カンブルラン インタビューI》
Q 読響常任指揮者として今後取り上げたいプログラムは?
私はフランス人なので、フランスの曲をフランス式にやってみたいと思います。フランス式というのは、「透明感」のある、「巧妙」な、そして「明確」で「色彩感」のあるという意味です。私は、色彩感豊かな音楽が好きです。そして、もちろん現代曲も積極的に取り入れるつもりです。
Q 今回のプログラムの意図について
この3人の作曲家の系譜によって、彼らがオーケストラに何を求めたかが分かります。さまざまな楽器の色彩が織り交ぜられ、演奏者の技巧が堪能でき、このプログラムにはフランス音楽の全てが入っています。さらに音楽が、物語を語ってもいるのです。ベルリオーズについて言えば明瞭ですね、物語が既に書き込まれています。しかしラヴェルが「クープランの墓」で表現しているのは何でしょう。それは「クープランの音楽への愛情」です。そしてクープランといえば、ラモーと同じ時代を生き、ラモーの友人でもありました。ラモー、クープラン、ベルリオーズ、ラヴェルという作曲家がおり、ラヴェルはクープランやベルリオーズに愛情を持っていました。すべては同じ精神の表れであり、それがこれらの曲を選んだ理由です。
〜 フランスの3時代を代表する作曲家たち 〜
クープラン
(バロック)


(1668-1733)
ラモー
(バロック)


(1683‐1764)

ベルリオーズ
(ロマン派)


(1803‐1869)

ラヴェル
(印象派)


(1875‐1937)

《シルヴァン・カンブルラン インタビューII》
Q ベルリオーズ:「幻想交響曲」 の解釈について
この曲には2つの側面があり、その1つはとても“ロマンティックな物語”です。ある男が女性を愛し、その愛に破れ、アヘンに溺れて、夢の中で恋人を殺してしまうという、典型的なロマン主義的ストーリーです。 しかしこのシンフォニーの形式はとても“古典的”です。この「古典的形式」と「ロマン主義精神」との融合こそが、この曲の醍醐味だと思います。つまり、ロマンティックな物語を熱烈に語りながら、演奏は形式的に正しく行わなければいけません。私はこの点を大事に考えています。

舞台袖で演奏される鐘


Q ベルリオーズが「奇人」といわれた理由(ワケ)
彼以前にこんな作曲をした人はいませんでした。彼はオーケストラに新しい楽器を持ち込み、新たな色彩を作り出しました。例えば交響曲で「怒りの日」を表現するのに鐘を使用したことは、とても斬新です。 彼は少々変わり者でもありました。天才的な奇人と言った方がいいでしょうか。本当の天才で、特に1830年という時代を考えればとても大胆であったと言えるでしょう。

当時ベルリオーズは、人気女優ハリエット・スミソンに激しく恋をしており、その恋に破れたばかりで、この作品の主人公と自分を重ね合わせていたといわれる。その物語の詳細は以下である。
第1楽章  「夢と情熱」
病的なまでの感受性と想像力をもつ一人の若い芸術家が、理想の女性に出会い激しく恋焦がれる。憂鬱な「夢」と激しい「情熱」で構成され、恋人の固定楽想が様々に変化しながら登場する。恋人への熱狂、嫉妬、慰み。

第2楽章  「舞踏会」
夢の中。男は恋人の姿を舞踏会のざわめきの中で垣間見、恋人は華やかなワルツを踊っている。メヌエットでもスケルツォでもなく、交響曲で初めて「ワルツ」を取り入れた舞曲楽章。

第3楽章  「野の風景」
夏の夕方、男が野をさ迷っている中、2人の羊飼いが笛を吹き交わしているのを聞く。彼女が再び現われるが、辛い予感が彼を突き動かす。もしも、彼女に捨てられたら・・・という不安。遠くの雷鳴、孤独、静寂。

第4楽章  「断頭台への行進」
男は夢の中で恋人を殺し、死刑を宣告された。断頭台へ引かれていくその行進曲は、時に荒々しく、時に華やかになる。恋人の固定楽想がつかの間現れ彼は一瞬恋人を想うが、その瞬間ギロチンの一撃が下る。

第5楽章  「魔女の夜宴(サバト)の夢」
狂乱の夜宴が盛り上がる中、亡霊や魔法使いたちが彼の葬儀のために集まっている。醜悪でグロテスクな舞踏の旋律の中には、醜く姿を変えた恋人も現れる。鐘が鳴ってレクイエム「怒りの日」が響き、騒乱の内に終わる。

シルヴァン・カンブルラン (読売日響第9代常任指揮者) Sylvain Cambreling
1948年フランス・アミアン出身。バーデンバーデン&フライブルクSWR(南西ドイツ放送)交響楽団の首席指揮者およびクラングフォーラム・ウィーンの首席客演指揮者を務めており、独創的なプログラミングと、現代音楽に対する深い造詣が高く評価されている。 オペラの分野ではベルギー王立モネ歌劇場の音楽監督、フランクフルト歌劇場の音楽総監督を務め、またザルツブルク音楽祭への出演のほか、パリ・オペラ座の主要な指揮者として多くの作品を指揮。
これまでにウィーン・フィル、ベルリン・フィル、クリーヴランド管、ロサンゼルス・フィルなどを指揮。
2010年4月、読売日響第9代常任指揮者に就任する。