演奏レビュー

日時

5月17日(木)2時29分~3時59分(水曜深夜)予定
BS日テレ 5月26日(土)朝6:30~8:00予定

5月放送プログラム

モーツァルト作曲 クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
ドビュッシー作曲 クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲
ストラヴィンスキー作曲 バレエ音楽〈春の祭典〉

読響常任指揮者
シルヴァン・カンブルラン
クラリネット
ポール・メイエ

(2018年4月13日 サントリーホールにて収録)


【5月の演奏・聴き所】
音楽プロデューサー 新井鴎子の演奏レビュー

新井鴎子プロフィール
読響シンフォニックライブの構成を担当
クラシック音楽のコンサート・テレビ・ラジオ番組の構成を多数手掛け、長年にわたりその楽しみや魅力を親しみやすく伝えてきた。
音楽祭のディレクターやオペラ・ミュージカルの脚本、執筆活動など〈クラシック音楽〉の分野で幅広く活躍している。
現在、東京藝術大学特任教授。

【モーツァルト作曲 クラリネット協奏曲】
【ドビュッシー作曲 クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲】

クラリネットの低音から高音まで均一な音質を保ちながら音色のニュアンスは変幻自在!
ステージ上のポール・メイエは身体の軸がまったく揺れない安定した演奏姿でした。モーツァルトの最晩年の傑作「クラリネット協奏曲」、その白眉は第2楽章ですが、メイエのピアニッシモ(PPPPPPが5つか6つ付くほどの最弱音!)で奏でられた下行音階は、まるで魂が昇天していくような天上的な美しさ。極薄の皮膜でできた紙風船がゆっくり落ちてきて、その紙風船を「ぽん」と手のひらで打ち上げるような・・そんなピアニッシモは陶然とする響きでした。
そして2曲目のドビュッシーではがらりと変わって官能的な音色になり、超絶技巧を華麗に披露。この対照的な2曲を完璧に吹きこなしたメイエさん。表現力の豊かさと技術の確かさを感じました。

【ストラヴィンスキー作曲 バレエ音楽〈春の祭典〉】
なんてカッコいい「春の祭典」!美しい混沌、とでも言ったらよいでしょうか、「春の祭典」の不協和音が最も不協和音らしく響く音量のバランスと絶妙なテンポ設定。すべての部分が「これ以外にない!」という確信に満ちたカンブルランの指揮でした。
ダイナミックレンジはとてつもなく幅広く、どこを強調して聴かせようとしているのかも明解。金管楽器の咆哮、原始的陶酔感のあるリズム、ふと顔を出す弦楽器の抒情的なメロディ。「春の祭典」の物語などまったく忘れてしまうほど、次から次へとキャラクターの違うサウンドが出てくる面白さを純粋に楽しめる演奏です。読響とカンブルランが年月をかけて培ってきた信頼関係の賜物ともいえるすばらしいハルサイでした。

演奏者の略歴

ポール・メイエ(クラリネット)
ポール・メイエ(クラリネット)
Paul Meyer
名実ともに世界のトップに立つクラリネット奏者が読響初登場。1965年アルザス生まれ。パリ高等音楽院とバーゼル音楽院で学び、84年にニューヨーク・デビュー。トゥーロン国際コンクールで優勝し、リヨン歌劇場とパリ・オペラ座の首席奏者として活躍後、ソロ活動に専念。協奏曲のレパートリーは約100曲にのぼり、室内楽でもクレーメル、ヨーヨー・マらと共演。パユやルルーら現代最高のフランス木管奏者たちと「レ・ヴァン・フランセ」を結成し人気を博す。CDも多数のレーベルからリリース。近年は指揮者としても活躍している。
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
Sylvain Cambreling
1948年フランス・アミアン生まれ。これまでにブリュッセルのベルギー王立モネ歌劇場の音楽監督、フランクフルト歌劇場の音楽総監督、バーデンバーデン&フライブルクSWR(南西ドイツ放送)響の首席指揮者を歴任し、現在はシュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督とクラングフォーラム・ウィーンの首席客演指揮者を兼任するほか、2018年秋からはハンブルク響の首席指揮者への就任が決まっている。また、巨匠セルジュ・チェリビダッケの後任として、ドイツ・マインツのヨハネス・グーテンベルク大学で指揮科の招聘教授も務める。
客演指揮者としてはウィーン・フィル、ベルリン・フィルを始めとする欧米の一流楽団と共演しており、オペラ指揮者としてもザルツブルク音楽祭、メトロポリタン・オペラ、パリ・オペラ座などに数多く出演している。
昨年11月に読響と披露した歌劇〈アッシジの聖フランチェスコ〉(演奏会形式)は、『音楽の友』誌の「コンサート・ベストテン2017」で第1位に選出されるなど絶賛された。
最終シーズンへ向け、「9年間の集大成として、バロックから現代まで約250年の歴史を辿ります。常に新しいものを見出し、さらなる高みを目指したい」と意気込みを語っている。
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