2009年06月29日

運慶の毘沙門天

前回は、京都龍安寺のつくばいに触れましたが、
関東で印象深いのは、伊豆韮山の願成就院にある
運慶作の毘沙門天立像です。

源頼朝を支えた北条時政創建の願成就院。
今から800年以上も前、
平安から鎌倉へと大きく時代が変わるなか、
当時の東国武士の気構えが、
この毘沙門天を通して私に伝わってきます。

鎌倉武士たちの変革を断行する気概と
仏師運慶の新たな造形を追求する意欲が
毘沙門天の抑制された表情のうちに見て取れるのです。

ますます混迷を深める日本。
私が思い浮かべるのは、この運慶の毘沙門天。
今の日本、もう一度この時代の精神が必要かもしれません。

投稿者:村尾信尚

2009年06月22日

日本再発見

先週金曜日(6月19日)のZERO、
NEXTで紹介した今治タオル再生ストーリー。
その再生プロジェクトに携わったデザイナー
佐藤可士和さんの言葉
「ないものを付加するのではなく、元々あるものを磨く」
は示唆に富んでいると思います。

グローバリゼーション(国際化)がどんどん進むなか、
ともすれば日本もグローバル・スタンダード(国際基準)を
追い求めるあまり、元々日本に存在する良いもの、美しいもの
を見過ごしてはいないか・・・。
佐藤さんの言葉から私が連想したのはこんなことでした。

かつてドイツの建築家ブルーノ・タウトが京都・桂離宮の建築美を
「再発見」したように、今、日本の素晴しさを再発見する試みが
必要なのかもしれません。

そういえば先日、石庭で有名な京都の龍安寺を訪れたとき、
方丈の脇にある銭型のつくばいに並べられた4つの文字を見ました。
「吾唯足知」
(吾、唯足るを知る/われ、ただたるをしる(注))
大量生産、大量消費、大量廃棄の現代社会において、
この四文字が示す先達の教えに、
改めて私たちの原点を思いました。

(注)以下の内容を踏まえた言葉です。
   「足るを知る」人は貧しくても豊かな人で、
   「足ることを知らない」人は富んでいても貧しい人である。

投稿者:村尾信尚

2009年06月15日

ルーヴル美術館展

先日、再度国立西洋美術館を訪れ、17世紀ヨーロッパ絵画
を集めた「ルーヴル美術館展」を観てきました。
ルーヴル美術館展については、ZEROでも以前ご紹介しましたが、
予備知識を持って改めて絵画に接すると、
絵画への興味はさらに深まります。

17世紀のヨーロッパは、
強大な王権のもとでその力を世界に広げる一方、
世界各地で精力的にキリスト教の布教活動を展開しました。
(当時、日本は江戸時代。鎖国をして世界との交流を
遮断していました)

さて、オランダの画家フェルメール。
フェルメールといえば、私は、Study to be quiet. (努めて静かでありなさい)
という言葉(注)を思い出すのですが、静謐な空気が漂う「レースを編む女」
における彼の技法は、当時のカメラの光学技術を利用したと知って、
今回は、画家フェルメールとともに科学者フェルメール
の姿が頭に浮んできました。

このほか、レンブラントの自画像をはじめ数々の印象深い作品があります。
将来の悲劇を知らず、得意の表情の「マリー・ド・メディシスの肖像」。
大航海時代を経たヨーロッパを象徴する「5つの貝殻」
天使と聖母を2枚の絵に別々に描いた「受胎告知」
・・・

このルーヴル美術館展は、今後6月30日~9月27日京都市美術館で
開催される予定です。

(注)
英国の随筆家アイザック・ウォルトン『釣魚大全』に出てくるテサロニケ書の言葉。
ところで今回初めて気づいたのですが、フェルメールもウォルトンも
同じ17世紀を生きた人でした。

投稿者:村尾信尚

2009年06月08日

ZEROの森づくり2009

Touch ! eco 
今年6月7日のZEROの植樹場所は、神奈川県平塚市内の進和学園。
毎年ご指導いただいている横浜国立大学名誉教授宮脇昭先生
と一緒に、今回は街の中の森づくりに取り組みました。

多くのボランティアの皆さんとともに、タブノキやシラカシなど
3,500本の木を植えましたが、今後これらの木がすくすくと
育っていくのを見守ることも楽しみです。

青空の下、宮脇先生や小林キャスターはじめ、みんなと楽しみながら
行なう植樹は、環境によいだけでなく、私自身大いにリフレッシュできました。
宮脇先生のお元気の秘密は、きっと植樹にあるのでしょう。

葉のぬくもりや手のひらを歩くアリの感触・・・
木を持って土に触れるといろいろなものを感じます。
エコは考えるものではなく、まさに touch、触って分かるものかもしれません。

木を植えながら、こんな言葉を思い出しました。
「知ることは感じることの半分も重要ではない」
アメリカの環境問題専門家レイチェル・カーソン女史が書いた
『センス・オブ・ワンダー(The Sense of Wonder)』に出てきます。

自然を感じる感性、これからも大切にしていきたいと思います。

投稿者:村尾信尚

2009年06月02日

GM破綻とM&A件数、日本で急増について考えること

昨日は、アメリカでGMがチャプター11の手続きを取った=経営破綻した、影響について、GMの量販車をメインターゲットにサスペンションを納入している日本の部品メーカー、ヨロズに取材に行きました。全体の売り上げの2割弱がGMということで、確かに影響は小さくはありません。

ところが佐藤社長にお話を伺ってゆくと、昨年末頃からGMの破綻の可能性が指摘されてきた中、できる準備、対策は全部やってきた、ということで、それほど不安におののくということではなく、冷静に対処しているし、また冷静に対処できる、というお話でした。

それは、要するに徹底的なリストラクチャリングを行い、ムダを排して、スリムかつ競争力の高い会社にしてゆく、ということです。

この会社、元々は日産の系列だったんですが、ゴーンさんが経営を主導するようになって、日産が系列解体を行ったことにより、自分の足で販路を開拓・開発して生き延びなくてはいけないという試練の時代がありました。そのころ、売り上げも減少していた時期もあったそうです。系列解体の頃がざっと売り上げが700億だったのが、その後系列にとらわれずに世界中の自動車メーカーに売り込んでいったところ、売り上げがのび、2004年頃には1400億ぐらいと、まさに売り上げが倍増。危機をチャンスに変えたんですね。

その裏には秘密がたくさんあって、たとえば海外で生産するときも、部品の生産を落とさないだとか、そういった地道な努力をたくさんやってきているということでした。

このコストカットの嵐の時代でも、開発への予算は削らない、ということは至上命題にされているそうです。いつか需要が戻ってきたときのためにベストの商品を提供できるように、、、ということですね。

GM破綻、という決して明るくはない取材であるにもかかわらず、社長をはじめ社員の方が明るく元気で前向きだったのが非常に印象に残りました。

一時は、日産からアメリカの会社に株式が渡り、外資系だった時期もありましたが、その後自社株を買い戻して、今は独立系として頑張っています。

それは大分前の話しになりますが、このヨロズの株式の取引もいわゆるM&Aの一つであります。企業の株が買ったり買われたりして、持ち主がかわったり、合併したり、離れたりする。

昨年一年間は、アジア太平洋地域のM&A件数は、中国がトップでした。日本は抜かれていたわけです。それが、ここにきて日本におけるM&Aが盛んになり、中国を抜いて一位になった、というニュースが米経済紙ウォールストリートジャーナル紙アジア版で伝大きく伝えられています。1~3月期は、全体としてのM&A件数は20%近く減少しているにもかかわらず、日本は全体の30.6%を占め、中国はは19.5%だそうです。

これはどういうことか?先日、外資系アクティビスト(=モノ言う株主)・ファンドであるスティールがアデランスに提案した役員が株主総会で可決された、というニュースが流れました。これは、海外では「日本で初めてアクティビスト(=モノ言う株主)の手法が通った」とかなり大きく報じられていました。
スティールは、日本では当初「ハゲタカ」と呼ばれることが多くありました。厳密にいうと、外資系金融の世界ではスティールは<アクティビスト>(モノ言う株主)であって、vulture=ハゲタカだとは捉えられていません。

M&Aというのは、ドラマなどで話題になってきた<ハゲタカ>によって行われるというう印象を与えがちですが、今日本で増えているM&Aはそういう性質のものではありません。

ではどんなM&Aが日本で増えているのか?

むしろドメスティックな企業が、自分たちが生き残るために企業体質を改善するために行うM&Aが多くなっているのです。たとえば、日立や伊藤忠などの大手企業が、以前は参加にあったけれど現在は独立している部門の株を買い戻したり、あるいは逆に不採算部門を切り離す、というM&Aによって、経営体質の改善をはかろうとしていということです(WSJより)。

これは、GMが破綻するような現下の経済状況と直結しています。

例えば、同じグループの会社を100%子会社化することによって、素早く経済状況に対応することができます。また、優良な企業である場合(技術や優良資産を持っているなど)、他者に狙われる可能性も出てきますから、早めに自分のものにしておきたい。こういう背景があって、今年のマネジメント・バイアウト(経営陣が自社株を買い戻す、など)は昨年のほぼ二倍の件数になっているそうです(WSJより)。

しかも日経平均はいまだ低い。だから株価で言うとお得感がある。今買わない手はない、、、ということになります。というわけでM&A件数が増えているのです。
これは日本の生活者の観点からいうと、よい点と悪い点があります。
ここにご紹介したようなM&Aが多いということは、不況下でさらなる各産業の再編と淘汰が進む、ということです。

それは、より厳しい経済状況に迅速に対応できる筋肉質な企業を作る、ということになります。良く言えば。
経営側の観点から、また日本経済の観点からすると、それは必要不可欠、ということになります。
日本経済が再活性化するためには、少なくともやらなければいけないことであることは確かなのでしょう。
ただ、いわゆる「派遣切り」などで、私たちは「迅速に経済状況に対応できる効率のいい経営」が、働く人にとって時にどれほど冷酷になり得るのか、思い知りました。

それは、「効率よく労働力を調整できる」と同義でもあります。

「不採算部門の調整」も、「調整される人材」が否応なく出てきてしまいます。

もちろん、調整されて、新たな経営者のもとで立ち直れる企業だってあるでしょう。
色々なケースがあります。ただ、企業としては「経営努力」はやはりやらざるを得ない。
でもそこで厳しい立場に立たされる人が出てくる。そこを政府・地方自治体・コミュニティでサポートして行く、、、。
様々な政策が国会で議論されていますが、日本人としてこれからの社会保障や、セーフティネットをどう考えて行くのか、みんなで話をしてゆくのが大事ですね。

投稿者:七尾藍佳

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