2009年07月15日

「児童虐待」を考える

昨日は、全国の児童相談所に昨年度よせられた『児童虐待に関する相談件数』が「4万2、662件」で過去最悪、というニュースを受けて、児童虐待の電話相談や、医療関係者などに、虐待を受けた子どもたちの診察に必要な特別なトレーニング、コーディネーションなどの様々な活動をされている民間の団体、「子どもの虐待防止センター」(http://www.ccap.or.jp/ )に取材に伺いました。
そこでお話を伺う中で、このブログで共有したいと思うお話ががいくつかありました。

同じく虐待に関する調査で、「養護施設などに入所する児童の約5割が虐待を受けた経験がある」という結果。
この「5割」という数字ですが、これは今回改めて調査をして浮き彫りになった数字であって、衝撃を与えましたが、実際に子どもの虐待の予防に取り組んでいる現場の意識からすると「本当はもっとずっと多い」だろう、ということです。
というのも、、、たとえばこの「5割」の中には、「母親が行方不明」というケースは含まれていないのです。
これはしかし、子どもをおいて「立ち去る」、子どもは「放置される」ということですから、「ネグレクト(育児放棄)」という明らかな虐待に当たります。
研究者の間では、実際に「暴力」を受けるよりも、「放置される」(ネグレクトされる)ほうが受ける心の傷が深いことが知られているということです。

日本では、虐待=暴力という先入観が強いため、実際に死に至る可能性もある「ネグレクト」ということ自体が「虐待」に当たるという認識が社会で広まるには随分時間がかかったようです。
その認知を広めるために、こちらのセンターの創立者である小児科医の坂井聖二さんはご尽力されてきたとのこと。

こちらの発行しているニュースレターを頂いて、少し勉強する中で改めて感じたことでもあるんですが、やはり虐待というのはそれを生んでしまう社会的要因が大きくあるということ。

子どもと親が孤立してしまって、そこにストレスが溜まる。また性的虐待になると、診察する医師やカウンセラーにも特別な訓練が必要になってくるのですが、現場では必死の取り組みが行われているとはいえ、やはり予算も人出も足りていないという状況のようです。

「ネグレクト」に関しても、母子家庭で、何とか生活してゆくために、子どもにまともな生活をさせたいという一心で、日中はパートで働き、それでは足りずに夜も働きに出るシングルマザーがいる。
でも結果として子どもは夜一人で家にいることになり、「ネグレクト」になってしまう、子どもにはよくない、、、。
それはでは母親のせいか、というと、「そうではないのです、そこに支援を手をさしのべることも必要なんです」というふうに相談員の方はおっしゃっていました。

また、ニュースレターの中に、ある養護施設の職員の方が匿名で寄稿されていた報告があり、とても心が痛みました。
養護施設に保護された子どもたちの全国的な交流会の場で知り合った関西方面の養護施設で育った虐待を受けた青年の話です。
彼から電話があって、年末年始に日比谷で設置された「派遣村」に一緒に言って欲しい、と頼まれたところから、養護施設出身者がおかれる厳しい生活環境の実体をまざまざと感じられたそうです。

養護施設に入る子どもたちは、実質18才になると独り立ちしなくてはいけません。
成績がよくても、学費を払ってくれる親がいるわけでもなく(親から保護されて入所する子どもたちですから)進学を諦めなくてはいけない。
保証人も、最初は寮の人がなってくれても、その後引っ越しや転職をするときには保証人のなり手がいなくて家を借りることが難しい。
結果的に、住み込みで働く派遣労働者が手っ取り早く、魅力的に見えて、養護施設出身者の多くが派遣労働者で、会社に提供される寮で生活している、ということのようです。それが昨年の金融危機に端を発した日本の製造業の「派遣切り」の嵐の中で、路頭に迷ってしまう。

報告を書いた養護施設職員のかたによると、日比谷の派遣村では多くの養護施設出身者に会った、ということです。
世間では「なぜ実家に帰らないのか」と言う人がいるけれど、実はあの場所に集まった若者の中には「家も家族もない」という人が多くいたんですね。

養護施設についてですが、行政の予算も削られる一方で、ケアマネージャーも、職員も、人出が足らず、ひたすらバーンアウトして行っている状況とのこと。

虐待を受けた人が、また自分の子どもに虐待を繰り返すというケースが多いことは(様々な要因があります)よく知られていることです。
心に傷を受け、きちんとケアされないまま、社会保障もなく、住む場所も無く、社会の荒波に毎年多くの若者が放り出されていることを考えると、いたたまれなくなってきます。

選挙前の嵐が吹き荒れていますが、政治ができることはたくさんあると思います。

■社会福祉法人 子どもの虐待防止センター
 相談電話 03-5300-2990 (全国・相談無料)
 月~金 10:00~17:00
  土   10:00~15:00
 日・祝  休み

投稿者:七尾藍佳

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