板谷由夏 LIFE

2017年2月16日

無料塾

その塾は、意外な場所にありました。

板谷「ここですね。失礼します。」 

古いアパートのような扉の向こうでは...

板谷
「勉強してる、勉強。」
「すみません。見学させていただきます。」

広さわずか6畳ほどの教室。
使われなくなった学生寮の部屋を安く借りているそうです。


八王子つばめ塾。

地元のNPOが 5年前から運営していて
英語と数学の授業を 毎日行っています。

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講師「そう、真ん中。
真ん中わからないから このグラフだとね。」

見学させていただいて感じたのは...

板谷「個別に、丁寧に教えてくれるみたい。」

授業はすべて無料。
しかも、生徒3~4人に対し 先生1人という、個別型です。

午後9時。
2時間の授業が終了します。

板谷「先生がすごく丁寧に教えてくださる気がしたけど。」

無料塾に通う 中学3年生
生徒「(成績は)塾に入る前より全然伸びたと思います。」

板谷「目標は?成績どのくらい伸ばしたいとか。」

無料塾に通う 中学2年生
「(通知表に)4とか5をひとつはつくりたい。」


そして、子どもたちが帰る間際には...

生徒「えー、やばーい!やばい。」

食料支援のボランティア団体と協力して
パンやおにぎりを配っているのです。

板谷「これじゃんけんで決めるの?」

講師「そうなんです。ケンカして、取り合いになるので。」

生徒「最初はグー、じゃんけんぽん!もうやだ~。」


生徒はみな、経済的に苦しい家庭の子どもたち。
中学3年生の美咲さん(仮名)も、そのひとりです。

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板谷「どうですか?ここの存在は?」

無料塾に通う 美咲さん(仮名・15)
「大きいです。最初はあまり学校も行ってなかったから、
通信制(高校)がいいなと思ってたけど、考え直して。」

板谷「考え直したんだ。」

中学を卒業後は、通信制高校に通いながら
働こうと考えていた美咲さん(仮名)。

この塾で 勉強が楽しくなり
商業高校へ進学しようと決めたといいます。

美咲さん(仮名)に塾を勧めたのは、彼女のお母さんでした。
    
12年前に夫と別れ、
美咲さん(仮名)と中学1年の長男をひとりで育てています。

美咲さんの母(42)
「母子家庭なので、
先が見えないという部分はあるんですよね。」

育ち盛りの子ども、2人を抱えるため、
可能な限り、食費も切り詰めているといいます。

無料塾に通う 美咲さん(仮名・15)
「しょうが焼きってもっと
薄っぺらいやつ(肉)かと思った。」

美咲さんの母(42)
「そのお肉はなんと95円=100グラム。
いつものお肉は138円。
"どっち買う?"って言ったら、どっち買う?」


美咲さん(仮名)のお母さんは、食品会社の正社員。

お弁当の販売と事務を兼務していて、
月の手取りは 15万6000円ほど。

しかし、食費や家賃などで...

美咲さんの母(42)
「(出費を)全部足すと15万5000円くらい。」

給料はほぼなくなります。

このほか、ひとり親家庭への
「手当」などもありますが、
教材や修学旅行の積み立てなどに消えているといいます。

美咲さんの母(42)
「塾に通わせて、冬期講習だ夏期講習だっていうと
何十万円もかかってしまう。
でもそのお金を出す余裕はないですね。」

こうした家庭に手を差し伸べるため
5年前に誕生した「八王子つばめ塾」。

開始当初、生徒は1人でしたが、
いまでは実に 80人以上に増えたため
市の公民館などを借りて、
授業数を増やしているといいます。

登録している講師は およそ60人。
すべてボランティアで、交通費さえ自費です。

板谷「先生どこから通っているんですか?」

無料塾で教える大学生(21)
「埼玉県の川口市なんですけど、
(片道)2時間はかかります。電車で。」
「私もともと教育系の就職を目指しているので、
子どもたちを教えつつも 僕も教えられている。」

無料塾で教える会社員(49)
「自分は会社で働いてはいますけど、
社会貢献じゃないですけど、
世の中の役に立つことがしたい。」

しかし、施設の賃料や光熱費、
生徒たちの教材などは、すべて支援者からの寄付金。

理事長自身も 塾の運営のかたわら、
高校の非常勤講師をして
生計を立てている といいます。

板谷「今後の先生の目標は?」

八王子つばめ塾 小宮位之理事長(39)
 「一番僕が望むのは、つばめ塾の塾生たちが
将来高校から大学に入って、
大学生になった時に何人かが

(つばめ塾の)講師として来てくれるっていうのが夢で。
そういう子たちが出てくると、すごくうれしいなと。」

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