板谷由夏 LIFE

2017年8月30日

同行援護

視覚障害がある女性の元を訪ねました。

板谷「こんにちは。」

藤井さん(30代)は弱視で、
視野がほとんどありません。

高校生の時に、網膜色素変性症を発症。
徐々に視力を失い、
20歳の時には、
ほとんど見えない状態に。
藤井さんの視野は、わずか1センチ四方ほどです。

通常、このように見えるリビングの様子。
しかし、藤井さんに見えるのは、
中心の、ごくわずかな部分だけ。
しかも薄暗く、色も判別しにくい状態だといいます。
                        
藤井「人にぶつかったり、段差や階段で転んで
落ちてしまったり
(外に)出るのが怖くなりましたね。」

板谷「そういう思いをするとお出かけするのも
やめようかなと思いますよね、きっと。」

藤井「そうですね。」

家に引きこもりがちになったという藤井さん。
ラジオや音楽を聞いて過ごす日々が続いたといいます。

その生活から抜け出すきっかけになったのが
あるサービスでした。                              
どのようなものなのか、同行させてもらいました。

ガイド「こんにちは。本日ガイドを担当します岡本です。」

藤井 「よろしくお願いします。」

待っていたのは、ガイドの岡本さん。

ガイド「どちら側にお立ちしましょうか?」

藤井 「左側にお願いします。」

ガイドさんの肘(ひじ)をつかみ、
行きたい場所へと案内してもらいます。
これは、同行援護という障害福祉サービスの1つ。
視覚障害者の外出をサポートするものです。

この日藤井さんは、
女性のガイドを依頼しました。
というのも...

訪れたのは、ショッピングモール。
藤井さんは洋服を購入したいと考えていたからです。

どのように買い物をサポートするのでしょうか。

藤井「まだ暑いので、今からでも着られるけど、
秋っぽいもの。」

まずは、利用者の希望を聞き、
イメージにあいそうな商品を探します。

商品を見つけたら、藤井さんに手渡し、
形や質感を認識してもらいます。
視覚障害者にとって触れることが、
見る代わりになっているのです。

藤井「透け感はありますか?」

ガイド「透け感は全くないです。
綿が58%でリヨセルという繊維が42%入ってる。」

素材や値段など、さわっただけではわからない
視覚的な情報をガイドさんが読み上げます。

さらに、柄の形や大きさ。
色味なども、言葉で伝えるのですが...

板谷「グリーンといっても少し深いグリーン。」

藤井「森の木みたいな感じですか?」

ガイド「深い森ですね、森でも。」

板谷
「松みたいな。
(イメージしてもらうには)ボキャブラリーがすごく必要ですね」

気になるものが見つかったら、試着。
最後に、見た目を確認してもらいます。

板谷「かわいい、かわいいよ。」


藤井さんにとって、年に数回の買い物。
ガイドしてもらうことで楽しめるようになったといいます。
                              
さらに、買い物の他にカフェへも立ち寄り。
メニューを読み上げてもらうのも、
同行援護なら、気兼ねなく頼めます。

藤井「クレームブリュレを
(トッピングで)つけてもいいですか。」

パンケーキのトッピングに
クレームブリュレ。
初めての組合せを試しました。
同行援護を利用し始めてから、
気持ちにも変化があったといいます。

藤井「(以前は)用事を済ませてすぐ帰っていたけど
寄り道したりブラブラできるようになって
気持ちが前向きになった。」

2011年に始まった同行援護は、
国が行う障害福祉サービスの1つ。
自治体の福祉事務所などが窓口となり、
利用者からの申請を受付けます。

すると、同行援護を行う事業所などが紹介され、
ガイドの派遣を直接依頼することで、
サービスを利用することができます。

利用料は、国と自体で9割を負担。
利用者は、原則1割です。
条件によって異なりますが
1時間あたりおよそ200円を負担します。

しかし、広報が十分でないこともあり
藤井さんが同行援護を知ったのは、
制度が始まってから2年後。
視覚障害者に、どう知ってもらうかが課題です。
                              
さらに、同行援護が抱える課題が、もう1つあります。

日本盲人会連合
「(同行援護の)事業所に所属している
従事者の数が
非常に少ないという実態がある。」

専門の資格を持ち、
ガイドする同行援護者の不足。各事業所が、
人材確保や育成に力を入れているといいます。
                              
今月行われた同行援護の資格取得のための講習。
中には事業所から補助を受けて受講する人も。

外出の演習に私も参加しました。

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まず、視覚障害者役とガイド役にわかれて、
電車の利用を疑似体験します。

私が不安を感じたのは、電車に乗り込む時。

ガイド役「手すりをご案内します。右側ですね。」
板谷「わ~、怖い。」

落ちてしまうのではという不安から
足を前に出すのを、躊躇(ちゅうちょ)してしまいました。
さらに、乗り込んでからも...
座席の位置を把握するのも、ひと苦労。
しかも、周囲の様子は全くわかりません。

板谷「余裕がない。」

視覚障害者の気持ちを理解し、サポートの仕方を考えます。

ひとつ隣の駅に移動したところで、疑似体験を終えました。

板谷「音とかニオイとか気配とか風とかに
全神経を集中させないと自分の状況がわからないから
ちょっとの外出もすごく疲れる気がします。」

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同行援護は、20時間の座学と演習で
サポートの仕方を学び、資格を取得。
その後、人手不足の現場で、即戦力として働き始めます。

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