2008年04月17日

「中田、地球を旅する。」~アフリカ編~

熱風が体を包み込む

アフリカ大陸に、中田英寿はいた。


地球上で最も古いと言われる砂漠を駆ける。
中田は自らの足で
アフリカの大地を踏みしめていた。


アフリカには、壮大な自然と人々の
すさまじい現実があった。
内戦で家を追われた数万の人々が暮らす
避難民キャンプ。

中田はそれを自らの目で確かめる。

貧困、病、飢餓、紛争。
アフリカが抱える複雑な問題。
敢えて目を向けることをしなければ
知らないままに済んでしまうかもしれない。

なぜ中田はそこへ行くのか?

現役引退後、世界中を旅してきた中田。

本格的にアフリカの大地へ足を踏み入れるのは
今回が初めて。
世界のどの大陸とも違う、このアフリカで
中田は新たな経験を重ねていた。

「あっ、首やられてる。」 

「ライオンにやられたかな。」 

中田は
次に自分がすべきことを
探しつづけていた。
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アフリカ大陸で最初に訪れた国は、ガーナ。

かつてゴールドコーストと呼ばれた西アフリカの海岸に面した
人口およそ2300万人の国だ。
中田はなぜガーナにやって来たのか?

「いや、別にガーナというよりも今回は
ずっとアジアを回って、南米を回って今度は
アフリカの番。まずまあ最初にガーナに
来たのは、当然、アフリカ選手権があるって
いうのはあるけど、あとはまあアフリカ選手権のまわりで色んなサッカーを通じたイベント
っていうのが色々行われていて、まあメインはそれを見に来たって感じかな。」


2年に一度、アフリカ大陸ナンバー1を決定するアフリカネーションズカップ。
今年の主催国がガーナだった。
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地元ガーナの試合に、人々は大興奮。

国内はもちろん、アフリカ各国から人が押し寄せ、ガーナ中が熱狂した。
サッカーの持つこのエネルギーを、
なにか別のことにも生かせないかと
中田は考えはじめていた。

時を同じくして、
小さな草サッカーが行われていた。
地元の中学生同士の対戦を目当てに
多くの人が集まる。
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そこに、中田の姿があった。

突然、芝居が始まる。
エイズの正しい知識や予防法を教えるイベントだ。
実は、この集まりにサッカーが一役買っていたのだ。

中田は、サッカーを楽しみに来た子ども達が
芝居やクイズに参加し、
自然とエイズの知識を得ていく方法に
関心を持っていた。

ガーナでは現在、全人口の約3%が
HIVに感染していると言われている。
子ども達に正しい知識を広げることが、
将来の感染拡大を防ぐことにつながるのだ。

一人でも多くの人に伝えるための場をつくることにサッカーが大きな貢献をしていた。
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サッカーを通じて
社会の問題を解決しようとするプロジェクトを
みずからの目で見て回りたい。
それが、中田の今回の旅の大きな目的だった。

試合はPK戦までもつれこむ大熱戦。
サッカーを楽しみ、それをきっかけに
人々が新たに何かを知り、学ぶ、
そんな場面を目の当たりにした中田は、
サッカーの大きな可能性を再確認していた。
「サッカーを勝敗だけのスポーツではなく、
楽しくやることによって、または楽しみながら
観る事によって、それが間接的に何かの助けになるような、
そんな仕掛けや仕組みが作れるのではないか」 (nakata.net)
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中田はガーナの子供たちについて
知りたいと考えていた。

中田は、旅の案内人アディサさんに、
教育環境についてたずねた。

中田「ガーナのほとんどの子供は
   学校に行っているんでしょ?」
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アディサ「そうよ」
中田「ガーナの子供たちの就学率は
   高いと聞いたけど」
アディサ「ええ。でも卒業せずに
     辞めていく子もいるわ」
中田「どうして?学校が退屈だから?」
アディサ「いいえ ほとんどが経済的な理由からよ」
中田「お金が必要なんだ?」
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中田「でも政府が学校を無料にすると
   決めたって聞いたけど。」
アディサ「まだ実行されていないの。」
中田「まだなんだ?」
アディサ「小学校は無料になっているわ」
     「でも そのさきはまだなの」
     「そこで学校をやめる子供が多いのよ」
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貧しさゆえに教育を受けられない子供たち。
中田は、ガーナで行われている、
貧困対策プロジェクトのことを聞き、訪れた。
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中央アフリカのサバンナ地方で採れる
シアの木の実を加工して作る“シアバター”。
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皮膚病や、美肌促進に効果があるとされ、
現在では、日本やヨーロッパなどで
高級品として販売されている。

地元に根付いた生産体制を確立することで、
女性たちの経済的自立が図れるのだという。
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ちょっとしたサプライズがあった。
この月は中田の誕生月。

中田「結婚式じゃないんだから」
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手作りのケーキがプレゼントされたのだ。
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サッカー貧困やエイズとのたたかい。
を通じて何かできることはあるのだろうか?

移動中。
中田は結婚観を問われていた。

アディサ「(結婚)してみなさいって!」


アディサ「愛はとーってもあまーいものなのよ」
中田「じゃあ 90歳になったらするよ」
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アディサ「あなたはハンサムだからモテるでしょう?
     だけど一人にしなさい一人を愛するのよ!」
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中田「なんで一人だけなの?」
アディサ「!?」
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     「一人に決まってるじゃない!
     恋に落ちて その人だけをを愛するの」
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中田「二人を愛するかもよ」
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アディサ「…二人なんて聞いた事ないわ」
中田「二人を愛したことがないからだよ」
アディサ「まずは一人を愛してみなさい」
中田「あなたはどうなの?」
アディサ「わたしはもう結婚したからいいのよ」
中田「だったら別の人を愛してみればいいよ」
アディサ「私はもう終わったの!一度経験すればいいのよ!」
中田「いつも言い逃れをする!」
中田「なんで1度だけって決めつけるの?
   2回してみたっていいじゃない!」
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中田「僕が言いたいのは 
   決定してしまう必要はないってこと
   愛する誰かに出会えば
   結婚するし
   誰にも出会わなければ
   そのままでいいよ
   だから僕が言いたいのは
  (結婚は)しなければいけないことでは
   ないだろうってことなんだ」
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アディサ「なんでわたしが 
     こんな話をするか分かる?」
     わたしはあなたに
     人生を楽しんでほしいの」
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中田「僕は楽しんでいるよ」
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アディサ「愛は人生における楽しみの1つなのよ」

中田の考え方は独特だ。

中田はガーナのサッカー学校で、
ボールを蹴る子供たちをみつめていた。
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ここは、サッカー選手になる夢を現実に
変えることのできる場所。
元マンチェスターユナイテッドのスカウトが
ガーナ全土から、
運動能力の高い優秀な少年を集め、
無料でサッカーの英才教育をしている。
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生徒の多くが貧しい環境にいた子供たち。
学校は全寮制で、親元を離れ、プロを目指す。

いっぽうで、サッカー選手になれなくても、
将来、きちんとした仕事につくことができるよう
に、一般の教育も行っている。

そしてなんと毎年数名の生徒が
ヨーロッパなどで
プロサッカー選手になるという。

憧れの中田への質問の時間がつくられた。
中田は率直に語りはじめた。
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Q「もっとも優れていると思うサッカー選手は?」
中田「今は引退してしまったけれど
   ジダンが 僕が見た中で一番優れた
   選手だと思う」
中田「ジダンはサッカーをしているというよりも
   まるでダンスをしているみたいなんだ
   だから僕はいつも
   彼のプレイが見たい」


中田「ジダンのプレイは
   基礎がとても高いレベルにある」
中田「基礎トレーニングは退屈で
   自分にはもうできるって思うかもしれない
   だけど、基本練習に終わりなんて
   ないんだ
   だから毎日長い時間をかけて
   練習したほうがいい 
   それが良い選手になる秘訣だよ」
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Q「選手生活の中で何が大変でしたか?」
中田「だれにでも よいときと
   悪いときがある」
  「勝つこともあるし 負けることもある」
  「特にプロの選手は 勝てば
   神のように扱われる
   だけど 負けるとまるで犯罪者のように
   見られるんだ」
  「対処していくのは簡単ではないよ」
  「だけど重要なのは 
   自分の考えをしっかりと持って 
   自分が何をするか
   何をしたか 
   何をしなければならないかを
   理解すること」
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  「そうすれば 自分がよいときか
   悪いときかなんて関係なくなる」
  「なぜなら全てが
   よい経験になるからだよ」
  「悪いときは何が問題なのかを
   理解することができる
   どうしてこの問題が起きるんだって
   ことをね」
  「だから いつも考えなきゃだめなんだ
  「なぜ自分はここにいるのか」
  「自分は今どういうときなのか?」」
  「そして自分の心をいつも落ち着かせること
  「それがとても大切なんだ」
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中田は真剣に語った。
サッカーがこの子供たちに
大きな可能性をもたらす。
ここにもサッカーの力があった。

現役引退後、自分の新たな可能性をさがす
旅に出た中田は、果てしない地球の上で、
経験を重ね、自らの世界を広げていた。
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中田が子供たちへ語った言葉は
自分自身への言葉のようでもあった。

「今、何をすべきか」
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中田の旅は、まだ続く