2010年04月08日
「中田、日本を旅する。」~四国編~
中田英寿は雪の降りしきる、高知県にいた。

“最後の清流”と呼ばれる美しい四万十川が流れ、県の84%を森林に囲まれる高知県。
しかし、この豊かな自然環境にも変化が起きているという。
漁師「海苔だけじゃなくて、鮎もうなぎも…」
不漁が続く四万十川…。
その原因は、どこにあるのか?
中田は、自然環境を専門に学ぶ高校があると聞き、向かった。
県立四万十高校。

この高校には日本でも珍しい「自然環境コース」が設けられている。
校長「ここの立地だと思いますね。川があって森があって。
四万十川という川が流れていて。その下流に海があって。
森と川と海と三つ繋がってますから、その三つについて学習させようと」
中田「どういう勉強をしているのかなぁっていうのが、
すごい興味があって」
中田は彼らの授業に同行させてもらう事にした。
この日は、珍しい大雪の中、校舎のすぐ横を流れる四万十川で
水の透明度や、生息する水生生物の調査が行われていた。

先生「今、川の透明度を計っていますが良かったら入って行かれても」
中田「気温は氷点下ですか…」
先生「気温は。はい」
中田、川へ。

生徒「あっ、おったおった。」
中田「珍しいの(生物が)見つかったんですか?」
生徒「はい。虫たちに得点をつけていて、それでいうと9点!」

生徒「かなりの高得点」

中田「ダンゴムシみたい」
生徒たちはこうした調査を続けることで、
四万十川の水の状態を記録してきた。
最後の清流と呼ばれる四万十川にも、水質の変化があるという。

それが影響しているのだろうか、川では不漁が続いている。
四万十川の鮎やアオノリの収穫量は、
20年前に比べ4分の1に減った。

漁師の小野隆利さん「このままいけばたぶん、何もいない川になってくるかもしれんね」
魚が穫れなくなった原因、その一つに「山」が関係しているのではないか…。
中田の訪ねた四万十高校では、山の調査も行っている。

生徒「この木が何か分かりますか?
中田「杉の木!」
生徒「そうです、杉です。
ここは間伐をしていて、すごい手入れされている場所です」
かつて林業が盛んだった高知県。人工林は森全体の65%にのぼる。
人工林の中から太くて良い木を残していくため
余分な木を切って間引く、「間伐」という作業を行う。
しかし、林業が衰退して「間伐」が行われなくなると、木が密集したままとなる。
すると、地面に日が差さなくなり、下草が育たなくなる。

地面はむき出しになり、雨が降ると、雨水が土砂とともに一気に川まで流れ出てしまうのだ。
生徒「(土が)いい状態のときはフワフワしていて
踏んでみると柔らかいことが大きな特徴です」
この状態の土は 雨が降ったときに水がしみこみやすくて
保水力がいいと言えます。
保水力が良ければどうなると思いますか?」

生徒「そう。雨がすごく染み込みやすくて水をきれいにしてくれます。
その水がそのまま四万十川まで流れていきます」
高知県の人工林のうち、75%が「間伐」を必要としている。
だが、林業の衰退もあり、あまり進んでいないのが現状だ。
四万十高校の生徒たちは、筑波大学と共同で研究を行ってる。
調査を統括する恩田教授は、
「山から流れ出た水と土砂が、川の生物にも影響を及ぼす原因のひとつ」と考えている。
「間伐」という一般には聞き慣れない言葉。
中田はその現場を見てみようと足を運んだ。

森林再生を進める水谷伸吉さんに聞いた。
中田「一つの現場でも、また間伐をやらないと
どんどん生えてきてしまうという事ですか?」
水谷さん「そうです。一回やった場所は大体10年後とか、
定期的に循環していかなくちゃいけないので。
意外とその日本の国土の7割近くが森に覆われていて
そのうちの半分近くは人工林だということは良く知られていません」

四万十高校の生徒たちにとっては、森も川も身近なテーマ。
教室では、3年生が卒業研究の発表をしていた。

竹内貴大君は、四万十川の幸、テナガエビの数が年々減ってきている、
その理由を研究してきた。
竹内君「やっぱり山からの(水の)供給が少なくなったことで、
海水が上にのぼりやすくなってきたという原因が
考えられます」

中田は、地元の自然環境と真剣に向き合う生徒達の姿を知った。
授業の終わり、飛び入りゲストの中田に、生徒の前で話す機会が設けられた。

中田は、旅を続ける理由を生徒たちに語った。
中田「やっぱり自分の何かを決めるときとか、判断する材料っていうのは
自分の経験でしかないわけであって、
一つの問題に対して答えは一つじゃないですし、
まあそれが、いろんな角度で見られるっていうのは自分の中で
いろいろやっていく中では非常に大きいものなので。
だからずーっと旅をしているんですけど。
この先も続くと思いますし」
経験を増やしていくことで、物事を様々な角度から見られるようにしていきたい。
それが、中田が旅を続ける理由。
生徒「この木は何の種類か分かりますか?」
中田「杉!…いやヒノキ!」

人との出会いを重ね、中田の旅は、続く。

