2011年02月11日

LIFE~介護実習~

私が向かったのは、独りで暮らす高齢者のお宅。
指導役のヘルパーの方と一緒です。

02101.jpg

ヘルパー 「ベルを鳴らしてみます。」

しかし、返事がありません。
        
板谷   「いらっしゃることはいらっしゃるんですよね。」
ヘルパー 「出てこない事が多いので。鍵をお預かりしてるので、これで開けます。」

    
認知症の方のお宅に伺うのは、初めての経験です。

「おじゃまします。」

榎本春枝さん、92歳。

02102.jpg

板谷   「板谷です。よろしくお願いします。」
春枝さん 「私何もわからないの。ちょっとボケがでたのかしら。」
ヘルパー 「そんなことない。」

その時です。

ヘルパー 「お水が…」
春枝さん 「あそう?」
板谷 「お水が出っぱなしですけど…。」

02103.jpg

ヘルパー「扉も開いちゃってますね。」
板谷 「扉も開いてますね。」

02104.jpg
       
部屋中の扉が開いたまま。
さらに、水道の水も出しっぱなしの状態でした。
        
ヘルパー 「忘れてしまうってことが、たまにあるんで。」
板谷 「(水を)出してることをですか?」
ヘルパー 「はい。」
板谷 「わかりました。」
板谷 「榎本さん閉めますね。」
春枝さん 「はい。風を入れてたの。」
ヘルパー 「風を入れてたの?そうなんだ。」

否定はせず、認知症の方に合わせて。
これが接するときのポイントです。

5年前から認知症が進行し始めたという榎本さん。
普段は、自宅の1階で働く息子さんが介護をしています。

実習の一つ目は入浴。
身体介護の中でも最も神経を使う介助です。

02105.jpg

板谷 「お風呂はいいもんね、気持ちいいもんね。」
春枝さん「一人の時は怖いから入れない。皆さんいるから安心して」
これはいつの間にか出来ちゃったの。」
板谷 「どこかでぶつけちゃったかな?」
春枝さん 「これが気になるぐらい」
ヘルパー
「ここだけ?あとはない?こういう時に、
どこかぶつけてたりとか変化があるかを見る。」
板谷 「お風呂に入る時にチェックするってことですね。」

02106.jpg

求められているのは
うまく入浴を介助することだけではありませんでした。
体の変化を確認する役割もあるのです。

次は食事の準備。お湯を沸かそうとした時です。

板谷 「ん?」

02107.jpg

火がつきません。

ヘルパー 「いつも一人でいらっしゃるので、
       火の元は危ないので元栓とロックをしてるんですね。
       以前空だきになっちゃった時とか、
       自分で忘れてしまう事があるんで、全部閉まってるんです。」
板谷  
「ロックもかかってる状態なんですね。 
 火の元は一番注意しないといけないですよね。
怖いですよね。」

ヘルパーは食事の準備など日常生活の援助も行います。
これも「介護保険」で定められたサービスの一つです。

02108.jpg

板谷   「おいしいといいけど…どうぞお召し上がり下さい。」
春枝さん 「これ朝と昼どっち?」
ヘルパー 「もうお昼だね。」
板谷 「お昼ご飯。」
春枝さん 「お昼ご飯?はい。いただきます。」
春枝さん 「おいしい。」
板谷 「よかった。」

実習は1時間半。
講座で学んできた事を何とか実践し、終了しました。

ヘルパー
「あっと言う間に終わってしまいましたけど、
 いかがでしたか?実習終えて。」
板谷
「その人のプライベートの空間に入るので、
距離感が近いところから始まるので、
もっと時間かけてお話できたらいいのにと思う。」
春枝さん 「(遠くに住む)娘より近いですもんね、付き合いもあるし。」
板谷    「泣かないで。」
ヘルパー 「でも楽しかったね。」
板谷 「楽しかった?よかった。」

限られた時間で、信頼関係を築く。
ヘルパーの役割の大きさを再確認しました。

一方、家族はどんな思いで
長い介護生活を送っているのでしょうか?
息子の善守さんは仕事の合間を縫って
母親の元に通います。

02109.jpg

食事は1日に2度、
どんな時でも善守さんが用意します。そのワケはこれ。

善守さん 「これ何て書いてある?」
春枝さん 「え?」
善守さん 「何て書いてある?それで」
春枝さん 「「ハル」って書いてある。」
善守さん 「お母さんの名前だよ」
春枝さん 「はい。これだけは読めるわよ。」

021010.jpg

認知症の症状が進行しないよう、リハビリを取り入れています。

善守さん 「電気を消しますよ。」

家族にとって、1番心配な時間が夜です。

善守さん 「(以前)明け方に交番から電話がきた
       親が徘徊して、駅の売店にいるって。
       徘徊されると、どこに行くかわからない。」

こうした介護の生活が5年…、続いています。

021011.jpg

善守さん 「支えになってるのは家族だからというのが1番大きい。」
板谷    「介護を続けられる支えですか?家族だから。」
善守さん 
「おそらく他人だったらここまではっていう感じもある。毎日の中で。」
板谷   
「家族だからこそっていう支えがあるっておっしゃってたけど、
家族の事さえも忘れてしまうかもしれない恐ろしさは?」
善守さん 
「覚悟してますけどね。覚悟してるけど、
そうなった時にどうしたらいいかっていう答えは
なかなか出せないですね。」

 

投稿者:板谷由夏

calendar