板谷由夏 LIFE

2013年06月19日

虐待予防

奈良県・葛城市の福祉センター。
この日、まもなく出産を迎える
お母さんとお父さんが集まっていました。

育児の仕方や、
出産前から虐待の防ぎ方などを学ぼうというのです。
  
私も参加させてもらいました。
まず、赤ちゃんの泣き声に慣れることから始まります。

保健師さん「赤ちゃんの泣き声を聞いてもらいます。
        赤ちゃんが泣いたらどうするか
        想像しながら聞いて下さい。」

生後7か月の赤ちゃんの泣き声を5分間、聞いていきます。



赤ちゃんは、どう泣くのか。知ってもらおうという取組みです。

聞き終えた参加者は…。

参加者「なんか、辛くなってきた。」

こんな時、お母さんは、どうすればよいのでしょう。

参加者「オムツかおっぱいかぐらいしか…
     確認してそうじゃなかったらあやすぐらいしかわからない。」

泣きやます方法が、思い浮かびません。
実は初めての子育ての時、私もわかりませんでした。

板谷「長男の時は、泣き声が3分ぐらい続いただけで私も一緒に泣いてましたね。
    どうしたらいいか、わからないし。
    ストレスがどんどんたまっていくと
    わ~って泣いたりしてましたね。」

泣きやまないことで、感じるストレス。
専門家によると、この泣き声によるストレスが
虐待につながる原因の1つだといいます。


厚生労働省の虐待死亡調査でも、
虐待の主な理由で2番目に多かったのが、
この「泣きやまないことによるイラだち」でした。

では、泣きやまないイラだちで、
どんな虐待が起きるのでしょうか。
虐待で死亡したケースを保健師が実演しました。

母親があやしても泣き続ける赤ちゃん。
 
すると…

保健師さん「おっぱいもあげたし、オムツも替えたのに
        なんで、あんた泣いてるのよ。
        近所の人にも迷惑だし、虐待だと思われたらどうしよう。
        いい加減泣きやんでよ。」

イライラがつのります。
抱き方を変えようとした、その時です。

保健師さん「もう本当にいい加減にして。」

思わず、赤ちゃんを激しく揺さぶってしまいました。

このように、強く揺さぶり、脳など傷つけることを
乳幼児揺さぶられ症候群といいます。これも虐待の1つです。

脳が頭蓋骨の中で大きくずれるなどして、
障害が起きたり、死亡するケースがあるのです。

泣き止まずイラだった時に起こりうる虐待。
どう防げばいいのでしょうか。

保健師さん「安全を確保した上で、そばを離れる。
       息をついてお茶を飲むだけでも我に返ります。
       泣くのが赤ちゃんの仕事なんでね。
       1時間でも2時間でも3時間でも4時間でも泣きます。」

保健師の説明を聞いて、参加者は…。

参加者「赤ちゃんは泣くのが仕事だっていうのがわかって
     安心しました。」

参加者「私いまヤバイ状況だわって落ち着いたりできるかもしれない。
     知っておくことで。」

一方、大阪でも虐待を防ぐため、
新たな取組みが行われています。

ここは、予定外に赤ちゃんができる、
思いがけない妊娠に悩む人を対象にした相談窓口。

助産師と保健師が電話やメールで相談を受け付けていますが、
この思いがけない妊娠が、
虐待につながるケースがあるといいます。

相談員「妊娠SOS相談です。」

この日、相談してきたのは、20代の女性。

相談員「恋愛が始まって3カ月ぐらい。
     それで困ったなぁと、心の整理が…。」

妊娠SOSに寄せられた相談件数は、
1年間で1062件にのぼると言います。
そのほとんどが、産むかどうかといった内容です。

窓口では、相談の内容に合わせて、
病院や保健師のいる施設の紹介などを行っています。

こうした妊娠中の支援が、
虐待を防ぐことにつながると専門家はいいます。

「妊娠中からお腹の赤ちゃんと愛着をお母さんたちはつくっていく。
その期間を苦悩で過ごすのか、それとも
安心して手伝ってくれる人もいるんだって
ハッピーに過ごすかでは違うと思う。」

実際に、窓口に相談し、救われたという女性もいます。
森田ゆかりさん(仮名)、27歳。

1歳の娘、ひなちゃん(仮名)の妊娠がわかったのは
交際相手と別れた直後のこと。
しかし、森田さんは、奨学金の返済など、借金があり、
お金のことが心配で病院に行けませんでした。

誰にも相談できないまま、
出産予定日は、2週間後に迫っていたのです。

森田さん「しんどいっていうか、
      ずっと1人で抱えて考えて考えたんですけど、出なくて」

そんな時、チラシを見て知ったのが、妊娠SOS。
思い切って相談のメールを出しました。

翌日、保健師を紹介され、
出産費用が助成される制度を知った森田さん。
ようやく、子供を産んで育てていく覚悟ができたといいます。

森田さん「もし相談してなかったら、無理心中だったり
虐待もしてただろうと思いますね。」

出産後のいまも、
保健師のサポートを受けながら、育児を続けています。

少しでも虐待を防ぎたい。自治体の取組みは続きます。

投稿者:板谷由夏

2013年04月25日

“新”出生前検査

今週。
東京都内の病院に、新たな出生前検査を希望する夫婦がいました。
30代の清水さん夫妻。
妻の和子さんは現在、妊娠16週。
初めての赤ちゃんだといいます。

清水和子さん(仮名)「頭がこっちで、ここが背骨で。
             背骨がきれいにみえてたんだよね。」

20130425003.jpg

なぜ、検査を希望するのでしょうか。

清水和子さん(仮名)「自分たちの中で可能性のあるものは知っておきたいということと、
             可能性があるということがわかったらその先どうするかって 
             自分たちの人生も変わってくるとおもったので、検査うけてまずは
             結果聞こうという話になりました」

その一方で検査を受けることに、迷いもあったといいます。

清水和子さん(仮名)「知ることで悩んだりとかしなくてはいけないというリスクがあるなと
             思いました。結構、話したよね」

清水和子さん(仮名)の夫「お互い自分たちで調べたり、話しいも含めた時間考えると」

清水和子さん(仮名)「結論出すまでには2週間くらいかかった」

新たな検査を行う病院は、その検査をうける前に
必ず専門の医師などによるカウンセリングを行う必要があるといいます。

板谷「カウンセリングが、妊婦さんお母さんたちになぜ必要なのかと?」

昭和大学病院
認定遺伝カウンセラー
四元 淳子さん

「どうしてその検査をうけようと思ったのか確認させて頂くのが
大きな目的のひとつ。
検査自体は非常に簡単なんだけれども、そこから出てくる
結果というのは非常に大きくて重いものでもありますので。」

わたしたちは実際に
清水さん夫妻のカウンセリングを取材させていただきました。
まずは、診断を希望する理由を聞き取っていきます。

清水和子さん(仮名)「自分も35になるのでいろいろ不安もあったので」

四元さん「年齢のことはそんなに心配になりました?」

清水和子さん(仮名)「やっぱり、遺伝子的な疾患がある子が産まれる確率が
             年齢重ねるごとにあがってくるとかいう情報をインターネット
             とかでみたので」

資料を使いながら、説明がはじまりました。
これは検査の内容や、わかること、わからないことについて
正しく理解してもらうためです。

検査でわかるのは、
ヒトがもつ、23組・46本の染色体のうち
3つの染色体の異常です。
まずダウン症候群。
その多くが21番目の染色体が3本あるために発症します。
そのほか心臓の奇形や生後の予後が悪いと言われる
13番と18番の染色体の異常がわかります。

四元さん「大事なことが、確定診断にはならないところ」
      陽性という結果がでたときには
      もう一度羊水検査とか確定検査が必要になります」

また子供が障害をもった場合の受け止め方も話します。

四元さん「生まれつきのものもあれば、後から出てくるものもたくさんあるので
      染色体の病気だけとりあげて障害としないほうがいいよねという考え方もありますね。
      実際に赤ちゃんが病気だと確定した場合にどうするかって、もうお話されてます?」

清水和子さん(仮名)「さんざん話して結論は出ていない…」

四元さん「結果が出るまで2週間。
      いろいろ考えられてしんどいと思うんですけど、
      そこちょっと外して考えることがさけることできないことでもあるので」

最後にもう一度、検査を受けるか受けないか、選択を求めました。

四元さん「もうすこし時間あけて考えたいということであれば
      またあらためて予約とって採血ということもできますが。
      今日うけていかれますか?」

清水さん夫婦「はい」

清水さん夫妻が出した決断は、検査を受けること。

検査は、わずが20CCの採血だけです。
なぜ、おかあさんの血液から、
こどもの障害がわかるのでしょうか。

胎児の細胞からつくられる胎盤。
母親の血液がこの胎盤に接していて、
胎児の細胞やDNAが入りこんでくるのです。
新たな診断では、採血から取り出した胎児のDNAを利用し、
「染色体の異常」をみつけるのです。

20130425001.jpg


四元さん「その日のうちにアメリカに送る」

板谷「とったその日のうちに?」

20130425002.jpg


実際の検査はアメリカの検査会社が行います。

おかあさんたちの採血はクーラーボックスに入れられ、
早ければその日のうちにアメリカへ送られます。

ここが、アメリカにある検査会社。
最新の技術で血液の分析を行い、染色体に異常があるかどうか、
陽性か陰性かで判定します。
かかる費用はおよそ20万円。結果は、およそ2週間後にわかるといいます。

採血を終えた、清水さん夫妻は

清水和子さん(仮名)「心配して、不安ではあります。
             でも受けること選んだのも自分たちなので、
             検査結果が出るまでもう一回お互いの意見を家で話し合って、
             さんざん話しても結果でたら変わる可能性もあると思うが、
             でも命とか自分たちの子供のこと考える2週間きっかけになるのかなと思って。」

 
検査をうけても、迷いは続きます。

一方、こちらは検査の結果を聞きに来た42歳の金子さん。

私もその場に同席させていただきました。
結果は・・

四元さん 「陰性という結果で」

金子さちえさん(仮名)の夫「とりあえずはこれで安心して過ごせそうなので」

四元さん「どうでしたかね、まってらっしゃるとき」

金子さちえさん(仮名)「受けるまでいろいろ考えたのでほっとしました」

この2週間、ずっと悩んでいたという金子さん夫妻。

20130425004.jpg


金子さちえさん(仮名)「受けなければきっとうまれるまでそういう思いで
              悩んでいたと思うし。
              ひとつクリアできた。
              安心できる部分がわかったのであとはうまれてくるまで、
              丈夫にうまれてくることを願うだけ」

これまでに50人ほどが検査を受けたというこの病院ではこう呼びかけてます。

四元さん「自分で本当に必要な検査かどうかしっかり考えていただき、
      それから検査を受けるかどうか考えていただきたいと思いますね」

投稿者:板谷由夏