板谷由夏 LIFE

2013年04月26日

2013年4月25日~“新”出生前検査~

今週。
東京都内の病院に、新たな出生前検査を希望する夫婦がいました。
30代の清水さん夫妻。
妻の和子さんは現在、妊娠16週。
初めての赤ちゃんだといいます。

清水和子さん(仮名)「頭がこっちで、ここが背骨で。
             背骨がきれいにみえてたんだよね。」

20130425003.jpg

なぜ、検査を希望するのでしょうか。

清水和子さん(仮名)「自分たちの中で可能性のあるものは知っておきたいということと、
             可能性があるということがわかったらその先どうするかって 
             自分たちの人生も変わってくるとおもったので、検査うけてまずは
             結果聞こうという話になりました」

その一方で検査を受けることに、迷いもあったといいます。

清水和子さん(仮名)「知ることで悩んだりとかしなくてはいけないというリスクがあるなと
             思いました。結構、話したよね」

清水和子さん(仮名)の夫「お互い自分たちで調べたり、話しいも含めた時間考えると」

清水和子さん(仮名)「結論出すまでには2週間くらいかかった」

新たな検査を行う病院は、その検査をうける前に
必ず専門の医師などによるカウンセリングを行う必要があるといいます。

板谷「カウンセリングが、妊婦さんお母さんたちになぜ必要なのかと?」

昭和大学病院
認定遺伝カウンセラー
四元 淳子さん

「どうしてその検査をうけようと思ったのか確認させて頂くのが
大きな目的のひとつ。
検査自体は非常に簡単なんだけれども、そこから出てくる
結果というのは非常に大きくて重いものでもありますので。」

わたしたちは実際に
清水さん夫妻のカウンセリングを取材させていただきました。
まずは、診断を希望する理由を聞き取っていきます。

清水和子さん(仮名)「自分も35になるのでいろいろ不安もあったので」

四元さん「年齢のことはそんなに心配になりました?」

清水和子さん(仮名)「やっぱり、遺伝子的な疾患がある子が産まれる確率が
             年齢重ねるごとにあがってくるとかいう情報をインターネット
             とかでみたので」

資料を使いながら、説明がはじまりました。
これは検査の内容や、わかること、わからないことについて
正しく理解してもらうためです。

検査でわかるのは、
ヒトがもつ、23組・46本の染色体のうち
3つの染色体の異常です。
まずダウン症候群。
その多くが21番目の染色体が3本あるために発症します。
そのほか心臓の奇形や生後の予後が悪いと言われる
13番と18番の染色体の異常がわかります。

四元さん「大事なことが、確定診断にはならないところ」
      陽性という結果がでたときには
      もう一度羊水検査とか確定検査が必要になります」

また子供が障害をもった場合の受け止め方も話します。

四元さん「生まれつきのものもあれば、後から出てくるものもたくさんあるので
      染色体の病気だけとりあげて障害としないほうがいいよねという考え方もありますね。
      実際に赤ちゃんが病気だと確定した場合にどうするかって、もうお話されてます?」

清水和子さん(仮名)「さんざん話して結論は出ていない…」

四元さん「結果が出るまで2週間。
      いろいろ考えられてしんどいと思うんですけど、
      そこちょっと外して考えることがさけることできないことでもあるので」

最後にもう一度、検査を受けるか受けないか、選択を求めました。

四元さん「もうすこし時間あけて考えたいということであれば
      またあらためて予約とって採血ということもできますが。
      今日うけていかれますか?」

清水さん夫婦「はい」

清水さん夫妻が出した決断は、検査を受けること。

検査は、わずが20CCの採血だけです。
なぜ、おかあさんの血液から、
こどもの障害がわかるのでしょうか。

胎児の細胞からつくられる胎盤。
母親の血液がこの胎盤に接していて、
胎児の細胞やDNAが入りこんでくるのです。
新たな診断では、採血から取り出した胎児のDNAを利用し、
「染色体の異常」をみつけるのです。

20130425001.jpg


四元さん「その日のうちにアメリカに送る」

板谷「とったその日のうちに?」

20130425002.jpg


実際の検査はアメリカの検査会社が行います。

おかあさんたちの採血はクーラーボックスに入れられ、
早ければその日のうちにアメリカへ送られます。

ここが、アメリカにある検査会社。
最新の技術で血液の分析を行い、染色体に異常があるかどうか、
陽性か陰性かで判定します。
かかる費用はおよそ20万円。結果は、およそ2週間後にわかるといいます。

採血を終えた、清水さん夫妻は

清水和子さん(仮名)「心配して、不安ではあります。
             でも受けること選んだのも自分たちなので、
             検査結果が出るまでもう一回お互いの意見を家で話し合って、
             さんざん話しても結果でたら変わる可能性もあると思うが、
             でも命とか自分たちの子供のこと考える2週間きっかけになるのかなと思って。」

 
検査をうけても、迷いは続きます。

一方、こちらは検査の結果を聞きに来た42歳の金子さん。

私もその場に同席させていただきました。
結果は・・

四元さん 「陰性という結果で」

金子さちえさん(仮名)の夫「とりあえずはこれで安心して過ごせそうなので」

四元さん「どうでしたかね、まってらっしゃるとき」

金子さちえさん(仮名)「受けるまでいろいろ考えたのでほっとしました」

この2週間、ずっと悩んでいたという金子さん夫妻。

20130425004.jpg


金子さちえさん(仮名)「受けなければきっとうまれるまでそういう思いで
              悩んでいたと思うし。
              ひとつクリアできた。
              安心できる部分がわかったのであとはうまれてくるまで、
              丈夫にうまれてくることを願うだけ」

これまでに50人ほどが検査を受けたというこの病院ではこう呼びかけてます。

四元さん「自分で本当に必要な検査かどうかしっかり考えていただき、
      それから検査を受けるかどうか考えていただきたいと思いますね」

投稿者:板谷由夏

2013年03月19日

LIFE 2013年3月6日 ~震災遺構~

宮城県・気仙沼市。
道路の先に見えたのは…

板谷「かなり大きいですね、あの船」

港にほど近い鹿折地区にあるのは、大型漁船「第18共徳丸」。
全長は、およそ60メートル。

20130404001.jpg

津波で海からおよそ800メートル、
内陸に打ち上げられた船です。

震災から1か月、私が取材したとき
このあたりはガレキだらけで道もふさがれていました。

あれから2年。ガレキはかたずけられ、
更地となっていましたが

船だけは解体されず当時のまま残されています。

近づくと船の底には車が押しつぶされたままになっていました。

板谷「まだね、そのままだね、お鍋とかもそのままだもん」

板谷「少しずつ日常がもどってきているんだけど、
   船がある異様さというか」

現在、船は気仙沼市が船を所有する会社から
無償で借りています。

市は津波の脅威を伝える「遺構」として残したい考えです。

この「震災遺構」について、有識者による研究会は
宮城県内46の候補をあげ、保存を訴えています。
気仙沼の船もそのひとつ。
他にもこんな候補があげられています。

20130404004.jpg


石巻市の大川小学校。川をのぼってきた津波がおそい、
児童・教職員あわせて84人が死亡・行方不明となりました。


火葬が間に合わず、宮城県内15か所で
2108人の方が仮埋葬された場所。

すでに更地となった跡地も候補のひとつです。


20130404003.jpg

しかしこうした「震災遺構」について
専門家は課題があるといいます。

3.11震災伝承研究会木村座長
「やはり地元のみなさんの合意の問題。
 地元で住民の方が残すべき残さないで撤去すべきということで
 なかなか意見がまとまらない」

課題の一つが「住民の合意」です。
船を残したい気仙沼市に対し、住民からは「反対」の声が
あがっています。

船の近くの鹿折地区に住んでいた、
小野寺良男さん。
今も仮設住宅で生活を続けています。

小野寺さん「(船の保存に)反対ですね。
       私たちの住んでいる中みなとそのものをあの船が横切った
       (津波の)1波、2波、3波の中で建物を壊してしまった。
       あの船によって悲しい思いした人がすごく多かったんではないかと。」

一方で、「保存に賛成」という意見も。津波でお母さんをなくした藤沢大也さん。

藤沢さん「(この地区に住んでいない)僕の立場としては
      残して、やはりこれから自分たちが前に進んでいくにつれて
      いったん、振り返る場所というか
      思い出すというか残しておくべきなんじゃないかと。
      将来、後世に伝えていかなくちゃならない時でも
      思い出したくないことをあえて自分の記憶からもってきて
      話すことが大事だと思う」

そして地元住民の中には、
なかなか答えが出せないという人もいました。
仮設の店で酒店を経営する茂木幹一さんです。

茂木さん「本当に色んな方がいる(船を)見るだけで
      吐き気するって人もいるし、あれ(船)によって人がいっぱいくるんだから、
      鹿折にいっぱい人が来るから(船を残しても)いいという人もいるし。
      いろんな思いがからまって、本当に意見がバラバラになってきている。
      簡単にこういう風にしたらいい、
      ああいう風にしなきゃいけないとはあまり言えないというか。」

それぞれの立場によって、分かれる意見。
船を所有する会社も、住民の同意が得られないのに、残したくないなどとして、
すでに市に解体を申し入れています。
そしてもう一つの課題がお金の問題です。

気仙沼市によると保存には船周辺の整備が必要で多額の費用がかかるといいます。
これを国にまかなってほしいと考えていますが見通しはたっていません。
船を残すかどうか。市は今月末に結論を出すとしています。


保存について揺れる自治体。
その一方で岩手県・大船渡市に自分の会社を遺構として残そうと考える人がいます。
お菓子会社で専務を務める、齊籐賢治さん。


板谷「こちらが齊藤さんの会社というかこちらで被災された?」
齊籐さん「そうです」

屋根まで押し寄せた津波。齊藤さんは会社を当時のまま残しています。
その理由を訪ねると・・・。

齊籐さん「できれば津波の遺構として
      多くの皆さん見てもらって津波の怖さを知ってもらおうと。」

 
津波の被害にあった社屋を、いまもそのまま残している齊藤さん。

実は齊藤さんは逃げた高台から、津波の一部始終を、撮影していました。

これがその映像です。

このとき、地震発生からおよそ37分。
画面の中央にあるのが齊藤さんの会社です。


津波は堤防をこえ、齊藤さんの会社の前の道にも水がながれこんでいます。

それからわずか30秒後。齊藤さんの会社の前を、流された家が横切ります。

すごい速さで勢いを増す津波。

家屋が次々に流されていきます。
 
「何が防波堤だよ」
「何が防潮堤だよ・・」

町のなかに水か流れ込んでからわずか2分のことです。

齊藤さんはこの映像を多くの人にみてもらえるよう、
市内に「津波伝承館」を開くことをきめました。

伝承館では語り部が当時の様子も説明するといいます。

来週11日の仮オープンにむけ今は準備のまっただ中です。

映像だけではなく被災した社屋にも案内し、
被害を目にすることでその怖さを実感してもらいたいといいます。

なぜ、ここまでするのでしょうか。

20130404005.jpg


齊籐さん「ぜひ逃げて助かってほしいそういう思いをもって
      伝承館を伝えて津波の怖さを知ってもらう。
      大切なのはやはり命だと思うんですよ。
      一番の思いはあなたに助かって欲しいから、
      ということであります。


投稿者:板谷由夏