『今から検査』
『了解。結果出たら教えて』
やりとりされるメッセージの文面。
2026年4月、ハワイ。妻・加奈子(北川景子)はそのメッセージを送ってからというもの、返事が来るのを待って、ずっと落ち着かない。
なぜなら今日は東京で、夫・つんく♂(高橋光臣)が検査を受ける日。淡々といくつもの検査を受けながら、祈るように目を閉じるつんく♂。2人の心にある共通の不安、それは「再発」という恐怖。胸が張り裂けそうになる加奈子に、3人の子供たち(葉山さら、岡崎薫、西光里咲)は励ますように声をかける、「大丈夫だよ、お父さんは」。その笑顔に救われる加奈子。返事を待っている時間が永遠に続くかに思われたその時、スマホにようやく届いたメッセージ――『問題なしやった』。その瞬間、張り詰めていたものが解け全身から力が抜けていく…。そんな身の縮むような時間を、加奈子たち家族は10年以上も繰り返してきた――。
2005年に出会い翌年結婚したつんく♂と加奈子。当時つんく♂は多忙を極め仕事最優先の生活を送っていた。もともと結婚当初から喉に違和感を持っていたつんく♂だったが、その違和感が顕著になったのは結婚から7年後の2013年。この年、つんく♂がボーカルを務めるロックバンド・シャ乱Qは結成25周年。ただでさえプロデュース業で忙しいのに、25周年記念ライブの準備が始まり、疲れはピークに達していた。
声がかすれ、新曲の仮歌もうまく録れない…。一緒に働くエンジニアの田所(田中樹)も「働きすぎじゃないですか?」と心配するが、つんく♂は「ありがたいねん。いっぱい音楽家がおる中で、俺と仕事したいって言ってくれる人がおんのが。だからできることは全部やりたい」と、みんなの期待に応えようとする。
しかし、喉の調子は悪くなる一方。加奈子は「少し休んで、病院でしっかり診てもらうとか…」と、体を優先してほしいとお願いするが、つんく♂は「ファンも待ってるし。歌は俺にとって命やから」と、その強い意志にそれ以上は何も言えなくなる…。そんな加奈子の心配をよそに、25周年ライブ本番でつんく♂の喉は絶好調。ファンの前でカッコよく歌う父を、3人の子どもたち(前田花、永瀬矢紘、野島瑠玖)も誇らしげに見守った…。しかし、加奈子たち家族がつんく♂の歌う姿を見たのは、それが最後になってしまう――。
翌年、残っていた仕事を終わらせてから受けた検査でつんく♂に下された診断は、喉頭がん。そこから、家族の長い闘いの日々が始まった。
放射線と抗がん剤…。一度は終わったと思った治療、しかし一向に良くならない喉の状態…。そして最悪の知らせを、モーニング娘。のライブのために訪れていたニューヨークで受け取ることになる。
がんは消えていなかった。家族は帰国し、そのまま病院に直行した。担当医師の白石(武田真一)は慎重に言葉を選びながら提案する。「がん細胞がどこまで浸潤しているかはわかりません。声帯の全摘出を考えるのが妥当でしょう」。その言葉に加奈子が食い下がる。「先生、半分だけでも残せませんか? 部分切除じゃだめですか?」彼女自身、もうその段階を過ぎてしまっていることには気づいていた。けれど、あらがいたかった。つんく♂は穏やかに、けれど強い覚悟で言葉を発する。「わかりました。声帯を全摘出してください。そして、私は生きます」。そう言うと、加奈子に向かって笑顔でうなずいた。
そして迎えた手術前夜。つんく♂は病室で子どもたちひとりひとりに語りかける。「最後は、ママの番」。加奈子とつんく♂、2人きりの時間で、加奈子はつんく♂との出会いから今日までのことを思い出す――。