制作によせて
多様性と相互理解の大切さが謳われる現代社会。
それでも今、私たちの心の中に、まだバイアスはあるんじゃないだろうか?
そんな疑問から、この作品は始まりました。
物語の主人公・八重森ありすは、自閉スペクトラム症で、
ありすの父親・心護は、ゲイです。
自閉スペクトラム症
主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な特性のみられる発達障がいのひとつ
ゲイ
自身を男性と自認し、恋愛感情や性的魅力を感じる相手が男性であるセクシュアリティのこと
事前に色々と勉強して、取材に臨んだつもりでしたが、
いざ当事者の方々やご家族と接すると、
私たちの言葉で傷つけてしまわないか、すごく不安になりました。
でも、本当に多くの皆さんが「知ってほしい!」と
たくさんのご苦労や嬉しかったエピソードを話して下さいました。
もし現実世界で、ありすや心護と出会ったら
「ああ、なんかデリケートそうだな」
「なるべく関わらないでおこう…」
そう線を引いてしまうかもしれません。
でも、その線を越えて“関わること”が、はじめの一歩だったりします。
ありすが見ている世界、彼女をとりまく人々が感じている世界を
この作品を通して、ほんの少しでも知って、感じて頂けたら。
みんなが、みんなに“やさしい世界”が実現する一助となれたら。
そんな思いで、丁寧に制作して
参ります。
小さな料理店『ありすのお勝手』の店主。
自閉スペクトラム症の特性ため、頑固でこだわりが強く、コミュニケーションは苦手。だが、驚異的な記憶力の持ち主で特に大好きな化学においては膨大な知識を持ちあわせる。
3歳の頃から、有機化学者の父・心護と2人暮らし。心護の影響で化学にハマり、5歳で大学生の課題を解くまでに。やがて食材の栄養素や調理工程を、化学式や化学変化で理解するようになる。「料理は化学です」が口癖で、ひとたび料理の解説をし始めると止まらない。お客さんの健康状態や精神状態から、その人に合った“やさしいごはん”を作る天才料理人。